地中海に溺れる。 [2006]
それにしても、オリンピックが盛り上がりますね... よって、睡眠不足です...
さて、オリンピックにはもの凄い数の国と地域が参加している。地球はひとつ。でも、世界を成している国々は、これほどまでにあるのか、世界はこんなにも細かく分かれているのか、と、開会式の行進の長さには少し飽きつつも、驚かされる。そして、この国、どこにあるの?とか、あえて「地域」と呼ばれる不思議に、世界は広いなと、改めて思う。そんな広い世界に刺激されて、あちこちへ音楽で旅する当blog。イタリア、ハンガリーと来て、地中海を西から東へ... そして、再び西へ... 国境線では割り切れない、織り成される地中海文化圏を彷徨う。
2006年にリリースされた、トーマス・ヴィンマー率いる、アクセントゥス・アウストリアによる、"ROMANCES SÉFARADES"(ARCANA/A 341)と、日本の古楽アンサンブル、アントネッロによる、カンティーガ集、『薔薇の中の薔薇』(Anthonello MOOD/AMOE-10001)を聴き直す。
さて、オリンピックにはもの凄い数の国と地域が参加している。地球はひとつ。でも、世界を成している国々は、これほどまでにあるのか、世界はこんなにも細かく分かれているのか、と、開会式の行進の長さには少し飽きつつも、驚かされる。そして、この国、どこにあるの?とか、あえて「地域」と呼ばれる不思議に、世界は広いなと、改めて思う。そんな広い世界に刺激されて、あちこちへ音楽で旅する当blog。イタリア、ハンガリーと来て、地中海を西から東へ... そして、再び西へ... 国境線では割り切れない、織り成される地中海文化圏を彷徨う。
2006年にリリースされた、トーマス・ヴィンマー率いる、アクセントゥス・アウストリアによる、"ROMANCES SÉFARADES"(ARCANA/A 341)と、日本の古楽アンサンブル、アントネッロによる、カンティーガ集、『薔薇の中の薔薇』(Anthonello MOOD/AMOE-10001)を聴き直す。
"Serenata Hungarica"(deutsche harmonia mundi/88697911052)を聴いて、そう言えばと引っ張り出して来たアルバム、ヴィンマー+アクセントゥス・アウストリアの"ROMANCES SÉFARADES"。イベリア半島におけるレコンキスタの完遂(1492)とともに、イベリア半島を追放されたユダヤ人たち、セファルディムによるロマンセを集めたアルバム。セファルディムたちは、イベリア半島から地中海の対岸、北アフリカへと渡り、その北アフリカからオリエント世界、バルカン半島までを支配していたオスマン・トルコ領内に広く離散し... そして、このアルバムで取り上げられるのは、オスマン・トルコの宮廷におけるセファルディムの音楽。改めて聴き直してみると、ヨーロッパの中世を思わせる素朴さに、アラベスクというか、トルコ風なのか、もちろんユダヤっぽくもあり、様々な文化を背景としたテイストを見出し、思い掛けなく興味深く感じる。聴く側も、それだけ幅を以って音楽を聴いてきたということか、この6年の歩みを少し感慨深く思ってみたり...
それにしても、様々なテイスト!そして、それらが織り成すサウンドは、まさに地中海文化圏そのものであって。"ROMANCES SÉFARADES"に綴られる音楽は、セファルディムというひとつのエスニックによるものではあるけれど、歴史に翻弄され、地中海を東から西へ、そしてまた西から東へと移動したセファルディムだからこその、より多くの文化と接したからこその、他にはない広がりが籠められていて、おもしろい。それでいて、様々な文化が交錯しての類い稀なる「味」を生み出した"地中海"というスープを味わうようでもあり、ブイヤベース的な雑多さと同時に、様々な具材からの出汁が溶けあい、より深い「旨味」を堪能させてくれる。そこに、ユダヤならではのキャッチーなメロディ!その人懐っこさは、抗し難いものがあって... 時に昭和の懐メロ?くらいの、親近感もあったりで、その距離感が不思議。ユダヤと日本はどこかでつながっているのか?
というセファルディムのロマンセを、丁寧に響かせるアクセントゥス・アウストリアの演奏もすばらしく。何より、マリア・ルス・アルバレス(ソプラノ)、セザール・カラツォ・ジャロン(テノール)の歌が印象的で... 艶やかで深みのある歌声が、哀愁を帯びたメロディを捉えると、切なくなるばかり。"ROMANCES SÉFARADES"には、いつものクラシックよりも、聴く者の心をダイレクトに侵食してくるような、底知れぬ迫力がある。それが、セファルディムの悲しみ?久々に聴き、改めてその魅力の虜に。
ROMANCES SÉFARADES DANS L'EMPIRE DE LA SUBLIME PORTE
ACCENTUS AUSTRIA ・ THOMAS WIMMER
■ Nacimiento y vocacion de Abraham
■ A la una yo naci (Sarajevo)
■ La roza enflorese
■ Asentada en mi ventana
■ Eli, Eliyahu
■ El sueno de la hija del Rey
■ Instrumental sans titre
■ Hermanas reina y cautiva
■ Tu Madre cuando Te Pario
■ El yivne haggalil
■ Mi suegra
■ Abre, Tu Puerta Cerrada
■ Morenica
■ Nani nani, Sephardic cradle song
■ Yo m'enamori d'un ayre, song
■ Una matica de ruda
■ Adonay bekol shofar
■ La comida d'la manana
トーマス・ヴィンマー/アクセントゥス・アウストリア
ARCANA/A 341
ACCENTUS AUSTRIA ・ THOMAS WIMMER
■ Nacimiento y vocacion de Abraham
■ A la una yo naci (Sarajevo)
■ La roza enflorese
■ Asentada en mi ventana
■ Eli, Eliyahu
■ El sueno de la hija del Rey
■ Instrumental sans titre
■ Hermanas reina y cautiva
■ Tu Madre cuando Te Pario
■ El yivne haggalil
■ Mi suegra
■ Abre, Tu Puerta Cerrada
■ Morenica
■ Nani nani, Sephardic cradle song
■ Yo m'enamori d'un ayre, song
■ Una matica de ruda
■ Adonay bekol shofar
■ La comida d'la manana
トーマス・ヴィンマー/アクセントゥス・アウストリア
ARCANA/A 341
セファルディムが追放される前のイベリア半島、カスティーリャ王、アルフォンソ10世(在位 : 1251-82)が編纂した『聖母マリアのカンティーガ集』。音楽史のメインストリームでは、ちょうどノートルダム楽派からアルス・アンティクアの時代、ゴシック期。静々とミステリアスに聖歌が歌われていた頃、イベリア半島では、随分とカラフルな音楽世界が展開されていたわけだ。イスラム世界とヨーロッパが直接、接し、せめぎ合い、さらにはユダヤの人々も多くいて、様々な文化が互いに影響し合い、独特のトーンを生み出していた中世のイベリア半島。そこに生まれたカンティーガ(頌歌)は、そうした混交する文化を象徴するように、一筋縄ではいかない刺激的な様相を見せる。そのカンティーガを大胆に歌い上げるアントネッロ、『薔薇の中の薔薇』。久々に聴くそのサウンドの、賛否を呼んだオーガニックさに、改めて心震わされる思い...
地声で繰り広げられる、キャッチーでエキゾティックな歌の数々。そこにアントネッロならではの刺激的な演奏が盛り上げて、「古楽」というある種の渋いイメージはあっさりと拭い去られ、とにかくヴィヴィット!大地に根差した音楽(というあたりが、すでにワールド・ミュージック的なのだけれど... )を展開しながらも、どこかニューエイジ的なセンスも漂い、その聴き応えというのは、「古楽」という枠組みを踏み越えてしまっているのかもしれない。いや、それこそがアントネッロであって。カンティーガの様々な文化がフュージョンされた感覚と、常に古楽と他のジャンルをフュージョンさせようと試みるアントネッロの感性が絶妙に響き合い、よりおもしろい音楽に仕上がっている。そもそもカンティーガは単声の音楽であって、肉付けは現代の音楽家たちによって様々になされるもの... ま、古楽というもの自体が、そんな感じではあるのだけれど、過去の復元に留まらない、創造的復元ともいえるアントネッロのアプローチは、これまでも様々に個性的なアルバムを繰り出して来たカンティーガのアルバムに、さらに新鮮なイメージをもたらしてくれる。何より、力強い!その漲る生命力に、絵本に描かれるのではない、中世の野太さのようなものを見出し、圧倒されてしまう。多少、女声陣の歌声に幼さがあって、残念に思う部分もあるのだけれど、始まりのボナヴィータの渋い語り(本業はリュートだけれど、語らせてもいい!)に、春日保人の艶やかなバリトンには聴き惚れる。もちろん、アントネッロの演奏も最高!
薔薇の中の薔薇 アルフォンソ10世編纂 聖母マリアのカンティガス アントネッロ
■ プロローゴ 「詩を作り歌うとは」
■ カンティーガ 第1番 「これから私は尊敬された女主人のために歌います」
■ カンティーガ 第330番 「薔薇の中の薔薇」
■ カンティーガ 第15番 「すべての聖人たち」
■ カンティーガ 第139番 「驚くような、慈悲にあふれ、実に美しい奇蹟を」
■ カンティーガ 第384番 「その大変な美しさゆえに花の中の花と呼ばれる方は」
■ カンティーガ 第167番 「聖処女を信頼して熱心に祈る者は誰でも」
■ カンティーガ 第100番 「聖母マリア、夜明けの星よ」
■ カンティーガ 第166番 「人々は罪によって」
■ カンティーガ 第60番 「アヴェとエヴァの間には大きな違いがあるのです」
■ カンティーガ 第26番 「驚くには値しません、もし世界をお裁きになる方の母君が良い裁きを下せるとしても」
■ カンティーガ 第422番 「神の母よ、そのときわれらのために御子にお祈り下さい」
■ カンティーガ 第37番 「美しく驚くべき奇蹟を」/カンティーガ 第159番 「聖母マリアは許しません、聖母巡礼を」
■ エスタンピー
■ カンティーガ 第425番 「喜びよ、喜びよ」
アントネッロ
濱田芳通(リコーダー/コルネット/ショーム/スライド・トランペット/ダブル・フルート/ブラッダー・パイプ)
石川かおり(フィーデル)
西山まりえ(ヴォーカル/ゴシックハープ/オルガネット/カスタネット)
春日保人(ヴォーカル/フルート)
花井尚美(ヴォーカル)
藤澤絵里香(ヴォーカル/ダルシマー/パーカッション)
岡庭弥生(ヴォーカル/パーカッション)
矢野薫(オルガネット/プサルテリー)
中村孝志(スライド・トランペット/コルネット)
わだみつひろ(パーカッション)
ラファエル・ボナヴィータ(語り)
Anthonello MOOD/AMOE-10001
■ プロローゴ 「詩を作り歌うとは」
■ カンティーガ 第1番 「これから私は尊敬された女主人のために歌います」
■ カンティーガ 第330番 「薔薇の中の薔薇」
■ カンティーガ 第15番 「すべての聖人たち」
■ カンティーガ 第139番 「驚くような、慈悲にあふれ、実に美しい奇蹟を」
■ カンティーガ 第384番 「その大変な美しさゆえに花の中の花と呼ばれる方は」
■ カンティーガ 第167番 「聖処女を信頼して熱心に祈る者は誰でも」
■ カンティーガ 第100番 「聖母マリア、夜明けの星よ」
■ カンティーガ 第166番 「人々は罪によって」
■ カンティーガ 第60番 「アヴェとエヴァの間には大きな違いがあるのです」
■ カンティーガ 第26番 「驚くには値しません、もし世界をお裁きになる方の母君が良い裁きを下せるとしても」
■ カンティーガ 第422番 「神の母よ、そのときわれらのために御子にお祈り下さい」
■ カンティーガ 第37番 「美しく驚くべき奇蹟を」/カンティーガ 第159番 「聖母マリアは許しません、聖母巡礼を」
■ エスタンピー
■ カンティーガ 第425番 「喜びよ、喜びよ」
アントネッロ
濱田芳通(リコーダー/コルネット/ショーム/スライド・トランペット/ダブル・フルート/ブラッダー・パイプ)
石川かおり(フィーデル)
西山まりえ(ヴォーカル/ゴシックハープ/オルガネット/カスタネット)
春日保人(ヴォーカル/フルート)
花井尚美(ヴォーカル)
藤澤絵里香(ヴォーカル/ダルシマー/パーカッション)
岡庭弥生(ヴォーカル/パーカッション)
矢野薫(オルガネット/プサルテリー)
中村孝志(スライド・トランペット/コルネット)
わだみつひろ(パーカッション)
ラファエル・ボナヴィータ(語り)
Anthonello MOOD/AMOE-10001
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