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過去は良く見えるもの? [overview]

どうも、ここのところ、「小澤征爾」が、マイブーム。
とはいえ、このblogで、マエストロのアルバムは一度も取り上げていないという、大変、不埒な状況にあるのだけれど... みんなが、オザワ!オザワ!と盛り上がっていると、どうもそういうあたりから距離を取りたくなってしまう天の邪鬼な性質でして... が、村上春樹氏による小澤征爾氏へのロング・インタヴュー、『小澤征爾さんと、音楽について話しをする』でのマエストロのピュアな姿、大病を乗り越えて、新たに音楽と向き合おうとする姿に新鮮な思いをし。あるいは、青年小澤征爾の興味深いエピソード、今となっては音楽史の一部たる伝説たちとの接触が、スゲェー!みたいな、ミーハー?で、そういうところが気になって、"世界のオザワ"の世界への第一歩を綴った『ボクの音楽武者修行』を、勢い、読む。で、おもしろかった!ま、その文章は、高校生の作文的な、初々しさ(?)に充ち満ちているのだけれど、神戸港から、パリ、ブザンソン、ベルリン、タングルウッド、ニューヨークを経て、羽田へと降り立つこの疾走感!のだめ級の破天荒さがあって、おもしろ過ぎる。これ、朝ドラとかにしたら、絶対に梅ちゃんに負けないはず!なんて、思うのだけれど、90%超の海外ロケじゃ、あり得ないか... しかし、1960年代の世界のアバウトさ、汲々としていない人々、19世紀の残り香を漂わせるクラシック・シーンの雰囲気と、新たな時代を迎えようとしている青年小澤征爾に象徴される元気の良さ、何と魅力的な!それにつけ、21世紀の殺伐とした「今」は一体... もちろん、過去の全てが良かったとは思わないけれど、「今」の有様にゲンナリさせられる。そして、未来は?どうなる... 想像しようがないほど、想像力が退化し切った「今」が横たわり。言葉を無くす。

さて、今年になって、2006年にリリースされたをアルバムを聴き直しているのだけれど、早いもので、今年も半年が過ぎようとしており... ということで、ここまで聴き直してきた2006年にリリースされたアルバム、30タイトルをざっと振り返ってみようと思うのだけれど...

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いや、2006年はおもしろかった!1枚、1枚を聴き直しても感じたけれど、改めてそのジャケットをずらっと並べてみれば、余計に感じてしまう。それにしても、過去を振り返ると、思いの外、良く見えてしまうような... 『ボクの音楽武者修行』もしかりなのだけれど、時を経ての作用が、どこかにあるのだろうか?そんな風に思ってしまう今日この頃なのだけれど、これも年喰ったせいなのか?だったら、ちょっとイヤ... けど、2006年がおもしろかったことは、間違いない。そうした中で、まず印象に残るのが、ピリオド勢の活躍!
いつもながらフレッシュなクリストフ・シュペリング+ダス・ノイエ・オーケスターの演奏で聴く、瑞々しいサウンドでロマン主義の時代を飾ったもうひとりの存在、カリヴォダの交響曲集(cpo/777 139-2)。ドンブレヒト+イル・フォンダメントによる雄弁な演奏で聴く、古典派を脱した頃、グルックからケルビーニへと至るスタイルで、見事なドラマを紡ぎ出すアリアーガの声楽作品集(FUGA LIBERA/FUG 515)。リンコントロの丁寧な演奏と、凝った構成で聴く、古典派を先取りしたマンハイム楽派の巨匠、リヒターの弦楽四重奏曲集(Alpha/Alpha 089)。これまであまり聴く機会の無かった存在、作品に触れる新鮮さ... それを今、改めて聴き直しても、やはり新鮮に感じてしまうすばらしい演奏。ピリオド勢の発掘の努力というのは、改めて凄いなと感服させられる。のだが...
さらに凄いのが、ピリオド・アプローチによるレパートリーの拡大の挑戦!ヘレヴェッヘ+シャンゼリゼ管による、透き通って限りなく美しい姿を見せる、ブルックナーの「ロマンティック」(harmonia mundi FRANCE/HMC 901921)。インマゼール+アニマ・エテルナによる、ピリオド楽器の旨味を出し尽くしてこれまでになく豊かな表情を見せる、ラヴェルのボレロ(Zig-Zag Territoires/ZZT 060901)。スホーンデルヴルトが弾く、1907年製、エラールのピアノが薫り立たせる、ドビュッシーを軸とした象徴主義の時代のサロンを再現する"UNE FLÛTE INVISIBLE... "(Alpha/Alpha 096)。今でこそ、シェーンベルクやプーランクも、ピリオドの範疇で取り上げられるケースが出てきているわけだけれど、2006年の時点で、ブルックナー(ヘレヴェッヘにとっては2枚目だったが... )にしろ、フランス近代音楽にしろ、ピリオドで取り上げられてしまうことに衝撃を覚え、また多少の不安を抱えつつ聴いたことを思い出す。が、3タイトルとも、それぞれに、ピリオド・アプローチの揺るぎなさと、我が道をゆく突き抜け感が圧巻で、やるべき人たちがやり尽くしての、音楽の真実の姿に迫ってしまう凄さに驚かされる。また、今、改めて聴き直してこそ、そうしたあたりが強く感じられて。改めて、凄い!
それから、ピリオドとしての正しい範疇というか、ストライクなレパートリーでも、ピリオドならではのキレ味の良さを聴かせてくれた2タイトルが忘れ難い。シュテーガーのリコーダーが鮮やかに決まった、ベルリン古楽アカデミーによるテレマンのオーケストラ作品集(harmonia mundi FRANCE/HMC 901917)。マンゼが率いたイングリッシュ・コンサートによる激烈なる演奏が、多感主義を徹底的に鳴らし尽くす、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハの交響曲集(harmonia mundi FRANCE/HMU 907403)。嗚呼、クラシックって、なんてカッコいいだろう!そうシンプルに思えてしまう快演は、いつ聴いても最高!

もちろん、おもしろかったのはピリオドばかりではない。モダンも実に充実していて... 今、最もアグレッジヴに世界中を動き回っているマエストロのひとり、パーヴォ・ヤルヴィ... このマエストロの指揮による2つのアルバムがすばらしかった。まずは、ドイツ・カンマーフィルとのベートーヴェンの「英雄」(RCA RED SEAL/88697 00655 2)。初めて耳にした時は戸惑いすらあったけれど、聴けば聴くほど、その独特の新境地に魅了され... この「英雄」からスタートした彼らのベートーヴェンの交響曲のシリーズ、完結した今、改めて振り返ってみれば、スタートの「英雄」こそ、最も刺激的だったなと... それから、近代音楽でも光るパーヴォの存在感。彼が率いたシンシナティ響とのバルトークの管弦楽のための協奏曲(TELARC/CD-80618)。改めて聴き直してみれば、驚くほど鮮やかにバルトークの傑作が描き尽くされていて、今さらながらに驚嘆してしまう。この作品は、こんなにも凄い作品だったかと... まったく、パーヴォの視点というのは、独特で、恐るべきものがある。さて、もうひとつ近代音楽。サロネンが率いたL.A.フィルによるストラヴィンスキーの『春の祭典』(Deutsche Grammophon/477 6198)。久々に聴くと、サロネンのどこまでも明晰なスタンスと、それをあっさりと具体化してしまうL.A.フィルの演奏に、酔ってしまう。研ぎ澄まされた巨大なオーケストラが見せる輝きというのは、もはや魔法...
ここでオーケストラから離れて、ピアノ... なのだけれど、ベテラン勢のすばらしい演奏にも酔う。まずは、内田光子が弾く、ベートーヴェンの最後の3つのソナタ(PHILIPS/475 6935)。この人でなければ到達し得ない境地... そしてベートーヴェンが到達した境地... このふたつが重なって響く音楽というのは、何だろう?音楽にして音楽を越えた姿を垣間見せるよう... その仄かな温もりに包まれる心地よさに、癒されてしまう。そして、ル・サージュが弾く、シューマンの初期の作品を集めた"An Clara"(Alpha/Alpha 098)。けして派手な存在ではないけれど、粋な仕事ぶりをコンスタントに聴かせてくれるル・サージュの、思い掛けなくロマンティックな1枚。フランス人のクリラティの高いタッチが、シューマンの翳をやさしく煌めかせて、ただならず酔わされる。それから、ヒューイットが弾く、シャブリエの作品集(hyperion/CDA 67515)。この人なればこそのナチュラルなタッチから繰り出される、何気ない音楽の輝きは、ジャンルを越えた魅力さえ漂うよう。
さて、室内楽も忘れるわけにはいかない... ということで、チェロのベテラン、マイスキーを軸に組まれたトリオによる、シトコヴェツキー版、バッハのゴルトベルク変奏曲(Deutsche Grammophon/477 6378)。聴き慣れた鍵盤楽器から、3人の弦楽器奏者によって紡がれる名曲の豊かな表情に息を呑み... 3人という極めてコンパクトな編成から、バッハの宇宙が奏でられてしまうスケール感に驚き... 改めて聴いてみると、名曲のやさしさ、深さに聴き入りつつ、ただならず圧倒されてしまった。

最後は、ちょっと異質な1枚... リュートの名手、リスレヴァンによる"Nuove musiche"(ECM NEW SERIES/476 3049)。古楽を素材に、ニューエイジな感覚で新たな音楽を生み出したそのセンス!濃厚にクラシックを聴いていると、こういうサウンドがすーっと心に入ってきて、多少、凝り気味の耳をリセットしてくれるのか。こういうアルバムって、必要だよなぁ。



参考資料。




タグ:小澤征爾
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