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魔術師リストの、見世物小屋に迷い込む? [2005]

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さて、11月はクラシック!クラシックど真ん中、19世紀をフィーチャー!
ということで、チャイコフスキーに続いてのリスト... なのだけれど、一時期、リストは、リリースを減らしていた?そんな印象がある。とにかく華麗で、時にダークで、ピアノ作品であるならば超絶技巧を誇って、19世紀的けれんをこれでもかと味合わせてくれるその作品。19世紀音楽の宝石箱やぁ~ とか言いたくなるのだけれど、実はそのあたりが、どこかで忌避されていた?クラシックにあっても現代的なセンスが求められる昨今、いかにもクラシックな、19世紀風?20世紀の大時代的なスタイルが過去となり、リストという存在もまた、そういう時の流れの巻き添えをくっていたような... 一方で、クラシックがスタイリッシュになりつつあるからこそ、際立つリストの音楽でもあって。そんなリストが、昨年の生誕200年を機に、再び盛り上がりを見せるのか?いや、何でもアリな21世紀だからこそ、リストの劇画調な音楽は、逆にカッコいい!と、今は、強く言いたい!のだけれど... どう?
そんなリストを思う存分に炸裂させる、2005年にリリースされた、ジョス・ファン・インマゼール率いる、ピリオド・オーケストラ、アニマ・エテルナによる、「死の舞踏」、交響詩「前奏曲」といった、リストの代表作を集めた1枚(Zig-Zag Territoires/ZZT 041102)を聴き直す。

インマゼールが生み出す音楽というのは、独特(と、このマエストロの演奏を取り上げるたびに書いているような気がするのだけれど... )。特に何かをするのではなく、ピリオド楽器なればこその未洗練なサウンドをひたすらに信じて、そのありのままの状態からスコアに添って、可能な限りの音楽を実直に立ち上げてゆく。言うなれば、「ピリオド・アプローチ」そのものか... 一見、キテレツなことをしていそうで、思いの外、淡々と、音楽を紡ぎ出すインマゼール。しかし、その淡々としたところから放たれるサウンドというのは、異形の雰囲気をまとう。整えることに気を取られないインマゼールの下、剥き出しのピリオド楽器たちがぶつかり合いながら編み上げるハーモニーというのは、モダンのオーケストラでは得られない、際立った個性と存在感を生む。そんなインマゼール+アニマ・エテルナのリスト、始まりは「死の舞踏」。それは、まさに、うってつけ。
デ・ヴァールが弾く、1886年製、エラールのピアノの、最初の一音から、驚くほど薄気味悪い... そのくすんだ音色のズシリと重いところに、ブラスによる黙示録的なディエス・イレのメロディが乗っかるわけだが、これでもかとおどろおどろしさが極まって... まさに、ピリオド楽器の未洗練な状態が、この作品の異様さを掻き立てる。いや、これこそがリストの狙った効果か?リストの頃に還って蘇る、生々しい奇っ怪な情景!禍々しいほどに盛り上げられるその奇怪さに、何か19世紀の空気感のようなものを見出す。続く、1番のハンガリー狂詩曲(track.2)では、その序奏のヤリ過ぎなくらいの滴るほどのプリミティヴさに、中てられるようで、かえっておもしろさが炸裂していて... いや、こういうプリミティヴさこそ、ピリオド楽器の性質。それをマキシマムに繰り広げての、この過剰さこそ、魅力... そういうところから、何ともヒロイックな交響詩「前奏曲」(track.3)を聴くのだけれど、そのヒロイックさがまるで劇画ちっく!その胸すくような展開がまたカッコよくて... ストレートに楽しんでしまう。
が、普段のインマゼールだったら、これほど能動的に音楽を描き出すだろうか?今、改めて聴いてみると、インマゼールにしてはサービス精神旺盛?もっと作品を突き放して、ピリオド楽器の旨味で作品を魅惑的なものに仕上げてくるのがインマゼール流のように思うのだけれど... それをさせてくれないのがリストの音楽?見世物小屋的な、ギミックさが詰まっているその音楽は、ある意味、突き放すことができない音楽なのかもしれない。そして、それこそがリストの魔法か。いいようにリストに取り込まれているインマゼールの姿に、リストという存在の興味深さを改めて知る。さらには、ピリオド楽器が、リストの見世物小屋的世界をよりくっきりと描き出していて。アニマ・エテルナも、いつもよりアグレッシヴに攻めて来るようなところが感じられて、パワフルであり、またしなやかでもあり、いい具合に海千山千の調子の良さを聴かせて、魅了されてしまう。そうして、モダンのオーケストラの洗練された響きで隠されていたものが、今ここに白日の下に曝され、ギョっとさせられつつも、そのインパクトのある音楽世界にグイグイと惹き込まれる。"ピアノの魔術師"と呼ばれたリストだが、そのオーケストラ作品でも十二分に魔術師であって、この魔術師に化かされる楽しさというのか、取り澄ましていないコテコテなクラシックというのが、何だか、妙に新鮮。クラシックにはこういう切り口もあるのだなと、思い掛けなく感心してしまう。
しかし、コテコテなクラシックというのは、ちょっと栄養ドリンクに似ている。いろいろ考えることなく、ただ身をゆだねるだけで、「クラシック」な世界に連れて行ってくれて。派手なサウンドで盛り上がりつつ、気分も上げてもらって。ふと気がつくと、何だか元気。こういう楽なスタンスで音楽に浸れるって、悪くないのかも。気難しく捉えるばかりがクラシックではないなと...

LISZT | ANIMA ETERNA | van Immerseel | de Waal

リスト : 死の舞踏 S.126, R.457 *
リスト : ハンガリー狂詩曲 第1番 ヘ短調 S.244-1
リスト : 交響詩 「前奏曲」 S.97
リスト : ハンガリー狂詩曲 第3番 ニ長調 S.244-3
リスト : 交響詩 「ゆりかごから墓場まで」 S.107
リスト : 交響詩 「マゼッパ」 S.100

ジョス・ファン・インマゼール/アニマ・エテルナ
リアン・デ・ヴァール(ピアノ : 1886年製、エラール) *

Zig-Zag Territoires/ZZT 041102

11月、コテコテをピリオドで...
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