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"BARBARIAN BEAUTY" [2012]

Passacaille972.jpg
1月もすでに半ば... 正月はすでに遠い過去か...
師走のスピード感は切迫感があるのだけれど、年を越して、正月があっという間に過ぎ去ってゆく感覚は、高速の動く歩道に乗せられている感じ。休み明け、トボトボと歩き始めたつもりが、知らぬ間にスーっと運ばれてしまっているような、師走とは違うスピード感がある。これもまた、ある種の正月ボケなのだろうか?という中で、さらに遠くなってしまった2012年の1月のリリースを取り上げるのだけれど。新譜を追って... なんて掲げてはいるものの、今頃、1年前のリリースを取り上げるとは... ちょっと反省。締めていかねば。
ということで、ヴィオラ・ダ・ガンバの名手、ヴィットリオ・ギエルミと、彼が率いる、イル・スオナール・パルランテ・オーケストラに、ピリオド界の切っての名手たちが参加しての、ヴィオラ・ダ・ガンバのための協奏曲集、"BARBARIAN BEAUTY"(passacaille/Passacaille 972)。エッジの効いたサウンドと、その名の通り、バーバリズムをスパイスに、刺激的なバロックを聴く。

ツィンバロンという楽器は、今、民俗楽器として認識されているわけだけれど、バロックの頃は違っていた?バロック期の音楽シーンを丁寧に紐解いてみると、興味深い存在を知ることに... パンタレオン・ヘーベンシュトライト(1668-1750)というツィンバロンのヴィルトゥオーゾが活躍していたのだとか。そして、このツィンバロンのマエストロは、若きテレマンが楽長を務めていたアイゼナハの宮廷に仕え...
というつながりをイメージさせるのか?ツィンバロンに導かれて始まる、異色のヴィオラ・ダ・ガンバのための協奏曲集、"BARBARIAN BEAUTY"。もちろん主役は、ギエルミが弾くヴィオラ・ダ・ガンバ... なのだけれど、1曲目、テレマンによる、リコーダー、ヴィオラ・ダ・ガンバのための協奏曲(track.2-5)では、ソロの後ろで、思い掛けなく大胆に掻き鳴らされるツィンバロンがスパイスとなり、いつものバロックとは一味違う音楽が響き出す。すると、テレマンの音楽の中に籠められた中東欧のフォークロワなテイスト(一昨年のヴァレント、オランダ・バロック協会による"BARBARIC BEAUTY"でも紹介されたあたり... 現ポーランド領、シロンスクの大貴族、プロムニッツ伯爵家に仕えた経験による?)が薫り立ち、独特の雰囲気に包まれる。これが、バーバリアンな美か。1曲目のツィンバロンのインパクトが、その後の作品にも余韻を残し、2曲目、グラウンのヴィオラ・ダ・ガンバ協奏曲(track.7-9)は、多感主義の激しさが、見事にバーバリスティクに響いて。さらには、チェンバロの通奏低音が、ツィンバロンのように聴こえて来るからおもしろい。荒ぶる感覚は、続く、ヴィヴァルディでも見事に展開され。最後のタルティーニでは、ヴィオラ・ダ・ガンバの素朴な佇まいが、牧歌的な風景を描き出すようで、バーバリアンな美は、田舎の、のどかさへとつながるのか... その後で、さり気ないツィンバロンによるポストリュード(track.16)でアルバムは締められるのだけれど、これがまたスパイスを効かせる。始まりのプレリュード(track.1)、テレマンのコンチェルトの後のインターリュード(track.6)と、ツィンバロンという楽器の持つ強い個性で、バロックにバーバリアンの美による魔法を掛ける"BARBARIAN BEAUTY"。刺激的なバロックの姿に、魅了されてしまう。
そして、見事にバーバリスティクなバロックを響かせるソリストたち!テレマンでは、リコーダーのマエストラ、オベルリンガーが、堂に入ったパフォーマンスを繰り広げ、ヴィヴァルディでは、注目のピリオド系ヴァイオリニスト、平崎真弓が、鮮やかな音を聴かせてくれる。で、雄弁なるコメンダントのツィンバロン!臆することなく、ソリストに、オーケストラに挑んでしまう大胆さに圧倒される一方で、プレリュード、インターリュード、ポストリュードではしっとりとしたサウンドを響かせ、印象的。いや、ツィンバロンのためのコンチェルトが無かったのが残念なくらい... とはいえ、コンチェルトの主役は、ギエルミのヴィオラ・ダ・ガンバ。自由自在、縦横無尽、でありながら、ガンバなればこその味わいをたっぷりと聴かせて、そこにこそ、バーバリアンな美を見出させもして、圧巻!緩叙楽章でのポルタメントを掛けて少しだらしなく歌ってみせたりする、ルーズなバーバリスティックを演出する巧さ... 2曲目、グラウンのコンチェルトでの、バロックを脱した多感主義では、よりスケールの大きい音楽を見事に鳴らし切り、ガンバのアルカイックさを吹き飛ばすようなパフォーマンス... 大いに惹き付けられる。
そんなソリストたちに負けていないのが、イル・スオナール・パルランテ・オーケストラ。いい具合にクラシックの気取った気分を落として、バロックの豪奢な宮廷ではない、街角に立つ辻楽師のような、切っ先の鋭さと、活き活きとした表情に、魅了されずにいられない。バロックとバーバリスティックを器用に結んで、これまでになかった次元(クラシックから自由になり、より音楽を楽しむ気分というのか... )へと、ポンとジャンプしてしまうおもしろさ。もちろん、ギエルミのヴィオラ・ダ・ガンバとの丁々発止のやり取りも圧巻で。そのやり取りを加速させ、高められてゆくテンションにもやられてしまう。

BARBARIAN BEAUTY  CONCERTO FOR VIOLA DA GAMBA VITTORIO GHIELMI IL SUONAR PARLANTE ORCHESTRA

テレマン : リコーダー、ヴィオラ・ダ・ガンバのための協奏曲 イ短調 **
グラウン : ヴィオラ・ダ・ガンバ協奏曲 ニ長調
ヴィヴァルディ : ヴァイオリンとチェロ・アッリングレーゼのための協奏曲 イ長調 RV.546 *
タルティーニ : ヴィオラ・ダ・ガンバ協奏曲 イ長調

ヴィットリオ・ギエルミ(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
ドロテー・オベルリンガー(リコーダー) *
平崎真弓(ヴァイオリン) *
マルセル・コメンダント(ツィンバロン) *
ヴィットリオ・ギエルミ/イル・スオナール・パルランテ・オーケストラ

passacaille/Passacaille 972






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