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テクノ・パレード! [2006]

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12月に入って、何となくフランスの音楽が続きます。
と言っても、少し外しての「フランス」なのだけれど... で、タローのキャバレーに、ジェロルスタン女大公殿下と、多少、裏通り系なチョイス?けれど、「フランス」というだけで、何かキラキラとした華やぎがある。それは、「ドイツ」では味わえない軽やかな輝きで、何となく今頃の街並みの、電気でキラキラとしているのに似ている?というフランスの音楽の、現代音楽を聴いてみるのだけれど、やっぱりキラキラがあるからおもしろい。
ということで、ポスト・ミニマルなフランスの現代の作曲家、ギヨーム・コネソンの、ポップな室内楽作品を集めた1枚... エリック・ル・サージュのピアノを中心に、フルートのマチュー・デュフォー、クラリネットのポール・メイエら、何気に豪華なフランスのマエストロたちが顔を揃えての、2006年にリリースされたアルバム、"techno parade"(RCA RED SEAL/82876 662722)を聴く。

それが21世紀のスタイルなのか?現代音楽にして、屈託の無い音楽を繰り広げる、ギヨーム・コネソン(b.1970)。ポスト・ミニマルなあたりから、よりクラシカルであることも厭わない、おもしろい存在。『コズミック・トリロジー』(CHANDOS/CHSA 5076)などは、まるでSFテレビ・ドラマが始まりそうな、ちょっとノスタルジックで、何よりキャッチーなテイストが魅惑的ですらあって... 難解なる"ゲンダイオンガク"というステレオ・タイプにまったく捉われない、彼の"現代っ子"な感覚は、同じフランスでもIRCAMのエリートたちとは一線を画して、独特のヴィヴィットなサウンドを放ち、現代っ子世代にとってはより共感するところも...
そんなコネソンのテイストが、よりエッジーに展開される"techno parade"。それこそ「テクノ」なんていうあたりが、まさしく現代っ子を思わせるわけだけれど、そのアルバムのタイトルにもなった1曲目、"Techno-Parade"。「テクノ」と言いながら、見事にアコースティックというのが、捻りになっている?ピアノ、フルート、クラリネットという、まさにクラシカルな楽器から、出来得る限りの「テクノ」を引き出すから、おもしろい。例えば、ピアノならば特殊奏法(ピアノ線を直接こすりつつ打鍵して、プリペアド・ピアノ的なサウンドを響かせる... )を用いて、フルートは見事な超絶技巧で、早いパルスからデジタルな感覚を生み、そこにクラリネットがヴィヴィットな色彩を添える。そうして様になってしまう、「テクノ」を形にしてしまうアイディアに、思わず膝を打ってしまう。また、キーボード・サンプラーを用いて、コミカルな効果音を付けての"Jurassic Trip"(track.13-19)は、現代版の『動物の謝肉祭』。スピルバーグの『ジュラシック・パーク』などからインスパイアされつつ、サン・サーンスのひな型を利用するコネソンのウィットが光る。それでいて、サン・サーンスに負けず、ジュラ紀の動物たちを表情豊かに蘇らせ、現代に太古をクラシカルに描き出す不思議なテイストがおもしろい。かと思えば、ジャジーな"Initials Dances"(tarck.2-4)や、サティを思わせる2つのパートからなる"Le rire de Saraï"の前半、"La plainte d'Agar"(track.6)に、フランス6人組が活躍していた頃のマシーン・エイジのメカニカルな気分を思い出させる六重奏曲(track.9-11)など、どこかノスタルジックな近代がリヴァイヴァルされるような感覚が随所にあって、現代のスタイリッシュさの中に、人懐っこい表情を生む。コネソンの現代っ子感覚には、何か、おじいちゃん、おばあちゃんからの愛情を感じ、現代の冷たさがない。それは、「前衛」に追われた両親ではなく、「近代」を築いた祖父母に育てられた、ちょっとテイストの違う現代っ子を想像させる。改めてコネソン作品に触れ、その温度感がとても興味深く感じられた。
そして、この"techno parade"をより魅力的なものとしているのが、フランスを担う豪華なマエストロたち... 特に印象に残るのは、切れ味の鋭いパフォーマンスで、作品を際立たせるデュフォーのフルート!超絶技巧を物ともせず、さらりとコネソンの要求する音を実現し、"Techno-Parade"(track.1)などは、とにかくカッコいい。その冒頭などはまるでパーカッションかと思うような、衝撃的なタンギング!フルートのどこか上品な雰囲気をスパっと切り捨てて、音に徹して生み出されるフルートの凄さを聴かせてくれる。そして、このアルバムの核となるル・サージュのピアノ。現代音楽にして"ゲンダイオンガク"的な極まりからは距離を取るコネソン作品の独特のユルさの中を、自由自在に動いて、楽しむようなノリのいいタッチが鮮やか。一方で、常にスタイリッシュに引き締まったサウンドを奏で、コネソン作品の魅力をきちっと押さえての全体を導くような演奏は、"techno parade"のトーンを決める重要な役割を担っているかのよう。そうして、率いられる演奏家たち... 活きのいい音楽を紡ぎ出しながらも、どこかでふんわりとした柔らかさを一音一音に持たせ、ポップに仕上げるのか。コネソンのポスト・ミニマルに、フレンチ・ポップな雰囲気を纏わせて、アルバムそのものが魅力的!

connesson techno parade

コネソン : Techno-Parade 〔フルート、クラリネットとピアノための〕 ***
コネソン : Initials Dances 〔ピアノのための〕 *
コネソン : Double Quatuor 〔クラリネット、バス・クラリネット、オーボエ、フルートと弦楽四重奏のための〕 *****
コネソン : Le rire de Saraï 〔フルートとピアノのための〕 **
コネソン : Disco-toccata 〔クラリネットとチェロのための〕 **
コネソン : Sextuor 〔クラリネット、オーボエ、フルート、ヴィオラ、コントラバスとピアノのための〕 *****
コネソン : Toccata Nocturne 〔フルートとチェロのための〕 **
コネソン : Jurassic Trip 〔アンサンブルのための7つの先史時代のミニアチュール〕 *********

エリック・ル・サージュ(ピアノ) *
マチュー・デュフォー(フルート) *
ポール・メイエ(クラリネット) *
フランク・ブラレイ(ピアノ) *
グザヴィエ・フィリップス(チェロ) *
フランソワ・メイエ(オーボエ) *

パリジー四重奏団 *
ジャン・ミシェル・ベレット(ヴァイオリン)
アルノー・ヴァラン(ヴァイオリン)
ドミニク・ロベ(ヴィオラ)
ジャン・フィリップ・マルティニョーニ(チェロ)

フィリップ・ベロー(バス・クラリネット) *
フランソワ・ミケル(バス・クラリネット) *
ヴィルジニー・ライベル(フルート) *
ドミニク・デジャルダン(コントラバス) *
エマニュエル・キュルト(パーカッション) *
ファブリス・コシット(キーボード・サンプラー) *

RCA RED SEAL/82876 662722

さて、今年は、2006年を聴き直して来たのですが、それもこの"techno parade"を以って最後... いや、2006年もヴァラエティに富んでいた!そして、おもしろかった!ということで、そのあたりを年末年始に振り返り、2006年のベストを選べたならと考えております。

12月、フランスを巡り...
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