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21世紀、ショスタコーヴィチ。 [2011]

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今、最も期待したい新たな世代の指揮者、ヴァシリー・ペトレンコ(b.1976)。
2011年の活躍と、次から次へとリリースされるアルバムへの高評価は、目を見張るものあり。そして、2012年、EMIからラフマニノフの3番の交響曲(EMI/6790192)をリリースしてメジャー・デビューを果たす。これで、どんとスターダムに乗れるか?いや、乗って欲しい!クラシックも21世紀に突入し、今こそ20世紀的な感性を脱したマエストロが求められているわけで、ヴァシリーのような、まさに21世紀的感性を持った若きマエストロにこそ、21世紀のクラシックを担ってもらいたいなと、切実に思う今日この頃... 困難の真っただ中にある今を乗り切り、次の時代を切り拓くのは、やっぱりこれまでとは違う、新しい感性であって。近頃、どうも古臭い価値観で現代を吠えたがる老人が目立つようでして、げんなりさせられること多々あり... まったく、21世紀ですよ!
さて、ヴァシリー。彼が率いるロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団と遂行中のショスタコーヴィチの交響曲のシリーズ、第6弾、6番と12番の交響曲(NAXOS/8.572658)を聴く。

第1弾、11番(NAXOS/8.572082)から、じっくり追って参りました。ヴァシリー+ロイヤル・リヴァプール・フィルのショスタコーヴィチの交響曲のシリーズ。最初は、期待しつつも、どんなものかと... 15番まであるショスタコーヴィチの交響曲だけに、途中で息切れしないか?なんて、心配もしたけれど、1枚、1枚、聴き進めるごとに、ヴァシリー+ロイヤル・リヴァプール・フィルのコンビが成長してゆくのを感じ... 第4弾、10番(NAXOS/8.572461)などは、成長というより、その充実ぶりに恐れ入った。となれば、もはや聴き進めば聴き進むほど、次が楽しみになる。いつのまにやら、今、最も楽しみにしているシリーズに。そして、第6弾、6番と12番... やっぱり、凄い... どうしようもなくイメージができあがっているショスタコーヴィチの交響曲のはずが、ヴァシリーの手に掛かると、あっさりとイメージが刷新されてしまうのだから。
まず、1曲目、6番(track.1-3)。沈鬱に始まる1楽章から、チープかつダイナミックに、ヤリ過ぎなくらいに楽しませてくれる終楽章(track.3)まで、このどうしようもないコントラストが素敵!なのだけれど、シンボリックな5番、戦争を描く7番に挟まれて、異質にも感じてきた6番。いや、必ずしもそうではない... と、改めて6番を丁寧に見つめ直すヴァシリーの視点が興味深い。狂騒的な後半を、安易に狂騒的であることだけでまとめず、細部まできちっと描き込み、作品の全体像を引き締め、6番を、5番と7番に挟まれての箸休め的な位置には置かない。そうして得られるインパクトは、これまで聴いた6番とは違い、驚かされる。何より、5番の終わりのあの熱狂、妙にとぼけた7番の1楽章の進軍の様子を思い返すと、ヴァシリーの6番は、5番と7番にきっちりとはまるようで。6番という交響曲に、やっと納得できたような、そんな手応えすらある。
そして、12番(track.4-7)。「1917年」という、ロシア革命の年を表題に、革命の成功を綴る、まさにショスタコーヴィチならではの交響曲なのだが... ヴァシリーは、プロパガンダの交響曲の、そのプロパガンダとしての性格を、素直に表現しているというか... 全体を明るく、色彩的に、朗らかに捉えて、今となっては歯の浮くような楽観主義を、屈託無くサウンドにしてしまう。すると、何だかポップ!ソヴィエトの政治スローガンを謳うポスターなどを思い返すと、グラフィカルで、ポップで、何気にカッコいいものが多かったりするわけだが、そんな気分を12番に込めるのか... 表情の緩んだショスタコーヴィチの音楽が、新鮮。シリーズも折り返して、ヴァシリー+ロイヤル・リヴァプール・フィルの余裕をそのあたりに見出し、彼らの成長を感慨深く思う。それにしても、ヴァシリーのショスタコーヴィチの斬り込み方は、いつもながら怜悧...
ショスタコーヴィチという存在は、ソヴィエトの検閲下、特殊な状況で創作活動を続けた、特殊な存在... 近代から現代へと移行する時期に、社会主義リアリズムに踏み止まった、孤立した存在... 20世紀の音楽史からすれば、ショスタコーヴィチという存在はメインストリームから見事に外れている。が、ショスタコーヴィチの音楽そのものが持つ個性というのは、最も20世紀的なのかもしれない... いや、それこそ「20世紀」を煮詰めたような音楽に思えてくる(20世紀の闘争をテーマにした作品が多ければ、当然そうなるのかもしれないが... )。ロマン主義の後に待っていた未来は、油に塗れたモダニズムのヘヴィーな世界で... そうした世界を具体的に交響曲に垂らし込めた作曲家は、ショスタコーヴィチの他になかなか探せない。そして、その強烈な20世紀性を、派手に撒き散らして、カタルシスを得るのが、ショスタコーヴィチの20世紀的解釈。が、そうしたショスタコーヴィチのステレオタイプを、あっさり捨て切ってしまうヴァシリー。その風貌こそ、何だか中学生みたいにあどけないのだけれど、棒を振らせたら、冷徹。まったく希有な存在というか、いや、これからがますますおもしろくなってきそうであり、次なるショスタコーヴィチを早く聴きたい!

SHOSTAKOVICH: Symphonies Nos. 6 and 12

ショスタコーヴィチ : 交響曲 第6番 ロ短調 Op.54
ショスタコーヴィチ : 交響曲 第12番 ニ短調 Op.112 「1917年」

ヴァシリー・ペトレンコ/ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団

NAXOS/8.572658




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