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聴き直し納め。 [overview]

夜中に、何気なくつけたテレビで、スカラ座のシーズン開幕公演をやっていて...
1778年、柿落しという、伝統が詰まった絢爛たる劇場で、大統領臨席、その隣には新首相、本物のセレブリティたちが埋め尽くし、国歌演奏から始まるセレモニアルな気分。いや、凄いなと、つくづく思った。が、幕が上がって衝撃を受けるロバート・カーセン演出の『ドン・ジョヴァンニ』。いや、幕は、暴力的に引きずり下ろされて... あの、黙示録的な始まりの序曲!そして、舞台上に現れたのが客席を映し出す歪む鏡!度を過ぎた欲望で、ユーロを、世界経済を危機に陥れる面々が集う絢爛たる劇場を、歪む鏡で映すとは、何と辛辣な!始まって即のこのカタストロフ!思わず目が覚める... いや、胸すく思い!そして、オペラって凄い!と、雷に打たれた思い。これだけのメッセージを発することができるなんて... こういう刺激的な姿勢に、改めてクラシックを惚れ直す。いや、クラシックというのは、ユルめに、スノビズムを擽る程度のものでは、けして、ないのです。
なんて、熱くなったところで、クラシックを取り巻く状況は変わらんのだけれど... というあたりはさて置きまして、新譜を追う一方で、2007年を聴き直してきた2011年。年の瀬も押し迫って来たところで、一区切り。秋から冬に掛けて聴き直した17タイトルを振り返る。

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夏から秋に掛けて... が、かなりの駆け足で、34タイトルも聴き直してしまったものだから、秋から冬に掛けては、その半分。だけれど、聴き直す意義に関しては、より大きなものとなったのかも。ま、おもしろくなさげ?なんて、安易なレッテルを貼ってしまって、最後に残ってしまったアルバム(ばかりではないけれど... )だったものだから、余計に発見が多いというか、新鮮というか... いや、おもしろかった!
という、印象を新たにするアルバム... まずは、ビオンディ+エウローパ・ガランテによる"IMPROVISATA"(Virgin CLASSICS/3 63430 2)。ヴィヴァルディからボッケリーニまで、幅の広い作曲家を取り上げて、焦点がぼやけているように勝手に思い込んでいたアルバムが、よくよく聴いてみれば、交響曲の黎明期をイタリアという視点から丁寧に追っていて... そうした中に、イタリアにおける古典派を盛り込み... これまで体験したことのなかった括りで音楽史の一端を垣間見せる、まったく興味深い1枚。もちろん、演奏は、エウローパ・ガランテならではの活きのいい仕上がりで、音楽史、云々、関係無く、魅力的なサウンド。快活な、18世紀、イタリアの音楽に触れて、もっといろいろ聴いてみたくなってしまう。
興味深いという点では、パールマン+ボストン・バロックによる、ジングシュピール『慈悲深い托鉢僧』(TELARC/CD-80573)も印象に残るもので... 『魔笛』や『後宮からの誘拐』とは違った、市民の娯楽としてのリアルなジングシュピールの姿を垣間見ることのできる貴重な1枚。なわけだが、何より、そのキャッチーな音楽に思いもよらず魅力を感じてしまう(ウェーバーの『アブ・ハッサン』を思い起こさせる!)。18世紀においても、B級の魅力はあるなと... もうひとつ興味深かったのが、ブラウティハムとリュビモフが弾く、モーツァルトの2台のピアノのための協奏曲の2つの版(BIS/BIS SACD 1618)。版は違えど、1枚のアルバムに同じ曲を2回というのは、大胆!なのだが... やるだけのおもしろさがあった、クラリネット、トランペット、ティンパニを含む版。響きがゴージャスになっての聴き応えが、モーツァルトにして、とても新鮮だった。
それから、改めてピリオドの巨匠たちに感服させられたアルバム... クリスティ+レザール・フロリサンによるハイドンのオラトリオ『天地創造』(Virgin CLASSICS/3 95235 2)。古典派の集大成... という強いイメージがあって、肩透かしを喰らってしまったような演奏だったものの、改めて聴き直すと、古典派の集大成なんていう、大仰なあたりをするりとかわして、クリスティの、レザール・フロリサンの、フランス流のマイペースを貫いて生まれる新たな『天地創造』像に、思い掛けなく惹かれてしまう。まさに、花咲ける天地創造で、ポップ!そして、ヘレヴェッヘ+シャンゼリゼ管によるシューマンの1番と3番の交響曲(harmonia mundi FRANCE/HMC 901972)。どこか物足りなさを感じていた演奏だったけれど、その、奇を衒う必要の無いピリオドの姿を、今頃、噛み締める... インパクトではない、音楽そのものと向き合うヘレヴェッヘの姿勢に、聴き直して初めて納得してみる。そして、ピリオドによるマーラーへの序奏をそこに見出してみたり。

このあたりで、ピリオドから離れて...
秋から冬に掛けて最も驚かされたのが、プソフォス四重奏団による、新ウィーン楽派の弦楽四重奏作品集(Zig-Zag Territoires/ZZT 070502)。実は、存在さえ忘れていたかも... なので、余計に驚いてしまって... いや、聴き直してみれば、なぜそんなことになってしまったのか、まったく不思議... てか、すばらしい演奏!新ウィーン楽派、云々を、解脱したとも言えそうな、独特の美しさを湛えるヴェーベルンにして、ベルク、シェーンベルク... こういう演奏に触れると、クラシックの「21世紀」をひしひしと感じる。何かに囚われることのないニュートラルな姿勢、どこか飄々と我が道を歩めてしまうマイペースっぷり... その現代っ子感覚に、妙に共感してしまう。
さて、挙げれば切りがないのだけれど、他もすばらしく... シュミットによるポーランドのヴァイオリン協奏曲集(OHEMS CLASSICS/OC 597)の、器用に時代を渡って、ポーランド気質をそれとはなしに響かせてくるあたりが、シュミットらしく見事で... アルブレヒトによるオルガン版、ゴルトベルク変奏曲(OHEMS/OC 625)では、改めてバッハのユニヴァーサルさを再確認させられ、アルブレヒトによる多彩なアレンジ、演奏が、壮麗なパイプ・オルガンを、また一味違ったものともしていて、おもしろい。
ということで、年が改まってから、2007年のベストを選らんでみようかなと...

2007年を聴き直す、春から夏に掛けて... 夏から秋に掛けて... 秋から冬に掛けて...




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