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二〇〇七、交響曲から... [overview]

さて、昨年は、2007年にリリースされたアルバムを、改めて聴き直したのだけれど... クープランに始まって、オルガン版ゴルトベルク変奏曲まで、全部で75タイトル。いやぁ、おもしろかったぁ... 2007年、そう遠い過去ではないようでいて、すでに5年... というのは、改めて聴いてみて、距離を感じ。また、その距離感を以って聴き直してみれば、今さらながらに、おもしろさ、すばらしさに気付くアルバムもいろいろあって、新譜を追うばかりでない収穫があった。という75タイトルを振り返り、今、改めて2007年のベストは何だったか?特に印象に残ったアルバムを、3回に渡り、見てゆく。ということで、今回は、交響曲からピアノまで... なのだが、その前に...
2007年にリリースされたアルバムで、2007年の内に取り上げていたアルバムが5つあったことを思い出す。ということで、まずは、その5タイトルを振り返る。

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シューマンに、モーツァルト、ベートーヴェンに、フンメル、そして、もうひとつシューマン。また随分と、ドイツ-オーストリアな路線でして。しかし、これぞクラシックな路線の、まさにクラシックな端正さというのか、充実した音楽に、改めて感じ入る5タイトル。一方で、ダウスゴー+スウェーデン室内管による、モダンとピリオドのハイブリットでのシューマンの交響曲(BIS/BIS SACD-1519)。ヤーコプスとフライブルク・バロック管の、ピリオドによるモーツァルトの交響曲(harmonia mundi FRANCE/HMC 901958)。ブラウティハムが弾くフォルテピアノによるベートーヴェンのソナタ(BIS/BIS-SACD-1473)と、斬新な演奏が並び、刺激的だったなと...
で、特におもしろかったのが、マックス+ダス・クライネ・コンツェルト、ライニッシェ・カントライらによるフンメルのオラトリオ『紅海の航行』(cpo/777 220-2)。まったく以って珍しい作品、となれば、資料的な意味合いが強いのか、というと、これが意外におもしろい!マックスならではのチョイス、センスが光った1枚。
しかし、なぜ、この後、更新を止めてしまったのだろう?更新が止まって、できた空白を補完しようと2007年を聴き直してきただけに、ちょっと考えてしまう。いや、blogとは、そんなものか?

さて、この5タイトルを加え、80タイトルで振り返る2007年。
まずは、交響曲から!
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交響曲で印象に残るのは... ヴェラー+ベルギー国立管によるグラズノフの5番の交響曲(FUGA LIBERA/FUG 521)。ロシア音楽ならではのキャッチーさは、いつ聴いてもワクワクさせられて。そんなキャッチーさを活かして、思い掛けなくグラズノフをポップに仕上げてしまうヴェラー+ベルギー国立管の演奏がまた素敵で。そんなグラズノフを聴いていると、何だかテンションも上がってしまう!
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それから、ダウスゴー+スウェーデン室内管による、ロマン派のイメージを刷新する好企画、"Opening Doors"のシリーズから、ドヴォルザークの「新世界より」(BIS/BIS SACD 1566)。彼らならではのモダンとピリオドのハイブリット、「室内」という規模が生み出す濃密さ、「室内」という規模を裏切るパワフルさで、聴き尽くしたはずの名曲を、目の覚めるような新鮮なものに!これこそ"Opening Doors"の白眉...
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そして、ピリオドから2タイトル... まず、ヘレヴェッヘ+シャンゼリゼ管によるシューマンの1番と3番の交響曲(harmonia mundi FRANCE/HMC 901972)。改めて聴き直してみて、その深い味わいに打たれるというか... 奇を衒うばかりでないピリオドの、ピリオド楽器の良いところも、悪いところも素直に出して紡がれる、あるがままの音楽の姿に感動。そうして響く、シューマンがまた、より多くのことを語り出すようで、印象的。
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何だか、びっくり箱のような、ヤーコプスとフライブルク・バロック管によるモーツァルトの「プラハ」と「ジュピター」(harmonia mundi FRANCE/HMC 901958)。何が飛び出すのかわからない、ヤーコプスの自由闊達な指揮ぶりに、フライブルク・バロック管がしっかりと応えて、遊園地のようなモーツァルトを繰り広げてしまう!いろいろ気難しく考えることは無しで、ヤーコプスの魔法に掛けられて。やっぱり、楽しい!
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管弦楽曲で印象に残るのは... ノット+バンベルク響による『春の祭典』(TUDOR/TUDOR 7145)。彼らの演奏に触れてしまうと、演奏し尽くされたレパートリーだなんてとても言えない... 恐るべき『春の祭典』がそこにあって... 近代音楽の金字塔でありながら、ストラヴィンスキーの頭にあったイメージは、果たして「近代」だったのだろうか?そんな思いが浮かぶ、ノット+バンベルク響の『春の祭典』。「近代」という硬質な枠組みは消失し、太古からの計り知れない広大な情景が立ち現れるようで、思わず慄いてしまう。
さて、協奏曲は、興味深いものがよりいろいろあって... 前述のグラズノフの5番の交響曲のカップリングになる、ピアノ・パートをゴドフスキーに改訂してもらったというグラズノフのピアノ協奏曲(FUGA LIBERA/FUG 521)や、右手を失ったパウル・ヴィトゲンシュタインのために作曲されたフランツ・シュミットによる左手のためのピアノ協奏曲(Querstand/VKJK 0611)など、改めて聴き直して、その存在を認識するようなところがあって。そしてまた、それらが実に魅力的で。最初に聴いたイメージは、どこに行ってしまったのだろう?
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それから、ティボーデとデュトワという、フランスもののスペシャリストたちによるサン・サーンスとフランクのピアノ協奏曲集(DECCA/475 8764)。彼らにすれば、今さらながらのレパートリーであって、訳無いのだろうが... いや、まさにそうした仕上がりで... 改めて聴けば、その余裕綽綽の演奏、大人の仕事っぷりに魅了されてしまう。ちょっと辛気臭くなりそうなレパートリーを、思い掛けなく爽快に響かせて、驚かせてくれて。あれ、こんなにもおもしろかった?
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さらに爽快だったのがアルネスとシンディングのピアノ協奏曲(hyperion/CDA 67555)。hyperionのロマンティック・ピアノ・コンチェルト・シリーズからの、ノルウェーの作曲家をフィーチャーした1枚。で、北欧ならではの、氷河を渡って来た風に吹かれるような清々しさと、雄大な風景に包まれるような感覚が、魅力的で。また、レーンのピアノ、リットン+ベルゲン・フィルによる演奏も、そのあたりを巧みに捉えて、より瑞々しいサウンドを印象付ける。
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さて、爽快とは真逆?スーパー・トロンボニスト、クリスティアン・リンドベルイによる現代トロンボーン協奏曲集(BIS/BIS-SACD-1638)のインパクトが強烈だった... ベリオ、クセナキス、ターネイジと、本来ならば現代音楽にカテゴライズすべき1枚だろうけれど、とにかく、ソリストの圧巻のパフォーマンスに、ただただ圧倒されて... 難解な"ゲンダイオンガク"であることを忘れさせてしまうリンドベルイのトロンボーンの妙技、恐るべし!
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協奏曲の最後は、シュミットによるポーランドのヴァイオリン協奏曲集(OHEMS CLASSICS/OC 597)。ロマン主義のヴィエニャフスキ、近代のシマノフスキ、現代のルトスワフスキと、実に幅のあるレパートリーを、難なく1枚にまとめ上げてしまうシュミットの器用さ、センスに改めて感服。それでいて、ポーランドのローカル性が醸し出すトーンの、独特な魅力がまた素敵で... シュミットならではの1枚。
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室内楽で印象に残るのは... マンゴーヴァのピアノを中心に、才気溢れる若手が結集してのショスタコーヴィチの室内楽作品集(FUGA LIBERA/FUG 525)。聴きどころは、何と言っても、2番のピアノ三重奏曲!この作品のスリリングさを、これでもかと盛り上げて、ジャケットのイメージそのままに、サスペンスフルに聴かせてしまうクールさ!若い世代の新たな感性が、21世紀のクラシックをおもしろくしてくれるのだなと、つくづく...
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これは古楽かな?と、その年代を改めて見てみたら、バロックだった... ということで、室内楽で取り上げるのだけれど... ディアス・ラトーレのギター、エステバンのパーカッションによるサンスの『スペイン式ギター指南曲集』(Zig-Zag Territoires/ZZT 061002)。クラシック離れしたそのサウンドは、ワールド・ミュージック的であり、渋いスペインのトーンに痺れてしまう1枚!やっぱり、ギターってカッコいい!
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最初に聴いた時は、そのあまりのストイックさに、ただただ中てられてしまったのだけれど... ツェートマイアー四重奏団によるバルトークの5番と、ヒンデミットの4番の弦楽四重奏曲(ECM NEW SERIES/476 5779)。改めて聴き直してみれば、そのストイックを極めた世界に、音楽すら超越してしまうような、究極的な姿を見出して... 厳しい音楽、厳しい演奏に、異様に惹かれてしまう。このインパクトはただならない!
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ピアノで印象に残るのは... インマゼール、シュヴァリエのコンビによる、ラフマニノフの2台、4手によるピアノ作品集(Zig-Zag Territoires/ZZT 061105)。もちろん、ピリオドのピアノで... いや、ラフマニノフもピリオドの範疇に... という感慨は、改めて聴いてもある。そして、響き出す、淡々としたラフマニノフの新鮮さ!そこにぼんやりと聴こえてくるミニマルな感覚。訥々としていて、クールという、不思議な温度感が、得も言えぬ雰囲気を生み出す。
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シャタイアー、ショルンスハイムのコンビが挑んだ、18世紀の奇天烈マシーン、ピアノとチェンバロが合体してしまったvis-à-visによるモーツァルトの作品集(harmonia mundi FRANCE/HMC 901941)。まったく、ブっ飛んでいる。楽器もさることながら、演奏も... すると、モーツァルトがロックになる?というより、18世紀、モーツァルトはロック・スターだった... を、垣間見せる刺激的な1枚。18世紀は、実にとんがっていた!
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改めて聴いてみて、魅了されてしまったブガッロ&ウィリアムズのピアノ・デュオによる『春の祭典』のピアノ版(WERGO/WER 6683 2)。前述のノット+バンベルク響、同様に、近代音楽の金字塔... という、仰々しいイメージにまったく囚われず、自分たちの『春の祭典』像をさり気なく紡ぎ出してしまう、紡ぎ出せてしまう音楽性に感心してしまう。で、彼女たちのストラヴィンスキーなのだが、ポップ?カラフル?で、ガーリーな気分が、おもしろい!
ふと振り返ると、みなデュオ... 特別、意識したわけではないのだけれど、2007年のピアノは、デュオがおもしろかった。というあたりが、おもしろい。

後編に、続く...

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