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管弦楽のための協奏曲。 [2006]

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ジャケ買い... ではなかったのだけれど、かなり惹かれてしまったそのデザイン...
モホリ・ナジ風の大胆なデザインを巧みに取り入れつつ、何ともノスタルジックな風合で見せる、バルトークとルトスワフスキによる管弦楽のための協奏曲を収録した1枚。真新しかった「近代」も、今となっては懐かしきもの... 近代音楽と向き合う感覚は、以前ほど生々しいものではない。が、かえって、時を経たからこそ、いい風合いも出て来る?そんな、近代懐古を絶妙に表現するデザインに、ちょっと膝を打つような思いに(何気に、ハンガリー出身で、ナチスを避け、アメリカへ渡る... というあたり、モホリ・ナジとバルトーク、共通するところも... )。
という、2006年にリリースされた、パーヴォ・ヤルヴィと、彼が率いたシンシナティ交響楽団による、バルトークとルトスワフスキの管弦楽のための協奏曲(TELARC/CD-80618)。もちろん、ジャケットばかりでなく、その演奏も見事なもので、目が覚める思い!

バルトークの代表作、管弦楽のための協奏曲(1944)。この作品にインスパイアされて生まれたルトスワフスキの管弦楽のための協奏曲(1954)。ということは知られているし、そういうカップリングのアルバムもなくはなかった。けれど、そういう括りで聴いたのはこのアルバムが初めてで、新鮮な印象を受けたことを覚えている。何より、パーヴォ+シンシナティ響のクリアなサウンドが捉える近代音楽の瑞々しさに圧倒された。ジャケットのノスタルジックさとは打って変わって、古臭さを感じさせないそのサウンドに、ただならず魅了されて... そして、今、改めて聴き直すのだけれど、また一味違う感覚を見出すのか...
まず、おもしろいのが、曲順。年代順に追うのではなく、ルトスワフスキから遡って、ルトスワフスキのルイヴィルのためのファンファーレ(track.4)を挿んでから、バルトークへ。するといい具合に音楽が深まって、聴き馴染んだバルトークの代表作が、より懐の大きな、独特の世界観を見せるようで、これまでになく興味深く感じてしまう。だからといって、ルトスワフスキが付け合わせの前菜のように響くわけではない。それどころか、のっけからカッコいい!その1楽章、イントラーダの、近代なればこその重厚感と、機械が動き出すようなリズミカルさが、まさに20世紀的で、インダストリアル!仄暗くも独特の快活さが、大きな工場に迷い込んでしまったような、そんな気分に... で、「工場萌え」的魅力を見出してしまう?そこから、ルイヴィルのためのファンファーレ(track.4)の、降り注ぐサイレンのような、エキセントリックでヴィヴィットなサウンドが圧巻で、短いながらも大きなインパクトをもたらす。そうして始まるバルトークの管弦楽ための協奏曲(track.5-9)。ルトスワフスキのヴィヴィットさがあってこそ、バルトークの渋さ、深みが際立ってしまう魔法!パーヴォに鮮やかに導かれて聴くバルトークが、凄い。
まず、1楽章(track.5)、冒頭の、霧の中から音楽が静かに形を現すような始まりが、たまらない。それは「近代」というより、何か映画でも始まるような、ただならずヴィヴィットな印象を与えるもので、ショスタコーヴィチを思わせて... 4楽章(track.8)にショスタコーヴィチが引用されているわけだけれど、そうした具体的な点ばかりでなく、同時代の作曲家として、第2次世界大戦というヨーロッパの危機を目の前にして生まれる感覚だろうか、両者の近似性のようなものをこれまでになく嗅ぎ取る。そして、これが"時代"のサウンドなのかと、改めて興味深く聴くことに。しかし、一筋縄ではいかない音楽が本当におもしろい。「近代」と、それに相反するフォークロワとで、バルトークならではの独特のハイブリット感を響かせつつ、どこかシニカルでもあり... パーヴォならではの明晰さが、この作品を構成する様々な要素、パーツ、気分までをも丁寧に捉えて、より多彩な音楽を繰り広げる。その多層的な姿は、マーラーの交響曲のような感覚すら感じ、思い掛けなく深く、聴き入ってしまう... というより、これほどにもおもしろかった?!と、今さらながら驚いてしまう(いや、これまでもおもしろかったのだけれど... )。
パーヴォのアプローチは、とにかく徹底して作品を整理し尽くす。それはまるで、過去の名作を武装解除して、無防備な状態にしてしまうような行為... なのだけれど、そうして現れた作品の素の姿から、真の強みを浮かび上がらせ、活き活きとした生命力を吹き込むのがパーヴォの凄いところ。ルトスワフスキもそうだけれど、バルトークでは、素に戻ることで、より自由闊達にイマジネーションは膨らみ、それをコントロールしようとせず、あらゆる方向へとぴょんぴょんと跳ねて回るかのよう。そこにはシンシナティ響のすばらしいパフォーマンスがあって、彼らの率直さが、バルトークの素の音楽に見事に呼応して、ますます多彩に響くバルトーク。そこには、作曲家の最晩年(アメリカに渡り、経済的に困窮する中、やがて白血病に苦しめられ... )の、才気漲るパワフルさ、管弦楽のための協奏曲に掛けていた意気込みが炸裂するかのよう。

BARTÓK / LUTOSŁAWSKI: CONCERTOS FOR ORCHESTRA
JÄRVI/CINCINNATI SYMPHONY ORCHESTRA


ルトスワフスキ : 管弦楽のための協奏曲
ルトスワフスキ : ルイヴィルのためのファンファーレ
バルトーク : 管弦楽のための協奏曲 Sz.116

パーヴォ・ヤルヴィ/シンシナティ交響楽団

TELARC/CD-80618




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