SSブログ

印象、シャブリエ... [2006]

CDA67515.jpg
何となく雨が続く連休であります。
特に家から出る予定無し... とはいえ、せっかくの5月、雨が続くと残念な気分に。そうした中、何かと家の雑事に追われ、あたふたする。そんな雑事を一挙に引き受ける事態となりまして。なかなかゆったりとは過ごせないのだけれど、雑事をこなしながら、部屋には音楽。で、何かをしながらの音楽って、またいいなと、ふと思ったり。何気に耳を捉えるフレーズとか、リズムとか、意識的に聴くのとは違う、音楽のきらめきに出会う瞬間がある。果たしてそれが本当にきらめきかどうかはわからないけれど、ひょいっと耳に入ってくるフレーズや、リズムは、思い掛けなく印象的に、味わいのようなものを残してくれるようで。こういうのもまた、音楽の力だよなぁ...
そんな音楽のひとつ、2006年にリリースされた、アンジェラ・ヒューイットの弾くシャブリエのピアノ作品集(hyperion/CDA 67515)。それは、改めてシャブリエという存在を見つめ直すのか... 何気なく聴いてこそ、シャブリエの音楽の持つ不思議な密度に触れることができたような気がした。

エマニュエル・シャブリエ(1841-94)... 19世紀後半、ドイツに押されっぱなしだったフランスの音楽が再び息衝き始めた頃、音楽ではなく法律を学び、内務省の役人をしながら作曲をしたというおもしろい人物。何より、スペイン狂詩曲で有名なわけだが、サン・サーンス(1835-1921)や、ビゼー(1838-75)、フォーレ(1845-1924)といった同世代のフランスの作曲家に比べると存在感はやや薄い。のかも。やっぱり、アマチュア作曲家という弱さだろうか?しかし、スペイン狂詩曲のあの湧き立つようなリズムと色彩感に、見事にオペラまで作曲したことを考えれば、音楽が本業ではなかったとしても、間違いなくすばらしい作曲家だ。そして、サン・サーンスやビゼー、フォーレにはないすばらしさがある。それは、音楽が本業ではなかったからこその密度?というのか... ヒューイットによるピアノ作品集を改めて聴いて、そんなことを感じてしまった。
それは、アカデミックな音楽教育が育んだのとは違う、いい意味で隙のある音楽?ロマン派全盛の時代、ドイツのピアノ作品ならば、こうはいかないだろう... という、気安さがあって、アカデミズムが管を巻かないからこその、得も言えぬ瑞々しさがある。例えば、このアルバムの核となる『10の絵画風小品』(track.3-12)。小品、ひとつひとつのシンプルな響きは、やがてサティ(1866-1925)が出現することを遠くに感じさせて... また、それぞれに表情に富む10の小品は、戸外にキャンパスを持ち出した印象派の画家たちの絵画を思い起こさせるようであり。アトリエに引き籠り、ひと筆ひと筆に神経を尖らせるのではない、自由な筆致で直に光を捉えていったモネ(1840-1926)らの軽やかな絵画と共通する感覚を見出し。何より開放的。で、とにかく心地いい!音楽で印象主義というと、ドビュッシー(1862-1918)らの名前が挙げられるわけだけれど、印象派の絵画に通じる... あるいは、「印象派」という芸術史における大きなムーヴメントを生み出した時代の空気感をヴィヴィットに捉えているのは、シャブリエの音楽なのかもしれない。音楽における印象主義とは違う、印象派との同時代性を見出し、興味深く感じるシャブリエの音楽。何気なく聴いて、かえっていろいろなことに思いを巡らせることに...
そんなシャブリエを聴かせてくれたヒューイット。シャブリエという存在を素直に響かせて、その瑞々しさを最大限に引き出す彼女のタッチに、改めて魅了される。限りなくナチュラルで、その先に、この人でなくては生み出し得ない、ふんわりとした優しい匂いを漂わせて、知らず知らずの内に、心地よくしてくれる。それでいて、フランスならではのエスプリを、端々に感じさせもして。洒脱なあたりをこれ見よがしに繰り出すのではない、あくまでナチュラル... の枠の内で、さり気なく描き込む絶妙なタッチから紡ぎ出される音楽は、とにかく魅惑的。例えば、ハバネラ(track.17)の気だるさなんて、鮮やかに決まって、薫るよう。
肩の力が抜けたシャブリエの作品の数々に、ナチュラルでエスプリも纏わせて素敵なヒューイットのピアノ... いい具合に両者の感性が響き合い、キラキラと美しく輝く音楽を、気負うことなくさらりと綴る。久々に聴いたけれど、何だか心を軽くしてくれる1枚。

CHABRIER DIX PIÈCES PITTORESQUES and other piano music ANGELA HEWITT piano

シャブリエ : 即興曲
シャブリエ : 田園風のロンド
シャブリエ : 絵画的な10の小品
シャブリエ : 朝の歌
シャブリエ : 踊るように
シャブリエ : 奇想曲
シャブリエ : アルバムの綴り
シャブリエ : ハバネラ
シャブリエ : 気まぐれなブーレ

アンジェラ・ヒューイット(ピアノ)

hyperion/CDA 67515




nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

ワルツを踊れ!ペルシア、幻想... ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。