SSブログ

シリーズ、第1弾... [2006]

このblogを始めた6年前は、どうだったろう?と、振り返ってみた前回... で、気が付いたのが、気になるシリーズのスタートがいろいろあったこと。その前回も取り上げた、Virgin CLASSICSからのジャンスが歌うアリア集、"TRAGEDIENNES"のシリーズ。ナンカロウばかりかいろいろな方向へと広がりを見せたMDGによるプレイヤー・ピアノのシリーズなどは、興味深い作品を掘り起こして、まったく個性的なシリーズとして楽しませてくれた。それから、コセンコのフラウト・トラヴェルソが火を吹く、AlphaでのC.P.E.バッハのフルート協奏曲のシリーズは、エキサイティング!一方で、ただならず充実感を味あわせてくれたのは、やはりAlpha、ル・サージュによるシューマンのピアノ作品と、ピアノが含まれる室内楽作品の全てを網羅したシリーズで... こうして見てみると、クラシックの先行きはまだまだ明るさがあったのだなと、ちょっと感傷的になったりもする2006年。
そんな2006年にスタートを切ったシリーズ、特に印象に残る2つのシリーズから... パーヴォ・ヤルヴィと、彼が率いるドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメンによるベートーヴェンの交響曲のシリーズ、第1弾、3番、「英雄」と、8番の交響曲(RCA RED SEAL/88697 00655 2)。トーマス・ファイと、彼が率いるハイデルベルク交響楽団によるメンデルスゾーンの交響曲のシリーズから、第1弾、1番の交響曲と、弦楽のための交響曲、8番と13番(hänssler/98.275)を聴き直す。


始まりは、未来型... パーヴォ+ドイツ・カンマーフィルによるベートーヴェン、第1弾。

88697006552.jpg2006best.gif
パーヴォ・ヤルヴィがドイツ・カンマーフィルの芸術監督に就任(2004)したと聞いた時は、ちょっと掴みどころが無いような組合せに思えた。そして、彼らの初来日(2006)が、横浜みなとみらいホールでのベートーヴェンの交響曲のツィクルスだとチラシで見た時、ちょっと唐突に思えた。が、2006年から2009年に掛けて録音された彼らのベートーヴェンの交響曲の全てを聴き終えた今、パーヴォがすっかり先を見据えていたことを思い知らされる。それは、2006年当時では、あまりに未来型のベートーヴェンだったのか、初めて聴いた時というのは、何だかもの凄く調子を狂わされたような感覚になった。
パーヴォならではの明晰さで、綺麗にベートーヴェンのスコアを読み切り、そこから一音一音を繊細に紡ぎ出す... ヘンゲルブロック、ハーディングという2人の鬼才が鍛えた、ピリオドの作法にも対応できるハイテク室内オーケストラを駆使し、ベートーヴェンに反重力装置を搭載してしまう?良くも悪くも徹底的にベートーヴェンなはずの「英雄」(track.1-4)が、軽やかに、しなやかに、聴き手の期待や思惑を、するり、ひらりとあっけなくかわし、まったく異なる触感をもたらすパーヴォ。クラシックのアイコンたるベートーヴェンの交響曲、そのピリオドによる演奏が出揃った観があった2006年、20世紀の巨匠たちによる古いスコアでの演奏は完全に過去となったところで、あらゆるベートーヴェン像から解き放たれた未来型のベートーヴェンを繰り広げたパーヴォ+ドイツ・カンマーフィルのベートーヴェンには、とにかく驚かされた。まだまだ知らないベートーヴェンはあるのだと。そして、今、改めて聴いても、やっぱり未来型だ。一方で、8番(track.5-8)は... ベートーヴェンの9つの交響曲の内、最も優雅で、軽やかなこの8番を、逆にアグレッシヴに、ダンサブルに仕上げて、「英雄」に劣らない聴き応えを持たせてしまう。そうしたあたりに、パーヴォの、2006年当時の、モードやシーンに対して、少し斜に構え、さり気なく天の邪鬼な姿が浮かび上がるのか、パーヴォの魔法の種を見つけたようで、おもしろい。
しかし、見事にパーヴォである。これほど鮮やかに、パーヴォであることを印象付ける演奏も無いように思う。そして、パーヴォ+ドイツ・カンマーフィルによるこのシリーズ、最初の1枚にして、最もインパクトのあるベートーヴェンを聴かせてくれていることは間違いない。

The Deutsche Kammerphilharmonie Bremen paavo järvi beethoven 3&8

ベートーヴェン : 交響曲 第3番 変ホ長調 Op.55 「英雄」
ベートーヴェン : 交響曲 第8番 ヘ長調 Op.93

パーヴォ・ヤルヴィ/ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメン

RCA RED SEAL/88697 00655 2

88697006552.jpg88697129332.jpg88697338352.jpg88697542542.jpg88697576062.jpg




始まりは、もう、思春期... ファイ+ハイデルベルク響によるメンデルスゾーン、第1弾。

98275
メンデルスゾーンの5つの交響曲はもちろん、習作にして「習作」とは言い切れない充実ぶりを聴かせる13の弦楽のための交響曲を網羅したファイ+ハイデルベルク響。2009年のメンデルスゾーンの生誕200年のメモリアルに向けてスタートしたシリーズ... その第1弾は、1番の交響曲と、弦楽のための交響曲、8番と13番を取り上げる。で、のっけからテンションが高い!これから始まるシリーズへの意気込みの表れ?いや、ピリオドとモダンのハイブリットによる、最も攻撃的なファイ+ハイデルベルク響なればこそのスタイルなわけだけれど、そんなテンションにちょっと中てられるようなところも... とはいえ、こういうヤリ過ぎ感は嫌いじゃない... が、今、改めて聴いてみると、またちょっと違って聴こえてくるのか?
そもそも、メンデルスゾーン自体が、テンションが高い。始まりの1番の交響曲(track.1-4)は、驚くべきことに15歳の作品(メンデルスゾーンもまた神童!)。で、作曲したくてたまらない、ほとばしるパワーがもう、思春期... 1楽章から、まるで終楽章のような勢いで突っ走る。また、こうした向こう見ずさが、ロマン主義の感性にぴたりとはまり、活きのいい交響曲として見事に展開される。とかくお坊ちゃまなイメージが強いメンデルスゾーンだけれど、改めてその作曲年齢を見つめ、作品そのものが持つテンションの高さに触れると、元気いっぱいの少年らしさを見つけ、ほっとさせられる。とはいえ、その音楽はとても少年のものとは思えない、充実ぶり... というより極めて魅力的なもの。1番の交響曲のみならず、弦楽のための交響曲、8番(track.5-8)、13番(track.9)も、なかなか骨のある音楽を聴かせてくれる。そして、習作にあたる弦楽のための... は、当然、1番よりも以前に作曲されているわけで。8番は13歳、13番は14歳というから、また驚かされる。
そして、このアルバムのおもしろい点が、ロマン派の交響曲としてヴィヴィットに煌めく1番の後で、弦楽のための... 8番、13番と、音楽スタイルで時代を遡ってみせるあたり。フル・オーケストラ版で取り上げられる8番は、実に立派な古典派の交響曲。その1楽章(track.5)では、『魔笛』の序曲のフレーズが紛れ込んで、モーツァルトの時代を垣間見せる。単一楽章の13番(track.9)は、序奏の後で、仰々しいフーガがとぐろを巻き、見事、壮麗にバッハを蘇らせる。ファイによりメンデルスゾーン少年の音楽の中に、音楽史のホログラムが立ち上がり、1枚のアルバムとして、センスが光る。

Felix Mendelssohn Bartholdy Sinfonie 1, Streichersinfonien 8, 13

メンデルスゾーン : 交響曲 第1番 ハ短調 Op.11
メンデルスゾーン : 弦楽のための交響曲 第8番 ニ長調 〔フル・オーケストラ版〕
メンデルスゾーン : 弦楽のための交響曲 第13番 ハ短調

トーマス・ファイ/ハイデルベルク交響楽団

hänssler/98.275

98275.jpg98281.jpg98536.jpg98547.jpg98552.jpg98577.jpg




nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。