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二〇一一、交響曲から... [overview]

桜がやっと満開に!まさに春!だけれど、今年の春は少しズレ込みまして...
おかげで、桜に限らず、いろいろな花が一斉に咲き出したような... 北海道の春が、そういう春だと話しには聞くけれど、関東平野でも、にわかにそんな春を、今、迎えている。温暖化による気候変動が、暖かくなるばかりではない、思わぬ状況を生み出してのことだろうけれど、こういう春もいいのかも。ズレるのもまた良し。
ところで、気候変動とは関係なく、かなりズレ込んでしまったのだけれど、2011年にリリースされたアルバムをやっと振り返ることに... 2011年、いろいろあってのズレ込みなのだけれど、とりあえず、ここまで辿り着いたことに良しとしまして。さて、ウィーン・フィル、2011年のニューイヤー・コンサートに始まって、チェン・レイスが歌う、古典派の時代、ウィーンのオペラハウスを彩ったアリア集まで、70タイトルを聴いた2011年。ウィーンに始まって、ウィーンに終わる... なんて、考えてはいなかったけれど、ま、綺麗にまとまったことになるのか?そんな2011年、特に印象に残ったアルバムを、3回に渡って、振り返ってみる。
ということで、今回は、交響曲からピアノまで...
まず注目したいのが、モダンとピリオドを行き来する2人のマエストロ。モダンとピリオドのハイブリットで、独自の世界を切り拓いたパーヴォ・ヤルヴィと、ピリオドからモダンへと進出するトーマス・ヘンゲルブロック。今や、モダンとピリオドの垣根はかなり低くなり、ハイブリットどころか、レパートリーによっては楽器を持ち替えてしまうなど、大胆なことがやってのけられる時代に... そうした中で、モダンとピリオドのジョイント役を担ってきた2人のマエストロの新たな動きが、大いに気になった2011年。
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ということで、ベートーヴェンのツィクルスを経ての、パーヴォ+ドイツ・カンマーフィルによるシューマンの1番と3番の交響曲(RCA RED SEAL/88697 96431 2)。古典派からロマン派へ... カンマー=室内にして、よりスケール・アップしたサウンドが、個性を極めたベートーヴェンとはまた違う、堂々としたシューマンを展開して、思いの外、聴き応え十分。シューマンのツィクルスも、また期待せずにはいられなくなる。
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ドイツ・ピリオド界を代表するマエストロのひとり、ドイツ・カンマーフィルの初代音楽監督でもあったヘンゲルブロックが、モダンの領域でビッグ・ポスト!NDR響の首席指揮者就任を祝う1枚、メンデルスゾーンの1番と、シューマンの4番の交響曲(SONY CLASSICAL/88697940022)。ピリオド出身のマエストロならではの爽快さと、ドイツのオーケストラの伝統のサウンドが相俟って... ヘンゲルブロック+NDR響のこれからが楽しみに!
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そして、2011年の交響曲、最も印象に残った1枚が、ヴァシリー・ペトレンコ+ロイヤル・リヴァプール・フィルによるショスタコーヴィチの10番の交響曲(NAXOS/8.572461)。高いクウォリティでもって、思い掛けなく新しいショスタコーヴィチ像を繰り出す彼らのシリーズだが、10番のできは出色!恐るべしヴァシリー!目が覚めるその演奏は、廉価レーベル、NAXOSからリリースするにはもったいないくらい。
なんて思っていたら、ラフマニノフの3番の交響曲(EMI/6790192)で、EMIからメジャー・デビューを果たしたヴァシリー+ロイヤル・リヴァプール・フィル。これからの活躍がとにかく楽しみに!で、ショスタコーヴィチのシリーズ、次のリリースは2番と15番で、これがまた楽しみ!
さて、他にもおもしろいものは、いろいろあって... ミンコフスキ+レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルと、タムスティのヴィオラによるベルリオーズの「イタリアのハロルド」(naïve/V 5266)は、ミンコフスキならではの水際立った音楽作りが、ベルリオーズ作品に孕む生々しくも禍々しい19世紀の空気感を炙り出して、圧巻!それから、エールハルト+ラルテ・デル・モンドによるシュターミッツの交響曲集(cpo/777 526-2)は、「交響曲」揺籃の地、マンハイム楽派の黄金期の充実ぶりを、きっちりと響かせつつ、威勢のいいエールハルトならではの仕上がりが、ガツンと決まり。すると、ウィーンとは一味違う、マンハイムの骨のある古典派サウンドがより魅力的なものに... 古典派も安易にひと括りにできないなと感じてみたり。
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管弦楽曲で印象に残るのは、バロック!まずは、サヴァール+ル・コンセール・ナシオンによるラモーのオペラからの組曲集(Alia Vox/AVSA 9882)。18世紀の音楽の都、パリの、ゴージャスなオーケストラ・サウンドを追体験させてくれるル・コンセール・ナシオンの豊潤な響きに、酔い痴れるばかり... いや、ピリオドのオーケストラでも、こういうジューシーさを味あわせてくれるのかと、改めてサヴァールに感服。そうして、ラモーの魅惑的なこと!
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それから、ドンブレヒト+イル・フォンダメントによるバッハの名作、管弦楽組曲(FUGA LIBERA/FUG 580)。名作過ぎて、今さら... なんて思いながらも、聴いてしまったのは「オリジナル再現版」の物珍しさから... だったが、タイトに絞られたオリジナル再現版に思い掛けなく魅了され、そこに揺るぎない説得力を持たせたイル・フォンダメントの演奏にノック・アウト!名作は、やっぱり名作であって... いや、それ以上の輝き放つ!
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さて、協奏曲も、まずはバロック... タローがピアノで弾く、バッハのチェンバロ協奏曲集(Virgin CLASSICS/070913 2)。モダンだからこそ、滴るようなバッハが響き出して、その濃厚さにまずヤラれてしまう。モダンにはモダンの流儀のバロックがある!が、そこにはタローならではのストイックさもあり、モダンという位置から徹底的にバッハを磨き上げ... それはハイパー・モダン?多重録音による4台のコンチェルトなどは、まさに!
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さて、時代を下って、バティアシヴィリのヴァイオリンによるショスタコーヴィチの1番のヴァイオリン協奏曲をメインとしたアルバム、"ECHOES OF TIME"(Deutsche Grammophon/477 9299)。難曲を前に、バティアシヴィリの超越した演奏は恐るべきもので。なおかつ、強いメッセージ性を放つ構成が見事!とはいえ、説教じみたものになるのではなく、まるでロード・ムービーでも見るかのよう... 何とも言えない余韻を残す...
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とにもかくにもフル・スロットルで楽しませてくれたのが、ハフが弾く、リストとグリーグのピアノ協奏曲(hyperion/CDA 67824)。このアルバムは、理屈抜き!19世紀の、クラシックが最もクラシックらしさを発揮した時代の、徹底して華麗なコンチェルトを、これでもかとエンターテイメントに仕上げてくるハフ!その妙技に舌を巻きつつ、ただひたすらにクラシックを楽しみ尽くす姿勢が、あっ晴れ!
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室内楽でまず印象に残るのは... ディオティマ四重奏団の活躍!近現代を中心に、3タイトルも聴いてしまった2011年だったのだけれど、そうした中でのベストが、アメリカの弦楽四重奏作品集(naïve/V 5272)。ライヒ、バーバー、クラムと、20世紀、アメリカ音楽の多様性を見事にまとめ切り、なおかつ、どの作品もこれまでにない充実感を以って奏でてしまう... 彼らの音楽性は尋常ではないなと...
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尋常でないのがもうひとり... ヴァイオリンを持ったシャーマン、庄司紗矢香によるバッハとレーガーによる無伴奏ヴァイオリン作品集(MIRARE/MIR 128)。ま、やるべくしてやった1枚ではあるのだけれど、やったらやっぱり凄かった!バッハとレーガーという組合せにおもしろさを感じるのだけれど、結局、庄司紗矢香という人を前にすれば、バッハもレーガーも無くなってしまう。ただひたすらに音楽がある。恐るべし...
ところで、2011年はレーガーを聴く機会が多かったのだけれど、にわかにレーガーが盛り上がり始めているのか?hyperionのロマンティック・シリーズからは、ピアノ協奏曲(hyperion/CDA 67635)と、ヴァイオリン協奏曲(hyperion/CDA 67892)がリリースされ、聴いてみれば、改めてレーガーの音楽を認識してみたり。2016年には没後100年のメモリアルを迎えるレーガー(1873-1916)だが、よりクローズアップされることを期待しているのだけれど... どうだろう?
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ピアノで印象に残るのは... というより、発見!だったのが、ゴットリーブが弾く、オブホフのピアノ作品集(SISYPHE/SISYPHE 010)。12音技法は、新ウィーン楽派ばかりでない、ということは、知識のどこかにおぼろげに持ってはいたが、ロシア出身のオブホフによる12音音楽の発見は、思い掛けなく、そして、何と魅力的な!スクリャービンと印象主義の先に、独自に紡ぎ出した12音技法は、ウィーンとは一味違う...
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もうひとつ驚きだったのが、ミュラロが弾く、リスト版の幻想交響曲(DECCA/4764176)。いや、知らなかった... ベートーヴェンの交響曲は有名だけれど、幻想交響曲もアレンジしていたとは... で、おもしろかった!ベルリオーズと対峙するリスト... リスト版と対峙するミュラロ... 時代を隔てた2人のヴィルトゥオーゾが、ベルリオーズをテーマに対決するようなスリリングさが、思いの外、刺激的!
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さて、2011年を振り返る前半の最後は、再びのタロー... タローの弾く、スカルラッティのソナタ集(Virgin CLASSICS/6420160)。コンチェルトのタローも、もちろんすばらしい、というより、もっと聴きたいくらいなのだけれど、何物からも自由になったソロのタローは、突き抜けた輝きを放つ。また、スカルラッティの音楽が、それを促しもし、タローの個性とスカルラッティの個性が作用し合って、新たな音楽が生み出されるかのよう。この真新しさが、心地よくも、刺激的で、魅了されてしまう。

さて、オペラ、ヴォーカル... と、後編に続く...

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