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そりゃ、みんな大好きだよね... メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲... [2012]

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これぞクラシック!という1曲、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲...
三大ヴァイオリン協奏曲として知られる作品だけれど、"ヴァイオリン協奏曲"というスタイルにおいてのみならず、クラシックそのものを体現しているような、際立った存在感がある。例えば、あの1楽章のメロディ!一度聴いたら忘れられない、19世紀、ロマン派なればこその歌謡性!これほどに歌い上げてしまうメロディが他にあるだろうか?クラシックは演歌だよ... なんて言いたくもなる、そのキャッチーさには、ちょっとチープ感も滲み、独特なものがある。が、作品としてのクウォリティは、メンデルスゾーンならではのハイ・クウォリティ!たっぷりと歌い上げながら、優雅で、キラキラと輝き、なかなか他には探せないブリリアントなコンチェルトでもある。そりゃ、みんな大好きだよね... 普段は、コテコテなクラシックを嫌煙していても、告白せずにはおれません。好きです。
という作品を、注目のヴァイオリニスト、アリーナ・イブラギモヴァが、ピリオドのヴァイオリンに持ち替えて挑む?!で、注目のマエストロ、ウラディーミル・ユロフスキの指揮、イギリスを代表するピリオド・オーケストラ、エイジ・オブ・インライトゥンメント管弦楽団がアリーナをサポートするという豪華さ... そんな、ピリオド・アプローチによる名曲、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲(hyperion/CDA 67795)を聴く。

しかし、序奏も何もなく始まるんだなと... もう、のっけからあのメロディが流れ出すわけだ... 例えば、バガニーニのヴァイオリン協奏曲ならば、いつ本編が始まるんだ?というくらい、しっかりとオーケストラによる序奏があって、やっとヴァイオリン・ソロが聴こえてくるのだけれど、メンデルスゾーンは恐ろしいほどに出し惜しみをしない!とにかく、いさぎよ過ぎるくらいに、このコンチェルトの最も美味しい部分を冒頭で披露してしまう。いや、久々に聴いて、面喰うというか、呆気に取られるというか、まったく大した自信だよ。と、ツッコミを入れずにはいられないのだけれど、そこから見事に音楽を展開して、美しく、印象的に2楽章(track.2)へとつないでみせて、インパクトあり過ぎの冒頭のメロディを、さらりと昇華してしまう。やっぱりメンデルスゾーンは凄い...
という名曲を、ピリオド・アプローチで挑んだアリーナ。ピリオドでなくても注目しただろうけれど、それにしてもピリオドとは!21世紀の若い世代にとって、モダンであるかピリオドであるかなど、まったく異に返さないことなのだなと... このニュートラルな感覚に、今というものをより感じ、ピリオドの歩みをつぶさに見つめ追ってきた者(といっても90年代後半からだから、そう年期は入っていないのだけれど... )には、感動すら覚えてしまう。で、その演奏なのだが... ヴィブラートは抑えつつ、ピリオドというものを意識させるサウンドをしっかり聴かせてくれるのだけれど、変にストイックになるでもなく、器用にも情感豊かに歌い上げて。さらに印象的なのが、独特の重量感というか、線の太さというのか... ヴァイオリンの美しさを徹底して聴くイメージのあるこのコンチェルトに、もう少し現実的な重さを与えていて、新鮮。優等生的なメンデルスゾーンの音楽は、時にもの凄く軽く奏でられてしまうようなところがあるけれど、アリーナはピリオドであることをしっかりと受け止めて、そこから確固たる音を立ち上げて来る。そうして響き出すメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲というのは、これまでになく地に足の着いた音楽となり、唯美主義に踊らない独特の聴き応えをもたらしてくれる。これは、ユロフスキ+エイジ・オブ・インライトゥンメント管(以後、OAE)が紡ぎ出すサウンドにも言えて、2曲目、「フィンガルの洞窟」(track.4)の、たっぷりと水気を含んだような瑞々しくも、ずっしりとくる演奏に、スコットランドの荒涼とした風景がリアルに広がるかのよう。OAEのいつものクリアなサウンドに、豊かな情感が加わって生まれるロマン派なればこその風合に魅了される。このあたりが、ユロフスキの魔法?音楽を息衝かせることに長けたマエストロならではの魅惑的な音楽に惹き込まれる。
さて、最後はメンデルスゾーン少年、13歳の頃(1822)の作品、弦楽オーケストラの伴奏によるニ短調のヴァイオリン協奏曲(track.5-7)。早熟の天才は、すでに見事な弦楽のための交響曲の数々を書いていた頃なので、習作?なんて、とても言えないクウォリティにはもう驚かない。けれど、このヴァイオリン協奏曲も見事です。ベートーヴェンあたりを思わせる古典派の端正さに、若々しいロマン派の歌謡性で彩って、まったく美しいコンチェルトを紡ぎ出す。また、音楽がまだ複雑になっていない分、切れ味は鋭く、そこから生まれるインパクトはかなりのもので、その22年後に作曲される名曲、ホ短調のヴァイオリン協奏曲(1844)とは違うベクトルで、聴く者を捉えてくる。そんなコンチェルトを、アリーナはより軽やかに奏でていて、その軽やかさに粋を感じ、アルバムの前半とは違う魅力を振りまいてくれる。特に3楽章(track.7)のダンサブルなあたりは、クール!ユロフスキ+OAEも、ピリオドならではのエッジの鋭い演奏を繰り広げ、圧巻!

MENDELSSOHN VIOLIN CONCERTOS
IBRAGIMOVA ・ ORCHESTRA OF THE AGE OF ENLIGHTENMENT / JUROWSKI


メンデルスゾーン : ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 Op.64 *
メンデルスゾーン : 序曲 「フィンガルの洞窟」Op.26
メンデルスゾーン : ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 *

アリーナ・イブラギモヴァ(ヴァイオリン) *
ウラディーミル・ユロフスキ/エイジ・オブ・インライトゥンメント管弦楽団

hyperion/CDA 67795

11月、コテコテをピリオドで...
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