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愛のよろこび、 [2005]

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年末であーだこーだ忙しないところに、選挙... それも終わって一段落...
と、止まってもいられない12月。とはいえ、連日、耳目にした情報の異様なテンションの高さというか、アピールしてくるパワーに威圧されたのか、すでにヘトヘト。で、そんな疲労感を癒してくる音楽... そっと寄り添ってくれるような音楽を聴きたくなる。そこで引っ張り出して来たのが、フランスの古楽アンサンブル、ル・ポエム・アルモニークによるフランスの古謡集。キラキラ星など、どこかで聴いたことのあるメロディもある、素朴な歌の数々。クラシックの対極にあって、人々に歌い継がれて来たメロディの温もりに、何だかホっとさせられる。
ということで、2005年にリリースされた、ル・ポエム・アルモニークによる、"Plaisir D'amour"(Alpha/Alpha 513)を聴き直す。で、「師走」の緊張感をちょっと緩めてみる。

「古楽」という言葉をどう理解すべきか... 使い易い一方で、その範囲は極めて曖昧なところがある。というより、古い音楽なのか?古い楽器を使った演奏なのか?解釈が異なる場合もあって、戸惑うことも。そうしたあたりを逆手に取るのか、気鋭の古楽アンサンブルを起用して、「古楽」という言葉の可能性をいろいろな方向へと押し広げて、興味深いアルバムを次々に繰り出したAlphaの白のジャケットのライン、"Les chants de la terre(大地の歌)"。そこで取り上げられた音楽の、大地に根差したオーガニックなサウンドは、クラシックとも古楽とも一味違う、不思議な領域を生み出したわけだが... そんな"Les chants de la terre"からの1枚、"Plaisir D'amour(愛のよろこび)"。フランスの古いシャンソンとロマンスを集めた、これまた不思議な1枚。本当に古いシャンソンとロマンスは、まさに古楽の範疇だけれど、フランス革命前の洒落たシャンソンもあったりと、古さの基準に揺らぎのあるチョイス... いや、あえて揺らしてみて、よりフランス性というものを浮かび上がらせる?
まるでフィドルを思わせるようなヴァイオリンの音に乗って歌う「ジャン・プティは踊るよ」(track.2)には、トルバドゥールの面影が漂い、美しい笛とハープに導かれて歌い出す「ラ・ルイソン」(track.3)にはケルトの色が滲み、鮮やかにバグパイプが吹かれる「裏切りの尼僧」(track.4)は、まさにフォークロワ!かと思えば、ア・カペラで歌われる「無敵のマールブロウ」(track.6)には、ルネサンス期のシャンソン(ポリフォニーではないのだけれど... )のような表情を見出す?タンジェント・ピアノを伴奏に歌われる「ああ、もう聞いてよママ」(track.11)は、お馴染みキラキラ星のメロディが、思い掛けなく端正に歌曲然とした装いで新鮮。最後に歌われる、アルバムのタイトルとなっている定番のシャンソン、マルティーニの「愛のよろこび」(track.15)は、作曲された頃、マリー・アントワネットの時代の典雅さが蘇り、また新鮮。という具合に、まったく毛色の違う作品が、1枚にぎゅっと集約されていて、不思議な感触がある。が、巧みな楽器のチョイス(もちろん古楽器... )もあって、絶妙にトーンが揃えられる!そうして生まれる、洗練された気分というのか、どんなにフォークロワ色の強いナンバーであっても泥臭くならない。幅広いテイストを、ふんわりと、やさしい色合いの中に収めて、ひとつに結び。それでいて、さり気なくキャッチーなメロディを生み出す、フランスならではのポップ感があちこちからこぼれ出し、フランスの匂いで聴く者を包む...
とてもシンプルなのだけれど魅惑的。素朴なのに彩りが豊か。クラシックにおけるフランスのエスプリというのは、時として勿体ぶったイメージもあるけれど、"Plaisir D'amour"から匂うフランスのエスプリは、まったく嫌味がない。それどころか、耳にたまらなく心地良い。作曲という行為がある種の「作為」であるとするならば、"Plaisir D'amour"に綴られるナンバーというのは、読み人知らずの作為の無いメロディ(マルティーニの「愛のよろこび」は違うのだけれど... )。それでいて、特別な人ではない、市井の人々によって、何世代も受け継がれたメロディであって。こういうところにこそ、最良のフランスのエスプリというのは現れるのかもしれない。もちろん、それを際立たせているデュメストル+ル・ポエム・アルモニークの存在を忘れるわけにはいかない。
古楽器の素朴さを大切にしながらも、古楽器の持つ力を最大限に引き出し、より色彩的なサウンドを生み出すル・ポエム・アルモニークならではのトーンが、普段なら気にも留めなかったかもしれないフランスの古いシャンソンとロマンスを、その古さを活かしつつも、魅惑的に響かせる!そこに、ルフィリアトルら、ル・ポエム・アルモニークの歌い手たちが、いつものようにナチュラルで、やわらかな声を乗せて... 途端に息衝くアンティークなメロディたち!クラシックという壮麗なるカテゴリーの片隅の、ひっそりとしたあたりに、こういう音楽もあって、ちょっと耳を傾ければ、また喜びがある。久々に"Plaisir D'amour"を聴いて、何だか音楽というものを見つめ直す機会にもなったのかも... って、最近、そんなことばかり言っている?

Plaisir d'Amour
Le Poème Harmonique - Vincent Dumestre


馬どもを水飲み場につれてゆく途中
ジャン・プティは踊るよ
ラ・ルイソン
裏切りの尼僧
ペロネルを見たかい
無敵のマールブロウ、その死と埋葬
リブテ : 恋わずらい
ブレー
白い雌鹿
兄弟三人あったとさ
ああ、もう聞いてよママ
タンブラン
歌を聴きたい人はいるかね
ラ・フュルスタンベール
マルティーニ : 愛のよろこび

ヴァンサン・デュメストル/ル・ポエム・アルモニーク

Alpha/Alpha 513

さて、フランスが続きましたが、このあたりで離陸!

12月、フランスを巡り...
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