SSブログ

2006年、ショスタコーヴィチ。 [2006]

さて、2007年に続いて、2006年を聴き直し始めているのだけれど...
それは6年前。そう遠い過去でもないように思うが、改めて振り返ってみると、今とは随分と違うように思えてくる。何なのだろう、この感覚?それだけ、我々を取り巻く環境、世界、社会が、大きく変貌を遂げようとしているのか?21世紀が、過渡期であることを改めて意識させられる。ということで、時間を6年前に戻して、2006年、輝かしきモーツァルト・イヤー!実は、密やかに、ショスタコーヴィチ・イヤー... ショスタコーヴィチの生誕100年のメモリアルでもあって、モーツァルトの影に隠れつつも、意外に盛り上がっていた?振り返ってみれば、興味深いリリースもあり。そんな、2006年、ショスタコーヴィチのメモリアルを巡る、まだまだ元気だったDGからの2タイトル。
ハーゲン四重奏団による、ショスタコーヴィチの3、7、8番の弦楽四重奏曲(Deutsche Grammophon/477 6146)と、火災でその大部分が失われてしまったという、ショスタコーヴィチによるアニメ映画のための音楽、『司祭とその下男バルダの物語』の復元版(Deutsche Grammophon/477 6112)、トーマス・ザンデルリンクの指揮、ロシア・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で、聴き直す。


ベテランの厚み、ハーゲン四重奏団のショスタコーヴィチ。

4776146.jpg
近頃、弦楽四重奏がとても刺激的に感じる。というのも、次から次へと若い世代のクァルテットが登場し。そうした新たな世代の活躍は、弦楽四重奏のどこか老成したようなイメージを書き換えてくれるようであり。ステレオタイプに囚われることのない、屈託の無い、彼らの演奏は、とにかく新鮮!弦楽四重奏のおもしろさを、今、改めて、引き出しさえしているように感じる。そうした若い世代への思いのある中、すでにベテランの域にあるハーゲン四重奏団のショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲を聴くわけだが... 今、改めて聴いてみると、ベテランだからこその確固たる音楽性、そこから紡ぎ出される揺るぎなさに、魅了されることに...
しかし、ハーゲン四重奏団も、フレッシュな演奏を聴かせてくれる若手であった。そんなイメージがどこかで未だにあるような気がする。が、彼らもすでに四半世紀も活躍しているわけで、間違いなく大ベテラン。堂々たるショスタコーヴィチの演奏は、そこいらの若手では醸し出し得ない、揺るぎなさに圧倒される。1曲目、3番の弦楽四重奏曲の1楽章の冒頭、すっとぼけた様なショスタコーヴィチならではのメロディを、余裕綽々といった風情で、何気なく響かせつつ、厚みがある。この厚みが、ベテランならではの培ってきたサウンドか。無理が無い。一筋縄ではいかないショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲、異様な熱狂が訪れれば、クラシックを一脱するような刺激性に充ちているわけだが、そうしたあたりも、大人の仕事ぶりで、見事に響かせてしまう。鋭さも、鋭利なだけではない、ドシリとした重みがあって、その重みから生み出される鮮烈さが印象的。で、何とも言えないギスギス感のあるショスタコーヴィチの音楽を、"艶"でコーティングしてしまうような、奇妙な絢爛さが感じられ、おもしろい。
こういうサウンドを繰り出してくるのが、歴史と伝統を誇る、クラシックの名手たるDeutsche Grammophonならではのセンスなのだな。と、噛み締める。最高級感を惜しげも無く振舞う、メジャー・レーベルの中のメジャー・レーベルの自信に、旧時代の輝かしきクラシックの姿を見た思いが... クウォリティに妥協の無いこだわりと、そこから生まれるクラリティの高いサウンド... そうだ、DGとはこうだった...

STAKOVICH: STRING QUARTETS NOS. 3, 7 & 8
HAGEN QUARTETT


ショスタコーヴィチ : 弦楽四重奏曲 第3番 ヘ長調 Op.73
ショスタコーヴィチ : 弦楽四重奏曲 第7番 嬰ヘ短調 Op.108
ショスタコーヴィチ : 弦楽四重奏曲 第8番 ハ短調 Op.110

ハーゲン四重奏団
ルーカス・ハーゲン(ヴァイオリン)
ライナー・シュミット(ヴァイオリン)
ヴェロニカ・ハーゲン(ヴィオラ)
クレメンス・ハーゲン(チェロ)

Deutsche Grammophon/477 6146




B級感に痺れて... 復元された幻の『司祭とその下男バルダの物語』。

4776112.jpg
(2006年7月31日にupしたものを改めてここに再upします。)
まったく以って、メモリアルならではのリリース。ショスタコーヴィチが手掛けた、幻のアニメ映画(監督はツェハノフスキー)の映画音楽だ。それも、当時のソヴィエト政府からケチ(検閲... )をつけられ、製作は遅れ、あげく火事でフィルムのほとんどが燃えてしまうという災難。ショスタコーヴィチによる音楽は、草稿が残っており、それをワディム・ビベルガン(ショスタコーヴィチの弟子とのこと... )が復元し、今回の録音となったとのこと。それにしても、幻となってしまったのが残念... ショスタコーヴィチの音楽は、何ともユーモラスで、すっとぼけたメロディがあちらこちらに散りばめられ、アニメーションの動きが目に浮かぶよう。となると、実際のアニメはどんなであったろうか?ショスタコーヴィチのアニメ映画だ。やっぱり、見たくなってしまう。
しかし、サントラだけでも十二分に楽しめてしまう。オペレッタとしても上演されたことがあるとのことだが、歌や合唱もふんだんに盛り込まれ... 何より、ショスタコーヴィチの真骨頂?いきなり、のっけからチープ・サウンドが炸裂!こういうキッチュな音楽が、とにかく大好きなものでして、こちらとしては、序曲からワクワクさせられるばかり。また、どこかで聴いたようなメロディも流れてきて、サックスの場末感(って、これ、こども向けアニメでしょ?)漂うサウンド(track.18)といい、そんなB級感に痺れてしまう。
で、『司祭とその下男バルダの物語』(track.1-29)の後で、オペラ『ムツェンスク郡のマクベス夫人』からの交響的組曲(track.30-32)が収録されている。けして長い組曲ではないのだけれど、これがまたいい味出している!かつて、西側が、社会主義リアリズムとはこういうものを言うのか、と考えていたこのオペラ(ソ連政府は、逆に社会主義リアリズムから逸脱しているとして、作曲家を糾弾... )、ソヴィエト版ヴェリズモとも言えるリアリズムに貫かれた、シリアスでヘヴィーなオペラ。のはずだが、ここで綴られる交響的組曲は、またまたキッチュ!そんなキッチュをシンフォニックにやられてしまうものだから、たまらない。トーマス・ザンデルリンクが指揮するロシア・フィルも、よく鳴らしてくれて、盛り上げてくれる。そんなアルバムも繰り出すDG... いや、DGも変わったな、と思わせる1枚で、強く印象に残った1枚...

STAKOVICH: BALDA ・ SUITE FROM "LADY MACBETH"
RUSSIAN PHILHARMONIC ORCHESTRA ・ THOMAS SANDERLING


ショスタコーヴィチ : 『司祭とその下男バルダの物語』 Op.36 〔ワディム・ビベルガンによる復元〕

バルダ : ドミトリー・ベロセルスキ(バス)
少年 : アンドレイ・スシュコフ(語り)
小鬼 : ヒョードル・バカノフ(ヴォーカル)
司祭 : ドミトリー・ステパノヴィチ(バス)
友人の司祭 : セルゲイ・バラショーフ(テノール)
司祭の娘 : エフゲニア・ソロキナ(ソプラノ)
司祭の妻 : ゲルマン・ユカフスキー(バス)
悪魔 : ドミトリー・ウリャーノフ(バス)
悪魔 : イリーナ・ナルスカヤ(メッゾ・ソプラノ)
モスクワ国立室内合唱団
トーマス・ザンデルリンク/ロシア・フィルハーモニー管弦楽団

ショスタコーヴィチ : オペラ 『ムツェンスク郡のマクベス夫人』 からの 交響的組曲 Op.29(a)

トーマス・ザンデルリンク/ロシア・フィルハーモニー管弦楽団

Deutsche Grammophon/477 6112




nice!(2)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。