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春を呼び込む二重唱。 [2011]

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新春、1枚目は、春めくアルバムを...
ということで、華やかなスターの共演!Virgin CLASSICSが誇る、カウンターテナーの2大スター、フィリップ・ジャルスキーとマックス・エマヌエル・ツェンチッチが、華やかなりしバロック期のイタリアを歌う、"Duetti"(Virgin CLASSICS/0709432)。さらに花を添えるのが、ウィリアム・クリスティ率いるレザール・フロリサン(花咲ける芸術)の演奏!となれば、まったく以って華々しいのだけれど... カウンターテナーの2大スターが並ぶとなると、喧嘩(もちろん、掴み合いの... とかじゃなくて... )しないか?とか、ちょっと心配にもなる。
ジャルスキーとツェンチッチ、これまでも共演(例えば、ヘンデルのオペラ『ファラモンド』!)はなくはないが、こうして、ひとつのアルバムに2人が納まったということに、ちょっと驚きがあって。どうバランスを取るのだろう?このアルバムがリリースされると聞いてから、ずっと気になっていた。というより、それは、かなりの聴きものであって。そんな穿った視点も含みつつ、興味津々で聴いてみる。

やっぱり、どこかで2人の間に硬さがあるか... いや、それは至極、当然でもあるように思う。ジャルスキーとツェンチッチによる"Duetti"は、結構、意地悪なアルバムだ。もちろん、ファンには嬉しい1枚だけれど... カウンターテナーという特殊な声域の、2人のスターによる二重唱集ともなれば、当然、比べてしまうわけで... お互い、どこかで探り合いのようなところも無きにしもあらずだったろう。そのあたりが、硬さとなって表れるのか?そして、個性的な2人のトーンをどう重ねるか... ということもあっただろう。
進化系ボーイ・ソプラノ?突き抜けて天使のようなジャルスキーの歌声に、男声たるカウンターテナーならではの低音の艶っぽさ聴かせるツェンチッチの歌声... ジャルスキーのソプラノ、ツェンチッチのアルトという形で歌い分けて、またどこかで歩み寄るようなところもあって。それぞれの単独のアリア集などで聴いてきた、それぞれのトーンは、多少、抑えられ、ひとつの音楽を織り成そうという努力を感じる。が、そのあたりに窮屈さも滲むような。カウンターテナーの2大スターが真正面から向き合って、スパークするような丁々発止の二重唱を繰り広げる姿も聴いてみたかった。というのは贅沢な欲求かもしれないけれど...
しかし、そこで存在感を示すクリスティ+レザール・フロリサン!小規模な編成で、絶妙にジャルスキーとツェンチッチを引っ張ってゆくようなところも... クリスティのチェンバロ、オルガンに導かれ、ヒロ・クロサキ、カトリーヌ・ジラールのヴァイオリン、ジョナサン・コーエンのチェロ、エリザベス・ケニーのリュートが、闊達に、活き活きと、時にしっとりと、華やかなりしバロック期のイタリアの音楽を奏で。たった5人による小さなアンサンブルだからこそ生まれる小気味よさが、この上なく心地良く。特に、2大スターに負けずに歌う、ヒロ・クロサキのヴァイオリン... その明るく、朗らかな、何より美しい音色は、まさに春を思わせて、印象的。さすがはレザール・フロリサン!フランス・ピリオド界の重鎮の、余裕綽々たる仕事ぶりに、改めて感服させられる。そんなレザール・フロリサンに刺激されてか、2大スターも、次第にテンションが高まってゆくような印象もあり。最後に歌われるアレッサンドロ・スカルラッティの二重唱(track.24)などは、めくるめく花々しさにワクワクさせられる。
が、これが唐突に終わってしまう。まるで、誤って停止ボタンを押してしまったかと驚かされる... しかし、繰り返し聴いてみると、この唐突に断ち切られて生まれる余韻が何とも言えず... 2大スターの華やかさ(やっぱり、2大スターなだけのことはある!)と、レザール・フロリサンの小粋なあたりが、じわーっと耳の奥でリフレインする感覚が残り... で、いい音楽を聴けたなと、充足感が際立つからおもしろい。まったく大胆な終わり方にして、実に効果的なあたり、このアルバムのセンスとこだわりを感じずにいられない。
さて、そのいい音楽... 華やかなりしバロック期のイタリアの音楽なのだが、これがまた実に興味深いチョイスで... ちょうどヴィヴァルディの時代を、ヴィヴァルディ抜きで聴かせるからおもしろい。ボノンチーニ、マンチーニ、コンティ、ポルポラ、マルチェッロ、アレッサンドロ・スカルラッティと、ナポリ楽派はもちろん、ナポリばかりではない、イタリア・バロックの広がりと、イタリア各地からヨーロッパ中へと活躍の場を広げたイタリアの作曲家たちによる、明るく、朗らかなイタリア・バロックの魅力を丁寧に綴る。何より、初めて聴く作品ばかりなのだが、どの作品も華麗で、キラキラしていて、新鮮で、改めてイタリア・バロックに魅了されることに。そして、何とも言えない春めく気分が漂っているようで、聴いている内にハッピーに...

Duetti - Philippe Jaroussky / Max Emanuel Cencic / William Christie

ボノンチーニ : デュエット・ダ・カメラ "Pietoso nume arcier"
マンチーニ : カンタータ "Quanto mai saria piu bello" *
コンティ : カンタータ "Quando veggo un'usignolo"
ボノンチーニ : デュエット・ダ・カメラ "Chi d'Amor tra le catene"
ポルポラ : カンタータ "Ecco che il primo fonte" *
マルチェッロ : カンタータ "Chiaro e limpido fonte"
マルチェッロ : カンタータ "Tristi e Fileno"
アレッサンドロ・スカルラッティ : カンタータ "Amore e Virtu" から 二重唱 'Nel cor del cor mio'

フィリップ・ジャルスキー(カウンターテナー) *
マックス・エマヌエル・ツェンチッチ(カウンターテナー) *
ウィリアム・クリスティ/レザール・フロリサン

Virgin CLASSICS/0709432




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