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熱に浮かされて?レーガー... [2012]

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嗚呼、どこで拾って来てしまったのだろう... インフルエンザ...
高熱というほど熱は上がっていなかったので、風邪だろう。と、楽観していたら、頭の左半分(これがまた奇妙で、中身じゃなく、表面?リンパ関連?)が、眠れなくなるほど痛くなり、痛み止をもらうつもりで近所の病院に行ってみれば、陽性。これまで、何度かインフルエンザの検査は体験しているけれど、"初"陽性に驚きと感慨。ま、そんなこんなで、絶不調下、更新はあるのか?と自問しつつ、更新してしまう。多少、熱が上がっている内に、書いてしまえ!というテンションは、やっぱり熱から来ているのだと思うけれど。また、取り上げるのが、レーガーだったり... もう、こうなれば、とことん熱に浮かされて、ロマンティックな夢の中を彷徨ってみようかなと。
OEHMS CLASSICSで独特の存在感を放ったヴァイオリニスト、ベンヤミン・シュミットが、ハンヌ・リントゥ率いるタンペレ・フィルハーモニー管弦楽団をバックに、長大なるレーガーのヴァイオリン協奏曲(ONDINE/ODE 1203-2)に挑む、ONDINEからのリリースを聴く。

レーガーのヴァイオリン協奏曲というと、とにかく長大(50分越え!)。さらには、ソリストを呑み込みかねないような壮大なるオーケストレーション... でもって、ロマン主義が煮詰まって(「世紀末」が色濃く残る1907年から、1908年に掛けて作曲された作品... )、聴く者に圧し掛かって来るような、そんなイメージが、ある?かな?と、思っていたのだけれど... それがまた魅力なのだけれど... シュミットのレーガーのヴァイオリン協奏曲は、でもない?これまで聴いた感覚と明らかに違う... その思い掛けないギャップに、拍子抜けするような。いや、いつの間にか、ロマン主義のオバケだと思い込んでいた頭を、スッカーン!と、はたかれて、やたら膨らませ過ぎたイメージを吹き飛ばしてくれる快演。それにしても、このレーガーは、一体...
それだけでもひとつのコンチェルトになりそうな、場合によっては独奏ヴァイオリン付き交響詩?的なスケールを見せてしまう1楽章(track.1)。冒頭、オーケストラがしっかりと盛り上げて、シュミットの登場を準備するわけだけれど、当然ながら煌びやかなロマン主義が溢れ返り... 嗚呼、これから50分強、レーガーの音楽に溺れるのだなと覚悟を決めたところに、シュミットならではの美音!そして、空気が変わる... その繊細で、何かメンデルスゾーンのコンチェルトを聴くかのような、輝きに満ちた一音、一音に、ぎゅーんと引き寄せられて。またその一音、一音を辿って行けば、メンデルスゾーンばかりでなく、ロマン主義の集大成であるかのような、様々な頃のロマン派の作曲家たちの残像がチラつき、不思議。ロマン主義を、形が無くなるまで煮込んだ濃厚スープ... のはずが、シュミットが料理すると、スープの具材はもちろん、出汁までが感じられる、より豊かなイマジネーションに彩られてしまう魔法。どんな大作だろうと、難曲だろうと、あくまで我が道を貫いて、繊細さで仕上げるシュミットの確信が導く真新しいレーガーの新鮮さ... 30分弱の1楽章も、華麗な弓捌きで、最後の瞬間を手繰り寄せるかのような演奏で、あっという間。続く、緩叙楽章(track.2)は、まさに夢見るような、レーガーのロマンティックでスイートなあたりがたまらない... 何より、シュミットの繊細さが際立つ!そして、ただただ美しい... そこから一転、終楽章(track.3)の軽やかさは、よりシュミットの音楽性を引き立たせ、キラキラとした音楽を繰り出す。
この、類い稀なるシュミットの方向性を見事に昇華させた、リントゥ+タンペレ・フィルの存在も極めて大きい... レーガーならではのオーケストラにとってはやりがいもあるだろう大きな音楽を、けして自分のものとはせず、徹底してシュミットの繊細さを活かし尽くす見事さ。それでいて、とにかくクリア!いや、徹底してクリア!あれだけロマン主義が管を巻いているように感じたコンチェルトが、全ての瞬間が若々しく、瑞々しく、圧し掛かって来るようなことがない驚き。それでいて、煌びやかさも十分で、切れ味も鋭く、終楽章でのシュミットとのやり取りは華麗にしてスリリング。OEHMS CLASSICS時代はライスキンとすばらしいリレーションシップを築いていたシュミットだけれど、ONDINEでのリントゥとは、さらに次元を上げるようなことになりそうな予感。今後のことはもちろんわからないけれど、この組合せ、もっといろいろ聴いてみたくなる。それにしても、レーガーの音楽世界を、一切の澱みなく綺麗に捉えて響くサウンドの美しさ!そうか、レーガーはこういう人なのだと再確認...
ドイツ―オーストリアの気高き伝統を受け継ぐ作曲家。コンチェルトの後での、シュミットの独奏によるシャコンヌ(track.4)を聴けば、そのバッハへと回帰する確かなサウンドに、「ロマン主義」というイリュージョンではない、剥き出しの音楽の力強さ、きちっと構築された音楽が持つ説得力に、感服させられる。そういう部分こそ、丁寧に見つめたシュミットの試みは、憑き物が落ちたようなレーガー・サウンドを響かせて、魅了されるばかり。ロマンティックを極めた後での、シャコンヌというのも、キリっと締まる。

REGER: VIOLIN CONCERTO ・ CHACONNE
BENJAMIN SCHMID ・ TAMPERE PO ・ LINTU


レーガー : ヴァイオリン協奏曲 イ長調 Op.101 *
レーガー : シャコンヌ ト短調 〔無伴奏ヴァイオリンのための前奏曲とフーガ Op.117 から 第4番〕

ベンヤミン・シュミット(ヴァイオリン)
ハンヌ・リントゥ/タンペレ・フィルハーモニー管弦楽団 *

ONDINE/ODE 1203-2




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