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バロックでも、オペラでもないイタリア、カゼッラ! [2012]

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「近代音楽」というと、ロシア・アヴァンギャルドとか、新ウィーン楽派とか、フランスの印象主義とか、フランス6人組とか、それまでのドイツ―オーストリアを主軸としたロマン主義の時代からは一転、様々な国々からのムーヴメントが席巻し、その多様さが刺激的だったりする。が、イタリアの近代音楽はどうだろう?レスピーギという大看板はあるものの、他はなかなか... というのが現状かもしれない。それでも、時折、耳にする、レスピーギばかりでないイタリアの近代音楽は、意外とおもしろい。で、そんなレアな体験をもたらしてくれるのが、イタリア出身のマエストロ、ノセダが取り組む"MUSICA ITALIANA"のシリーズ。これまで、ヴォルフ・フェラーリ(CHANDOS/CHAN 10511)、ダッラピッコラ(CHANDOS/CHAN 10561)、カゼッラ(CHANDOS/CHAN 10605)など、興味深いイタリアの20世紀を紹介してくれたのだが。その最新盤は、再びのカゼッラ!
ジャナンドレア・ノセダと、彼が率いたBBCフィルハーモニックによる、カゼッラのオーケストラ作品集、vol.2(CHANDOS/CHAN 10712)を聴く。

とにかく、vol.1は驚かされた... カゼッラの2番の交響曲(マーラーが「大地の歌」、9番の交響曲に取り組んでいた頃、1908-10年の作曲... )の巨大さ!ロマン派が大成させた「交響曲」を、近代という時代を迎えつつある中、さらに発酵させて、大きく膨らませて、圧倒してくるようなサウンド... マーラーの時代、マーラーの影響を受け、マーラーに負けないスケール感に、目を見張る。いや、カゼッラはおもしろい!もっと聴いてみたい!と思い始めて2年、待望のvol.2は... 世界初録音という管弦楽のための協奏曲(track.1-3)、ピアノとオーケストラのための音楽詩「深夜にて」(track.4-8)、オペラ『蛇女』からの交響的断章、第1集(track.9-11)、第2集(track.12-14)と、初めて聴く作品ばかり。だからこその発見がまた鮮烈で...
1曲目、管弦楽のための協奏曲は、近代音楽の様々な形が出揃った頃、1937年の作品。ということで、マーラー(1860-1911)の直接的な影響を脱したその音楽は、ルーセル(1869-1937)を思わせるようなモダニスティックなサウンドで、パワフルにリズムを刻む。それは、擬古典主義的な快活さを見せつつも、一音一音にずっしりとくるものがあって、この聴き応え感がカゼッラの音楽の特徴だろうか。2楽章(track.2)の沈鬱な始まりは、ショスタコーヴィチ(1906-75)を思わせ、終楽章(track.3)ではマーラーの交響曲のどこかで流れていたマーチが聴こえてくる?このデジャヴュ感がおもしろい。そんなマーチ調の音楽は、パワフルに盛り上がり、その豪胆さに魅了されてしまう。が、続くピアノとオーケストラのための音楽詩「深夜にて」(track.4-8)は、ただならずしっとりとミステリアス... ちょっとベルク(1885-1935)を思わせるようなロマンティックなトーンで、曖昧模糊とした音楽が、ピアノの静かなタッチに彩られ、時にジャジーのような、エキゾティックなような、何とも言えない魅惑的な"夜"を描き出す。で、その"夜"なのだが、どうやら、カゼッラと、彼の教え子(後のカゼッラ夫人... )との「深夜にて」らしく、この作品に漂う気だるい気分のリアルさは、近代を越えて、現代的なのかも。さて、最後は、オペラ『蛇女』からの交響的断章(track.9-14)、"夜"の睦言からは一転、カルロ・ゴッツィの原作による寓話劇... 絵本的なメルヘンと、程好い毒づき感が、やはりゴッツィの原作でオペラを書いているブゾーニ(1866-1924)を思わせて、キャッチーでカラフルな音楽を展開。これを予告編として聴くならば、オペラ本編も聴きたくなってしまう。
しかし、盛りだくさんのvol.2... 様々なスタイルに対応するカゼッラの器用さ。時代の空気感、様々なモードに敏感に反応して、鮮やかにオーケストラを鳴らしてゆくカゼッラの確かな技量。そこから聴こえてくる、新旧入り乱れ、活発に細胞分裂を繰り返していた20世紀前半の音楽シーン。カゼッラは、パリのコンセルヴァトワールで学び、近代音楽の黎明期、最も刺激的であったパリで過ごしたとのことだが、そうした経験が生み出したのであろう3作品。それは、近代音楽の鳥瞰図のようであり、スクールに縛られず自由に羽ばたいていたカゼッラならではの魅力を楽しませてくれる。そして、特筆すべきは、「折衷」ともされかねないあたりを、見事なオーケストレーションで独自のカラーにまとめ上げてしまう力技。やっぱり、カゼッラはおもしろい!もっと聴いてみたい!
と、思わせた、ノセダの指揮、BBCフィルの見事な演奏... ここ数シーズン掛けて培ってきた彼らならではの洗練されたサウンドには、また独特のものがあって... ノセダの精緻さと、音符のひとつひとつを丁寧に鳴らすBBCフィルとのコラヴォレーションは、近代音楽のゴツゴツした感触を、繊細なものに変化させ、その繊細さを積み上げて、よりダイナミックな音楽をも生み出してしまう。そうしてより魅力的な姿を見せるカゼッラ... バロックでも、オペラでもないイタリアの知られざる音楽は、もっと注目されてしかるべきもの...

CASELLA: ORCHESTRA WORKS VOL. 2 - Roscoe/BBC Phil./Noseda

カゼッラ : 管弦楽のための協奏曲 Op.61
カゼッラ : ピアノとオーケストラのための音楽詩 「深夜にて」 Op.30 *
カゼッラ : 『蛇女』 からの 交響的断章 第1集
カゼッラ : 『蛇女』 からの 交響的断章 第2集

マーティン・ロスコー(ピアノ) *
ジャナンドレア・ノセダ/BBCフィルハーモニック

CHANDOS/CHAN 10712




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