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"LANDSCAPES" [2011]

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忙しない年末が過ぎ、正月も終わり、さて、何を聴こうか?
というところで、細川俊夫はどうかなと... 独特の「和」なテイストが、場合によってはアンビエントにも感じられ... その音楽は間違いなく現代音楽だけれど、現代音楽にして、またちょっと違う位置にあるのか?改めてこの人の音楽と向き合うと、不思議な気がしてくる。不思議だけれど、この「和」なテイストが、どこか七草粥的に響き、正月が終わってしまった後の1月の虚脱感にスーっと広がり、頭の中をリセット。というアルバム... ECMからのリリースで... ECMから細川俊夫というのが、またちょっと新鮮で... そうか、細川作品というのは、ECM的範疇にあるのか... なんて、改めてそのアンビエントにも感じられるセンスについて考えたりもし、何気に興味深い1枚。
笙のマエストラ、宮田まゆみを迎えての、アレクサンダー・リープライヒ率いる、ミュンヒェン室内管弦楽団による細川俊夫作品集、"LANDSCAPES"(ECM NEW SERIES/476 3938)を聴く。

昨年の、ベルリン・フィルからの委嘱作品、ホルン協奏曲の初演、成功の話しは、極東の島国にも伝えられ... 何かと華やかな話題が尽きない細川俊夫(b.1955)。日本の現代音楽界で、最もインターナショナルに成功している作曲家... そんなイメージがある。一方で、まさしく"ゲンダイオンガク"なイメージ... かつての「前衛」の時代を受け継ぐ姿勢というか、サウンドというか、細川作品の現代音楽としての硬派なあたりが、以前は、ちょっと苦手だった。が、そんな見方を少し変えてくれたのが、"deep silence"(WERGO/WER 6801 2)。笙とアコーディオンで、雅楽と細川作品を演奏してしまう、チャレンジングなアルバム。チャレンジングだけれど、「和」のエンッセンスを巧みに抽出し、独特のアンビエントさを生み出していて、思わず魅了されてしまったのだけれど... それから、数年を経ての、ECMからのアルバム、"LANDSCAPES"...
細川俊夫は、山水画にインスパイアされた作品(「遠景」のシリーズ)を書いているのだが、"LANDSCAPES"で展開される世界もまた、山水の世界に彷徨い出すような、おもしろさがある。その始まりは、笙と弦楽四重奏のために作曲されたランドスケープ Vを、笙とオーケストラで演奏するもの... オーケストラそのものを笙のように鳴らし、その美しい音塊の中に、やがて笙が浮かび上がり... 墨が水で広がり、滲み、描かれる風景の、淡色だからこその幽玄さというのか、輪郭は淡く、薄くなり、霧の中に佇むような心地(弦楽四重奏とはまた違い、オーケストラだからこその効果が決まっている!)が独特で。そんなサウンドに包まれていると、時間の流れが重く、ゆっくりと感じられ、アンビエントにして不思議な感覚がある。
続く、セレモニアル・ダンス(track.2)は、ダンスなだけに、より動きがあるのだけれど。ダンスというよりは、風に草木が揺さぶられるような、ざわめきを思わせる。その後で響く、笙のソロによる「さくら」(track.3)のたおやかさは、春霞か。霞みの中に、「さくらさくら」のメロディが聴こえてきそうな気もして、そのおぼろげな様が歯痒くもあり。その霞みから、やがて「雲と光」(track.4)が見えてきて... "LANDSCAPES"に収められた作品は、連作ではないけれど、並べ方が巧く、連続性を感じ。それこそ、山水に描かれるような、自然のランドスケープの中をそぞろ歩くよう。歩いている内に、ビルに囲まれた日常を遠く離れ、日本人のDNAに織り込まれている"もののあはれ"を刺激されるようでもあり、何とも言えない心地にさせられる。
しかし、ECMというドイツのレーベルが、こういうアルバムを仕上げてくるとは?!日本人として、ちょっと衝撃的。また、リープライヒ+ミュンヒェン室内管の演奏が、丁寧に細川作品を捉えていて。イサン・ユンに並々ならぬ思い入れのあるリープライヒだけに、イサン・ユンの系譜を継ぐ細川作品にも、共感を以って向き合っていることが伝わる。が、共感しつつも、ヨーロッパのシステムで記譜されたスコアには、冷徹に向き合いもし、緩む瞬間が無く、だからこそ、変にベタつくことの無い「和」を見出して、気持ちがいい(日本人の指揮者、オーケストラでは、かえって難しいのかも... )。そうして際立つ、アンビエントな「和」の底知れなさ... それは、「和」の再発見でもあり、「和」を切っ掛けに、細川作品の"ゲンダイオンガク"なイメージも融けてゆくようであり、おもしろい。
それにしても、宮田まゆみの笙は、いつ聴いても綺麗!

TOSHIO HOSOKAWA LANDSCAPES

細川 俊夫 : ランドスケープ V **
細川 俊夫 : セレモニアル・ダンス *
細川 俊夫 : さくら オットー・トーメック博士の80歳の誕生日に *
細川 俊夫 : 雲と光 **

宮田まゆみ(笙) *
アレクサンダー・リープライヒ/ミュンヘン室内管弦楽団 *

ECM NEW SERIES/476 3938




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サンフランシスコ人

細川俊夫のオペラ上演

http://www.abendblatt.de/kultur-live/article206960771/Ovationen-fuer-Kent-Nagano-und-eine-Oper-ueber-Fukushima.html
by サンフランシスコ人 (2016-02-21 05:11) 

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