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ロマン主義者たちのパリ。 [2012]

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新シーズン、明けまして、おめでとうございます。
9月となり、クラシックはシーズン開幕!新たな季節の始まり... のはずが、カレンダーを1枚めくっただけで、気温は特に変わる気配無しの夏の延長選状態。「芸術の秋」なんて気分に浸れるのは、まだまだ先の話し。そんなことを思うと、ゲンナリしてしまうのだけれど、いや、ここで一区切り。クラシックがしっくりとくる頃を待ちながら、クラシックな気分を掻き立てるロマン主義を... それもドイツではなく、ちょっと気取ってパリ!ふと振り返ると、ロマン主義とパリという括りで聴く機会は無かったのかも?そんな興味深さもあって手に取ったアルバム...
ジェレミー・ローレル率いる、フランスのピリオド・オーケストラ、ル・セルクル・ドゥ・ラルモニの演奏で、ロマン主義のパリで活躍した作曲家たち、ルベル、ベルリオーズ、リストの作品で彩る、"Le Paris des Romantiques"(ambroisie/AM 207)を聴く。

フランス音楽にとっての19世紀は空白期... 19世紀を代表するムーヴメント、ロマン主義は、ドイツ―オーストリアが主導したわけで、ベルリオーズの例外を除いて、フランス人の存在は希薄。となると、19世紀のレパートリーが圧倒的に中心であるクラシックを聴いていると、フランスの位置付けというのは、随分と分が悪いように感じる。一方で、その当時のパリというのは、イタリアの人気オペラ作曲家に、ヨーロッパ中のヴィルトゥオーゾたちを集めて、ヨーロッパ随一の華やかさを誇っていたのも事実。クラシックの脇に追いやられたフランスと、クラシックの中心だったパリ... このねじれが、ちょっともどかしくもある。さて、そんな「ねじれ」をつぶさに捉えて、新鮮な視点でロマン主義のパリを聴かせてくれる、ローレル+ル・セルクル・ドゥ・ラルモニの"Le Paris des Romantiques"。まず、驚きなのが、ナポレオン・アンリ・ルベル(1807-80)の交響曲。
『四大元素』で知られるバロック期のルベル(1666-1747)なら知っているけれど、ロマン主義のルベルは初めて知った。何より、ベルリオーズ(1803-69)と同世代のフランス人による交響曲が聴けることに、興味津々!で、その交響曲だが、ルベルの4つ書かれた交響曲の4番、ちょうどシューマンの「ライン」が書かれた頃、1850年の作品。となると、まさにロマン主義が盛り上がっていた時代の作品となるわけだが、聴き慣れたドイツ―オーストリアのロマン主義に比べると、少しオールド・ファッション?何となしに古典派のトーンを漂わせていて... ルベルは、パリでベートーヴェンの紹介に力を入れていたらしいのだが、そうしたあたりに納得の、フランス風ベートーヴェン。で、より透明感を感じさせるあたりがフランス風?そのあたりが、ベートーヴェンよりも軽さを生んでいて、独特の聴き易さがあるのか。ドイツ―オーストリアのロマン主義のくどさというか、やがてマーラーへと流れ着いてゆくロマン主義の澱から解き放たれた爽やかさが印象的。さすがに幻想交響曲のようなスリリングさはないけれど、フランス音楽にとっての19世紀は空白期... を埋める貴重な1曲は、思い掛けなく、魅力的。
そんな作品を掘り起こしたローレル+ル・セルクル・ドゥ・ラルモニ、彼らの演奏がまたさらに魅力的!ピリオドならではの透明感を活かしつつ、若いマエストロと若いオーケストラなればこそのテンションに彩られ、見事に息衝く音楽!時折、その「若い」あたりに中てられることもあったが、このルベルでは、メンバーひとりひとりが放つ若々しいサウンドがすばらしくヴィヴィット!ルベルの、ベートーヴェン・シンパの、シンパ過ぎるほどの様(終楽章の最後なんて、「英雄」のフィナーレか?)と、絶妙にはまってしまって、おもしろい!
続く、ベルリオーズの夢とカプリッチョ(track.5)では、コンサート・マスター、ショーヴァンのヴァイオリンがとにかく聴かせる... 普段だと少しダレてしまいそう感じる、ベルリオーズにしては甘めの音楽も、ショーヴァンの力強さを備えた美しさが捉えると、全ての瞬間が活き活きとした表情を見せ聴き入るばかり。そして、"Le Paris des Romantiques"を締めるのが、シャマユの弾くリストの1番のピアノ協奏曲(track.6-9)。いや、シャマユがピリオド対応可であることにまず驚かされる。次世代のピアニストとって、もはやピリオドは特殊な領域ではないのか?いや、こういう現代っ子な感覚が、クラシックを新たな次元へと引き上げると感じているのだけれど... そのあたりはさて置き、その演奏なのだが、これがまた現代っ子感覚を炸裂させていて... 1837年製、エラールを前に、挑むように弾き上げるシャマユの力強いタッチ!アンティークのピアノを繊細に撫でるのではない、臆すること無く攻める姿勢が気持ちいい!というより、リストがそうだったはず... 希代のヴィルトゥオーゾならば、こんなタッチで、こんなサウンドを響かせたのではないか?という音楽を繰り広げて、スリリング!また、ローレル+ル・セルクル・ドゥ・ラルモニのテンションもあって、作品全体の温度を上げてしまうかのよう。いや、この熱さこそロマン主義か... 若さから滾々と湧き上がる音楽に、元気をもらうかのよう。パワー・ミュージック!
という"Le Paris des Romantiques"、ドイツ―オーストリアの音楽に対するストイックな姿勢と、そうして生まれる濃厚さとは違う、ショウアップされた当時のパリの音楽シーンを垣間見るようで、何と華やかな... また、その華やかさには、禍々しさが入り混じりもするのだけれど、それがまたエスプリであって... 軽薄さに艶っぽさすら漂わせて、若々しさではち切れんばかりでありながら、大人のロマン主義にも成り得ているおもしろさ。老成されたロマン主義では無い、危なっかしいロマン主義の虚と実、夢現を遊ぶ感覚が、得も言えないものに仕上がり。そんな気分でルベル、ベルリオーズ、リストを包む、ローレル+ル・セルクル・ドゥ・ラルモニに、予想外に脱帽。彼らが、次に何をし掛けて来るのか、俄然、気になってしまう。

Chamayou Chauvin Rhorer Le Cercle de l'Harmonie Le Paris des Romantiques

ルベル : 交響曲 第4番 ト長調 Op.33
ベルリオーズ : 夢とカプリッチョ Op.8 *
リスト : ピアノ協奏曲 第1番 変ホ長調 S.124 *

ジュリアン・ショーヴァン(ヴァイオリン) *
ベルトラン・シャマユ(ピアノ : 1837年製、エラール) *
ジェレミー・ローレル/ル・セルクル・ドゥ・ラルモニ

ambroisie/AM 207




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