SSブログ

こどもの頃、好きだった... リムスキー・コルサコフ... [2012]

8572787.jpg
こどもの頃、好きだった曲がある。リムスキー・コルサコフの『ムラダ』の貴族たちの行進。
エリック・カンゼルが指揮する、シンシナティ・ポップスのCDに入っていて... ポップス・オーケストラならではのライトなサウンドによる、勇壮で、華やかな音楽は、こども心をくすぐるワクワクするものだった。けれど、大人になって、『ムラダ』の貴族たちの行進に出会う機会はなかなか無い。そもそも、リムスキー・コルサコフ自体をあまり聴いていないのかもしれない。オーケストレーションの大家として、音楽史にその名を燦然と輝かせながらも、リムスキー・コルサコフの作品を聴く機会は、意外と少ないように感じる。その代表作、「シェエラザード」に関しては、聴かない方が少ないくらいだけれど、その他については、どうだろう?実は、あまりよく知らなかったりする。
そうしたところに、『ムラダ』を発見!貴族たちの行進を聴ける!と手に取った、ジェラード・シュウォーツと、彼が率いるシアトル交響楽団による、リムスキー・コルサコフのシリーズ、第3弾、『金鶏』といったオペラからの組曲集(NAXOS/8.572787)を聴く。

ロシア5人組というと、漠然とプリミティヴなイメージがある。ロシアのフォークロワに根差したサウンドの、西欧の洗練されたサウンドにはない魅力... ヨーロッパにしてヨーロッパから外れる、ロシアの美的センスのエキゾティックさは、広大なクラシックというジャンルにあって、独特のポジションを築いている。が、そのひとり、リムスキー・コルサコフの音楽をつぶさに見つめると、またちょっと違ったサウンドが広がり、ロシアのステレオ・タイプからは、外れるようでもあり... もちろん、ふんだんにロシアの素材が用いられ、その民俗調なあたりが、とてもキャッチーで魅力的なのは間違いないのだけれど、響いてくるサウンドそのものは、実に洗練されたもので、ロシアというイメージでは捉え難いのかも... で、まさにオーケストレーションの大家。ラヴェルらがリスペクトするのがよくわかる。そして、シュウォーツ+シアトル響による組曲集を聴くと、改めてそのことを思い知らされるような気がする。
『雪娘』、『サトコ』、『ムラダ』、『金鶏』、ロシアの民話を題材とした、リムスキー・コルサコフならではのオペラの数々。そのエッセンスを巧みに抽出して、オーケストラで鮮やかに綴る組曲。まったく、美しい絵本をめくってゆくような、そんな感覚にさせられる。ひとつひとつの場面が色彩豊かで、オーケストラというパレットを最大限に使って描き上げられて。2曲目の『サトコ』(track.5)などは、"音楽的絵画"とされているだけに、まさに... である。そして、リムスキー・コルサコフによるひと筆ひと筆の、繊細さと洗練に、魅了されずにいられない。そこには、良くも悪くもあるロシアの大胆さというか、強引さのようなものは一切無く、ロシアの素材を使いながらも、西欧の音楽が積み上げてきた緻密さがあり。場合によっては、西欧の音楽すら越えていて、ラヴェルら、フランスの作曲家たちへの影響を改めて認識させられる。そして、漠然とあったリムスキー・コルサコフ像を、今、改めて、瑞々しく見出すかのよう。まったく、今さらの話しにはなるのだけれど、リムスキー・コルサコフは凄い!で、その徹底して美しいサウンドが、活き活きとロシアの民話を捉えれば、それはもう得も言えぬファンタジー!どこか、ディズニーの映画でも見ているような気分に。ロシアでありながら、フランス印象主義へとつながる色彩感と、ディズニーの世界のようなライトさ... いい具合に何者でもない、リムスキー・コルサコフの希有な存在感が、実に興味深く、新鮮で、驚かされる。
そんな、リムスキー・コルサコフの音楽世界を、シリーズとして展開するシュウォーツ+シアトル響... アメリカの東海岸の名門オーケストラのような派手さはないけれど、アメリカの西海岸の北から、さり気なくクウォリティの高い演奏を展開するあたりが、好印象な彼ら... リムスキー・コルサコフの組曲集では、アメリカのオーケストラならではのクリアさが、オーケストレーションの大家ならではのサウンドにぴたりとはまり、ニュートラルなリムスキー・コルサコフの姿を綺麗に浮かび上がらせ印象的。そして、『ムラダ』の貴族たちの行進(track.10)なのだけれど... そうそう、これこれこれ!と、懐かしく... シュウォーツ+シアトル響の演奏は、遠い記憶を鮮やかに蘇らせてくれて、廷臣たちの恭しさと宮廷の煌びやかさをたっぷり堪能させてくれる。それから、『雪娘』の道化師の踊り(track.4)、この曲も好きだった!なんて、さらなる発見もあったりで(何で聴いていたのかは思い出せないのだけれど... )。そんな、懐かしいメロディ、リズムを、遠くなった記憶以上に、瑞々しく、活き活きと聴かせてくれるシュウォーツ+シアトル響の演奏に、ただただワクワクしてしまう。

RIMSKY-KORSAKOV: Orchestral Suites

リムスキー・コルサコフ : 組曲 『雪娘』
リムスキー・コルサコフ : 音楽的絵画 『サトコ』 Op.5
リムスキー・コルサコフ : 組曲 『ムラダ』
リムスキー・コルサコフ : 組曲 『金鶏』

ジェラード・シュウォーツ/シアトル交響楽団

NAXOS/8.572787




nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。