SSブログ

寒い冬の日に、ロシアの音楽... [2011]

さて、クリスマス・イヴです。
ここで、クリスマスの音楽を聴く... というのは、あまりに能が無いので、クリスマスに因む作品を避けて、クリスマスの楽しげな気分を聴かせてくれるものはないかなと。そこで、寒い冬の日に聴くロシアの音楽。ボロディン、チャイコフスキー、ムソルグスキー。民俗調の人懐っこいあたりが、パチパチと爆ぜる焚火を囲むようで、楽しげで、ホッとさせてくれもし... また、ファンタジックであり... ロシアの音楽には、何か、一味違うマジカルな気分がある?
ということで、ジェラード・シュウォーツ率いる、シアトル交響楽団による、ボロディンの交響曲全集(NAXOS/8.572786)。キリル・カラビッツ率いる、ボーンマス交響楽団による、チャイコフスキーの2番の交響曲とムソルグスキーの「はげ山の一夜」、『展覧会の絵』(onyx/ONYX 4074)を聴く。


職人気質には清々しさすらあって... シュウォーツのボロディン。

8572786.jpg
1010.gif
ロシア5人組のひとり、ボロディン... オペラ『イーゴリ公』の「韃靼人の踊り」や、「中央アジアの草原にて」など、馴染み深いわけだけが、その他となると途端によく見えなくなってしまう。もちろん、作曲が本業ではなかったというボロディンの都合(医者で化学者... )もある。完成された作品がそもそも少ない。が、それにしても、ロシア音楽の名刺代わりになり得る人気作の一方で、その他の作品を聴く機会はあまりに少ない。というところに、シュウォーツ+シアトル響による交響曲全集。オーケストラのレパートリーに上ることも珍しくはない2番はもちろん、1番、そして、初めてその存在を知った未完の3番と、興味津々の内容。
ということで、まずは3番(track.9, 10)。ボロディンの頭の中ではどうも完成していたようだが、アウトプットする前に急死してしまい... 残されたスケッチやら、生前、ボロディンがピアノで弾いていた記憶などを辿り、グラズノフが補筆し、2つの楽章を完成させたとのこと。となると、共作みたいなものだろうか?ボロディンならではのキャッチーさ、メローさを聴きながらも、グラズノフの華麗さも感じて。そのカクテルな感覚が素敵だったり。この3番は、思い掛けなく魅力的なのかも... それから、1番(track.1-4)。この交響曲も初めて聴いたのだけれど、ロシア5人組ならではの、期待を裏切らないロシアン・テイスト!ムソルグスキーのオペラ『ボリス・ゴドゥノフ』の戴冠式のシーンでも歌われる民謡のメロディ(ベートーヴェンのラズモフスキーの2番にしろ、いろいろなところから聴こえてくるよなぁ... )がさり気なく織り込まれつつ、よりダイレクトにフォークロワなテイストで飾られてキャッチー。かと思うと、3楽章(track.3)では、メローで、ほのかにオリエンタルでもあるようで、ヴィヴィットで、何より幻想的で。そんなあたりが、どことなくモダンにも思え、印象的。そして、2番(track.5-8)... この景気のいい、民俗調がたまらなく好き!何か、こう、クラシック!という手応えがしっかりとあって、久々に耳にすると、ちょっとしびれてしまう。こういう作品に触れると、何も考えずにクラシックっていいなぁ。なんて、しみじみと思ってしまう。
そんなボロディンを堪能させてくれるシュウォーツ+シアトル響!けして派手ではないけれど、着実に、卒なく、しっかりとまとめて響き出す、作品本来の魅力というのか。彼らならではの手堅さが、音楽を聴いた後の充足感をより濃いものとしていて。また、職人気質なきっちりとした仕事ぶりに、何か清々しさすらあって。ヨーロッパの職人気質とは違う、アメリカの職人気質に、改めて感心させられる。

BORODIN: Symphonies Nos. 1-3

ボロディン : 交響曲 第1番 変ホ長調
ボロディン : 交響曲 第2番 ロ短調
ボロディン : 交響曲 第3番 イ短調 〔グラズノフによる補筆〕

ジェラード・シュウォーツ/シアトル交響楽団

NAXOS/8.572786




掻き立てられるイマジネーション、カラビッツのロシア。

ONYX4074.jpg
1010.gif
近頃、話題の若手指揮者... ということで、気になっていたキリル・カラビッツ(b.1976)。どんなものかと手に取った、カラビッツ+ボーンマス響によるONYXからの第2弾。ムソルグスキーの交響詩「はげ山の一夜」(原典版)に、組曲『展覧会の絵』(ラヴェル版)という、ロシア音楽を代表する名曲と、その前に、チャイコフスキーの2番の交響曲「小ロシア」を取り上げるという興味深い組合せ。で、まず、そのチャイコフスキーの2番が気になって... とにかく、4、5、6番が定番。1番もよく聴く。けれど、2番と3番は?というチャイコフスキーの交響曲。やはり、聴いたことがなくて... これはいい機会だなと...
ロシア5人組からも好評だったという2番(track.1-4)。まさに、フォークロワなテイストが散りばめられ、4、5、6番とは一味違う、国民楽派風交響曲。そして、どこかしらダークなイメージ?民謡の引用はキャッチーだけれど、絵に描かれた牧歌的な風景を謳うのではない、リアルなロシアの自然を臭わせる独特のトーンがあって。続く、おどろおどろしいムソルグスキーの作品とは、いい具合に共鳴するのか。どこか抑圧的でヘヴィーなチャイコフスキー・サウンドが新鮮だったり。が、その後で、「はげ山の一夜」(track.5)の鮮烈な始まりが耳に飛び込んでくると、目が覚める!ムソルグスキーの音楽というのは、衝撃的だ... チャイコフスキーと同世代の音楽とは思えない大胆さ... こうやって続けて聴いてみると、余計に感じてしまう。
続く、『展覧会の絵』(track.6-20)なのだけれど。名曲忌避の天の邪鬼な性格ゆえ、随分と聴いてなかったなと。そもそも手元にCDがあるのか?アバドの古い録音があったはずだけれど... と、何だかおぼつかない状況で、改めて向き合う『展覧会の絵』。今さらながらに、こういう曲だったか、なんて、感慨も滲み。また、カラビッツ+ボーンマス響の演奏が、細部を炙り出してゆくようなところがあり。1枚、1枚の絵を、訳知り顔でプロムナードの真ん中から眺めるのではなく、絵に鼻がくっつきそうなくらいに寄って行って、細かく描き込まれた部分を丁寧に見つめ直す。これまでとは違う視点で『展覧会の絵』を見せられたような、そんな感覚がある。そこに、近頃、話題の若手指揮者の独特の感性を感じ... 現代的な明晰さで、組曲の全体像をクリアに捉えるのとは違う、細部への執拗なこだわり?こだわったパーツを丁寧に縫いつないで、全体像を生み出してゆく不思議さ... その独特の感性に慣れるまで、少し戸惑うところもあったけれど、ラヴェルの華麗なオーケストレーションの中に、ムソルグスキーの音楽に込められた独特のファンタジーを浮かび上がらせて、よりイマジネーションは掻き立てられる。

TCHAIKOVSKY ・ MUSSORGSKY BSO ・ KARABITS

チャイコフスキー : 交響曲 第2番 ハ短調 「小ロシア」
ムソルグスキー: 交響詩 「はげ山の一夜」 〔原典版〕
ムソルグスキー: 組曲 『展覧会の絵』 〔オーケストレーション : ラヴェル〕

キリル・カラビッツ/ボーンマス交響楽団

onyx/ONYX 4074




nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。