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ジェロルスタン女大公殿下。 [2005]

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さて、まもなく終末です。年末の間違い?いえ、もう終末ですよ...
マヤ歴が終わるからではありません。連日の選挙戦の、テレビの中の異様な高揚を見つめていると、嗚呼、終わったな。なんて、思う。待ったなしの日本のリアルを前に、どこかお祭り騒ぎをしているような政治家とメディア。ド派手に立派なことをブチ上げる一方で、受けの悪いことは巧みにトーン・ダウンして、平気で中途半端な態度。嗚呼、付き合い切れないよ。けど、投票せねばならないニッポンジンの悲劇。てか、もはや喜劇?
ということで、思いっきり楽しむよ!この師走の慌ただしさに、本当に終末感が漂ってきた「2012年」を忘れるために... 2005年にリリースされた、マルク・ミンコフスキ率いるレ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルによる、オペラ・ブッフ『ジェロルスタン女大公』(Virgin CLASSICS/5 45734 2)を聴き直す。

久々に引っ張り出してきて聴く、オッフェンバック... やっぱり楽しい!
とにかくキャッチーなナンバーの数々、ブン将軍(かつて日本ではブン大将でお馴染みだったらしいけれど... )が、「ピッパップフ!」、「ブンブン!」とコミカルに歌う"Pif, paf, pouf"(disc.1, track.6)や、女大公殿下の軍隊フェチが炸裂する"Ah! que j’aime les militaires"(disc.1, track.13)、その後で、馬鹿っ調子よい行進曲に乗せて「タラッタタッタ、タッタ、タッタ... 」と、女大公殿下以下、フリッツ、コーラスが飄々と歌う"Ah! c’est un fameux régiment"(disc.1, track.15)などなど、1幕からして、一緒になって歌えてしまうフレーズが次から次に繰り出され。そうして、お約束の幕切れに向けてのスラップスティックな盛り上がり!特に最高なのが、2幕の幕切れ(disc.2, track.9)。クラシックの堅苦しさなんて吹っ飛んでしまう、フレンチ・カンカンなテイストのテンションの高さ!オッフェンバックのオペラはB級?チープさが売りではあるけれど、それを全力で創り上げてゆくオッフェンバックの作曲家魂というのは大したもので、手を一切抜かないB級、チープ感の圧倒的なあたりは、19世紀、グランド・オペラの時代、ヴェルディやワーグナーの対極にあって、まったく負けていないと強く感じる。そもそも、オッフェンバックの音楽性というのは、実は、同時代において、比類ないものがあるように思う。
何気ないメロディの、聴く者の耳をグっと捉えて離さないそのセンス... ロッシーニが「シャンゼリゼのモーツァルト」と呼んだのも納得。それから、この『ジェロルスタン女大公』を改めて聴いてみて、オーケストレーションもなかなかなもので... シンプルではありながらも、的確に、表情豊かにシーンを描き出し、物語を息衝かせる。となると、下手なオペラより、ずっと中身が詰まっているように感じてしまう。いや、オペラのどっしりとした重さから解放されて、軽快にトンデモな物語が展開されていく様は、クラシックの枠組みを飛び越えて、より現代的な可能性を孕んでいるようにも思う。何より、トンデモなその物語!トンデモに籠められた、時代への痛烈な風刺... その切れ味の鋭さは、時間を経た今でも、十分に鋭いから驚かされる。というより、オッフェンバックが生きた時代と、我々が生きている時代がびっくりするほど共鳴してしまうからおもしろい。ブレっぱなしの権力者、お騒がせなセレヴ、振り回される人々。で、振り回されてしまう人々にもズルさはあって。そうした社会の生々しい姿を鮮やかに戯画化し、圧巻の喜劇に仕立て上げる妙... B級で、チープであることに躊躇なく、それこそに美学を見出し得るオッフェンバックのあっ晴れな態度は、クラシックにしてクラシックらしからぬ、何か突き抜けたアピールがあるのかも...
そのオッフェンバックのエスプリを、見事に形にするミンコフスキ!レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルが奏でるチャキチャキの音楽!それは胸すく瞬間の連続で... そんな演奏に乗せられて、また見事にキャラクタリスティックなパフォーマンスを繰り広げる歌手たち。"マダム"をやらせたら右に出る者はいない?ロット(ソプラノ)の女大公の、高慢さと愛嬌の絶妙なバランス... まさにプロム・キング?なイメージ、ブロン(テノール)の歌う、実に調子のいいフリッツ。間抜けなトップのドジっぷりが見事にはまるル・ルー(バリトン)のブン将軍。まったく、みんながみんな見事に息衝き、その立ち居振る舞いが今にも見えてきそうで、彼らの芸達者ぶりには舌を巻く。冗長になりかねない台詞部分も、まるでそのまま音楽を聴くかのように飽きさせず、下手すると、言葉の壁を乗り越えて、そのおもしろさが伝わってしまうから、凄い。で、コミカルに弾むフランス語の楽しげな表情には魅了される。
さて、久々に『ジェロルスタン女大公』を聴いたのだけれど、充実した音楽がそこにあって、ちょっと驚いてみる。90年代末からゼロ年代前半に掛けて、最高のオッフェンバックを聴かせてくれたミンコフスキだったが、そうした中で、『ジェロルスタン女大公』は、他に比べると大人しい印象を受け、多少、物足りない?ようにも感じていたのだけれど。改めて聴けば、ミンコフスキの至ったオッフェンバック像というものを見出し、改めてこの作曲家のおもしろさ、隠れた凄さというものに感じ入る。で、今さらながらに『ジェロルスタン女大公』は魅力的だなと... いや、元気が出る!こんな世の中だからこそ、こういう音楽が元気をくれる!

OFFENBACH
LA GRANDE-DUCHESSE
DE GÉROLSTEIN Marc Minkowski


オッフェンバック : オペラ・ブッフ 『ジェロルスタン女大公』

女大公 : フェリシティ・ロット(ソプラノ)
ヴァンダ : サンドリーヌ・ピオー(ソプラノ)
フリッツ : ヤン・ブロン(テノール)
ピュック男爵 : フランク・ルゲリネル(バス)
ポール選帝侯子 : エリック・ユシェ(テノール)
ブン将軍 : フランソワ・ル・ルー(バリトン)
グロック男爵 : ボリス・グラッペ(バリトン)
ネポミュック : アラン・ガブリエル(テノール)

マルク・ミンコフスキ/レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル

Virgin CLASSICS/5 45734 2

12月、フランスを巡り...
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