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春を見出す... [selection]

この冬は、いつもより厳しかったか。関東平野に在っても、何度か雪景色を楽しめた。ま、関東平野に雪が降ると、そりゃもう大騒ぎ(電車は動かなくなるし、靴はグチョグチョだし、翌朝、凍るし、滑るし... )になるわけだけれど、それでも、普段、見慣れた、殺伐とした都市の情景が、白に包まれると、どこか違うところにいるような、ちょっと心は浮き立つようでもある。が、雪国に住まわれている方々の苦労というのは、並みのものではない... ということも思い知らされる冬でもあって、連日の大雪のニュースに、関東平野の大騒ぎなど、まったく大したものではないなと。雪国に多少なりとも憧れてしまうけれど、そう安易なものではないのだなと。いや、だからこそ、雪景色は美しいのかも?自然のただならないパワーが生み出すからこその美しさか...
しかし、そうした冬も、緩みつつあって... 春めいたかな?と思うことが増えてきた。もちろん、また寒さが戻ってきて、調子を崩したりするのだけれど、やっぱり春は日に日に近付いている。ということで、春を迎えるために、春に聴きたい10タイトル。をセレクション。に続く、春は、ジャンルを越境するようなサウンドも含めて、ふんわりと、楽しげなものを選んでみる。

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「春」の音楽... 実は多い気がする。
ヴィヴァルディの『四季』の1曲目はもちろん「春」。それからベートーヴェンの5番のヴァイオリン・ソナタ、「春」に、シューマンの1番の交響曲、「春」。他にも、メンデルスゾーンの『無言歌集』から「春の歌」に、ヨハン・シュトラウス2世の「春の声」、ディーリアスの「春、初めてのカッコウを聞いて」、ブリテンの春の交響曲、コープランドの『アパラチアの春』などなど... それだけインスピレーションを与える季節なのだろう。雲がぽかりと浮かぶ穏やかな空、やわらかな日差しを感じ、様々な花が咲き出し、風がそうした花々の香りを運ぶ。何気ない瞬間でも、春を感じれば心浮き立たずにはいられない。そんな春の陽気に包まれれば、ついハナ歌も出てしまう?誰もが、音楽家になってしまう?春は音楽の季節でもあるのかもしれない。そんな春に聴きたい10タイトル。「春」という名前の曲ではなく、春を何気なく感じられるアルバムをセレクション。今から、春を楽しもうかと。

その、最初の1枚は、まさに春を運ぶそよ風のようなルネサンス期のフォーク・ソング、"frottole"。気取らないビーズリーの歌声と、アッコルドーネの軽やかなサウンドが、ポリフォニーとは違うシンプルなルネサンスを、やさしく、心地よく響かせて。聴いているだけで、春の穏やかな情景に包まれるかのような。風そのもののように感じるビーズリーのナチュラルなテノールは、まさに春の声... それから、ピアノによるミニマルなサウンドが、すーっと心に広がる、オッテの『響きの書』。まるで雪解け水を集める小川のような響き... まだ水は冷たいけれど、その透明な一音、一音に、春の陽が映り込み、キラキラと輝くかのよう。春の兆しを見つけるサウンドだろうか...
さて、2012年はドビュッシーのメモリアル。だから、というわけではないのだけれど、ドビュッシーの音楽にも春めいたものを感じる。交響組曲「春」も忘れるわけにはいかない... が、ここで取り上げるのは、ハープでドビュッシーを爪弾くメストレのアルバム。メストレのパリっとしたサウンドは、その一音、一音が、開花の瞬間のようにも聴こえ、萌えの季節の静かに力強い自然の目覚めを思わせて魅惑的。そんなドビュッシーを中心に、より魅惑的な世界を描き出す"UNE FLÛTE INVISIBLE... "。「ほら、目には見えないけれども、笛の音ひとすじ... 」というユゴーの詩に導かれて、夢現を彷徨うような、上質なフランスのサロン音楽を綴るのだけれど... その夢現を彷徨うような感覚は、春のまどろみに似て、心地よく、ちょっと抜け出せない... フランスの音楽というのは、ドイツの音楽に比べて、どこかユルい。もちろん、いい意味でユルんでいる。そのユルみ具合が、また春を思わせるのか?モネ劇場のユース・コーラス、ラ・コラリヌが歌う"Nymphes & Fleurs"は、そのユルさにこそ、イノセンスさを感じさせるのか。フランク、ドリーブ、フォーレ、ピエルネの作品を、少女たちの歌声は、春霞のようにふんわりと形にして、まだ何物にも染まっていない、生まれたばかりの春のピュアな色彩を見せるかのよう。まさに、春はここに...

大気が緩めば、冬のコートは脱いで... いや、春の野を裸足で駆け出したくなる。動物たちばかりでない、人間だって動き出したくなる。で、多少、羽目を外して?"BARBARIC BEAUTY"。オランダ・バロック協会が、テレマンを大胆にワールド・ミュージックから捉えるアルバム。重々しいバロックの鎧は脱ぎ棄てて、みんなで底抜けに楽しく、陽気に歌いながら踊る!これこそ、春の祭典?さて、春は野山ばかりにでなく、街にもやってくる。そんな都会の春を映すのは、サティか... タローが弾くサティ... 少し冷めた視線でサティの音楽を捉えて、ちょっぴり物憂げな春をシニカルに笑う。その後で、陽気なシャンソンで景気をつけて、街を闊歩してみる。そんな、小気味好さ!そして、より具体的に街へと繰り出す、ザビーネ・マイヤーのクラリネットが縦横無尽に歌う"PARIS MÉCANIQUE"。街の喧騒が、様々なテイストの音楽で綴られて... その楽しい音楽の数々に触れていると、つい外出したくなる。家に籠っている季節はさようなら、だ。

ここで、少し気分を変えて、春に酔う?ノセダ+BBCフィルによる、ヴォルフ・フェラーリの管弦楽作品集。クラシックの気難しいあたりからは、嫌煙されそうなライトなサウンドだけれど、ライトだからといってけして安っぽくはないヴォルフ・フェラーリ。その作品が放つブルーミンな感覚は、屈託無く春を思わせるのか... ファゴットと管弦楽のための協奏的組曲ののどやかさ、瑞々しさは、春の美しい情景を鮮やかに描き出すかのよう。
最後は、素朴な春... フロリレジウムによる"Bolivian Baroque vol.3"。ヨーロッパを離れたボリビアでのバロックは、フォークロワが滲み、角が取れ、その飾らないやわらかな在り様が美しく。かつて、生活と音楽が密接だったボリビアの伝道所の姿を今に蘇らせる素朴な響きは、ふんわりとしていて、まさに春の気分そのもの。そんな響きに触れていると、魑魅魍魎が跋扈する複雑怪奇な21世紀の現代を、一瞬でも忘れさせてくれるのか。日々の営みのすぐ傍にあった音楽は、音楽から距離ができてしまった現代人の耳を癒す。




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