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朝の雨に感謝するために... [selection]

雨の日、曇りの日、"misty"な日々... ちょっと気鬱な梅雨空も楽しむために...
と、それぞれの季節に合わせて、聴いてみたいアルバムをセレクションしてきたのだけれど、夏を前に、梅雨に聴いてみたいアルバムもセレクションしてみようかなと... で、その「梅雨」なのだけれど、やっぱりネガティヴなイメージがある。雨が降れば面倒くさいし、降るのか降らないのかはっきりしないのも面倒だし。けど、それだけ他にはない感覚があるのも梅雨であって。「四季」という4つの区分で語られる季節に対して、梅雨の個性というのも際立ったものがある。春から夏への変わり目でありながら、春にも夏にもない梅雨なればこその感覚がしっかりとあって、5つ目の季節としてもいいように感じてしまうのだけれど。そんな「梅雨」を聴く音楽。変に暗くなるつもりはないけれど、窓越しに雨降りの風景を見つめながら、グレーの雲の下、気分をカラリとさせてくれる音楽ではなくて、仄暗さと湿り気を感じさせる音楽を聴いてみる。そういうのもいいかなと。
ということで、選んでみる。雨の日に聴く6タイトル。

「雨だれ」、「雨の歌」、「雨の庭」、「雨の樹」、
とりあえず、思い付くだけ並べてみる、雨にまつわる作品。で、これくらいが精一杯、あまり思い付かなかったのだけれど。どれも有名な曲(「雨の樹」に関しては、誰もが知る... とまでは行かないにしても、武満作品としては有名な曲... ということで... )であまり新鮮味はないか。もちろん、丁寧に調べれば、もっといろいろ出てくるのだろうけれど。とりあえず、この4曲、どれも瑞々しく、"雨"のしっとりとした情感をよく捉えていて印象的... 改めて、そのひとつひとつのサウンドに触れてみると、嗚呼、雨っていいな... なんて、思えてくる。現実はそんな悠長にもしていられない雨ではあるのだけれど、音楽がひとつの気象現象を捉えると、鮮やかに美しさを見出してしまう!やっぱり音楽は凄いなと思う。ある意味、魔法かもなと、つくづく感じる。
ということで、そんな魔法を掛けてくれるアルバムを6タイトル。雨にこだわるでもなく、何となく... のイメージではあるのだけれど、仄暗さと湿り気を感じさせるサウンド。カラっとしているより、曇り空の下で映える音楽?雨の日をより情感豊かにしてくれる音楽...
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まずは、古のケルトの世界に思いを馳せる、オリーガンの最新盤、"Acallam na Senórach"。ケルトのイメージには、どこか湿り気を感じる。荒涼とした風景の、その大地は苔むしていて、地を這う緑が豊かな伝説や神話を生み出すような... 石造りのヨーロッパ以前の、自然に深く根差した独特の瑞々しさが、日本の梅雨の空気感によく合うのか、リリースされた春よりも、今の方がその美しさをより感じられる。ヒリアー+アイルランド国立室内合唱団のウェットな歌声がまた、じんわりプリミティヴ。
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そして、ずばりケルト... 古楽の巨匠、サヴァールが、ローレンス・キングのハープを伴って、ケルト音楽に挑んだ"THE CELTIC VIOL"。いつもの通り、渋い、サヴァールのヴァイオル... その渋さが、ケルトのセンスにぴたりとはまり... 実は、渋過ぎて、ちょっと嫌煙していたアルバムだったのだけれど、今の季節には間違いなく合う!ヴァイオルとハープだけのシンプルさ、素朴なサウンド、キャッチーなメロディ、どこか物悲しい雰囲気は、気鬱な今だからこそ心に沁みる。そして、大地に根差した、深い音楽に癒される...
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さて、フォークロワから離れて... タローがクープランをピアノで弾く"tic, toc, choc"。クラヴサンにはない、ピアノなればこその豊かな表情から繰り出されるロココの音楽の瑞々しさ!そして、ロココならではの装飾音が、どこか雨音を思わせて、心地良く降り注ぐようでもあり... それは、リズミカルで楽しいひと時となる。が、その後で、ロココの物憂げな気分が広がり、そういうメランコリーに浸るのもまた悪くない。いずれこの空も晴れるだろうから... どこか、そんな楽観とやさしさを感じて、安堵感にも包まれる。
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あるいは、謎めく音楽... リンコントロによる、古典派の時代、弦楽四重奏の迷宮を彷徨う"QUARTETTI FUGATI"。古いスタイルであるフーガをテーマに、18世紀、ウィーンの新旧の作曲家による弦楽四重奏のための作品を、まるで謎掛けのように並べたリンコントロ。答えは出ないかもしれない... けれど、そのミステリアスさがいい... 弦楽四重奏というストイックな編成から生み出されるフーガの森の思い掛けない深さ!その森に踏み入り、やがて霧が立ち込めて... 古典派のはずが、荘重なバロックが姿を現して...
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さらに、謎めく音楽... 現代音楽の巫女?メレディス・モンクの"impermanence"。果たしてこれは何なのか?となる。けれど、そういうものを突き抜けた彼女ならではのイノセンスさに、ただならず魅了されることに。切なげなトーンの中、時折、立ち現れる、正気を失ったようなヴォイス・パフォーマンス... あるいは、わらべ歌のようなキャッチーなメロディ... それは呪文なのか?秘儀めいても聴こえる。その不可思議さが、梅雨の空模様に重なって、迷い込んではいけない世界へと誘う...
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最後は、ギャヴィン・ブライアーズのピアノ協奏曲、「ソルウェイ運河」... 運河をゆっくりと船が進むような荘重さと、そのスピードに合わせ、またゆっくりと流れてゆくまわりの風景... ブライヤーズならではのアンビエントな音楽が紡ぎ出すサウンド・スケープには、言い知れぬドラマが滲むようで、映画音楽を思わせる。そのドラマティックさが瑞々しくもヘヴィーで... この重さが、梅雨の頃には、しっくりくる。水の重み?音楽に水が含むかのよう... また、ピアノ協奏曲の前に奏でられる2つの作品も美しく、印象的。
という6タイトル。今日は、何だか晴れてしまったのだけれど... まだまだ梅雨は続くわけで... いつまで続くのかな?と考えると、気分も重くなるけれど、音楽がまたその重みを違うものにしてくれる?

さて、「朝の雨に感謝するために」。ドビュッシーの『6つの古代碑銘』の最後の曲なのだけれど、大好きな1曲でして... ドビュッシーの音楽には「海」のようなスケールの大きい作品から、「水の反映」といったピアノ作品まで、水に関わる作品が意外と多い。ドビュッシーの印象主義の音楽の、たゆたう感覚が、水の存在に近いのか?そう言えば、印象主義の、その「印象」という言葉の始まりとなったモネの絵画もまた、港からの海の情景で... 印象主義と水の関係性が、それこそ印象的に思えてくる。そして、水にまつわるドビュッシーのピアノ作品集なんかてあったら、きっと素敵だろうな...




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