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21世紀、マエストロ。 [2011]

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パーヴォ・ヤルヴィ率いる、ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメン。
というと、一昨年、完結しましたベートーヴェンのツィクルス... モダンとピリオドによるハイブリットで、モダンでもピリオドでもない、まったく新しいベートーヴェン像を提示してくれたわけだが... とにかく驚かされたわけです。散々、聴かされた、大時代的なベートーヴェンの後で、ピリオドという強力な兵器の導入で戦争が起きたのは前世紀末。21世紀となり、ゼロ年代も経てしまうと、それらは随分と昔に思えて... 今や、ちょっとやそっとじゃ驚かない。驚けない。ところに、モダンでもピリオドでもない、あらゆるしがらみからスルリと抜け出し、次の次元へとジャンプしてしまったかのようなベートーヴェンを展開した彼ら... である... その、飄々としたまったくの斬新さに、21世紀のクラシックというものを強く意識させられたわけたが... ベートーヴェンの次は、シューマン...
さて、どうなりますか?興味津々で、いや、思いっきり期待して聴く、その第1弾、3番、「ライン」と、1番、「春」(RCA RED SEAL/88697 96431 2)。

主要ポストを着実に手中に収め、その存在感はますます大きくなるばかりのパーヴォ。すでに、父、ネーメを越えて、ヤルヴィ家の長男... なんていう説明はまったく必要無い。それどころか、時代を代表するマエストロに... と、ますます期待も高まっているわけだが。一方で、このマエストロの音楽性というのは、時代を代表するにはあまりにエッジー過ぎる?ような... これまで、時代を代表してきた伝説的なマエストロたちの名前を思い返すと、果たしてその系譜にパーヴォの名前を連ねてしまっていいのだろうか?とも思う。
ピリオド可、とか、そういうレベルの異端児(今や、ピリオド如きで、それについて特筆すること自体、ナンセンス... )ではなく、パーヴォという存在は、ちょっと宇宙人的で、その音楽は、時折、掴みかねるようなところがある。まだ誰も踏み込んでいないような場所へ、さらりと踏み込み、誰も思い付かないような、まったく斬新なサウンドを引き出しつつ、また、それが何か?くらいの受け流し方で。聴いている側は足をすくわれ、受け止めきれず、思わずよろめいて、転んでしまって... で、しりもちをついた頃に、これって凄い... となったりするのが、パーヴォだ。ベートーヴェンのツィクルスがまさにそうだった。ならば、下手に収まるところに収まってしまって、巨匠然としてしまうより、パーヴォはずっとパーヴォらしく、宇宙人のままであって欲しい。いや、そんなパーヴォを21世紀のクラシックが許容し、時代を代表させようというならば、それはまたおもしろいことで... クラシックの保守性も、今や揺らいでいる... なんて、つい、いろいろ考えてしまう、パーヴォという存在。何だか知らない内に、振り回されているような、不思議なインパクトがある。そして、シューマンだが...
ベートーヴェンでは宇宙遊泳でもするような、刺激的な体験をさせてくれたパーヴォ。シューマンでは、意外にも?地に足の着いた音楽を響かせる。第一印象で戸惑うようなことはない、しっかりとしたシューマン。そして、ベートーヴェンでは力の抜き方がおもしろかったのだが、シューマンでは力の込め方がおもしろい... いや、あらゆるパーツがマックスに表現されているというか... 3番、「ライン」の1楽章など、この部分を強調してしまう?と、驚かされるやら、やってくれるね!と、うれしくなるやら。隅々まで、しっかりとした存在感を主張させるパーヴォのシューマン。シューマンが構築した音楽の、全てのパーツがくっきりと透けて見え、そのパーツの全てがアグレッシヴに動き出し、交響曲を大きく駆動させてゆく姿はエキサイティング!そこに、ベートーヴェンでは避けていたとすら思える聴き応えが、シューマンにはあって。もう宇宙遊泳は無しか... パーヴォも年を取ったのかな?なんても思う。やっぱり、落ち着いてこそ、巨匠なのだろうか?そのあたり、少し、複雑にも感じるのだけれど。しかし、聴き応えがあることに悪いことなど一切ない。その演奏は、まったく見事なもの。
ヘンゲルブロックに始まって、ハーディング、そしてパーヴォへと受け渡されてきたドイツ・カンマーフィルならではの独特なセンス、特殊な技量が、シューマンでもフルに活かされる。ピリオド可のエッジの効いた響き、室内オーケストラならばこその小回りの利くアンサンブル、締まったサウンド... 何より、ひとりひとりの意識の高さを感じ、パーヴォの下、よりクリエイティヴな仕事をしようという意気込みが伝わってくる。そこから放たれる一音、一音の輝きは、この上なく心地良く、パーヴォによって絶妙にドライヴされれば、他にはない瑞々しい音楽を出現させてしまう。特に、1番、「春」の1楽章(track.6)!あの湧き上がるような感覚は、もう... やっぱり、「春」が好き!って、めっきり寒くなったから余計に感じる?シューマンのポジティヴな面がヴィヴィットに綴られる「春」は、パーヴォ+ドイツ・カンマーフィルのサウンドによりフィットするようで、彼らの演奏を聴いていると、ワクワクしてくる。ということで、2番と4番がどうなるか?今から、楽しみ!

The Deutsche Kammerphilharmonie Bremen paavo järvi schumann 3&1

シューマン : 交響曲 第3番 変ホ長調 Op.97 「ライン」
シューマン : 交響曲 第1番 変ロ長調 Op.38 「春」

パーヴォ・ヤルヴィ/ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメン

RCA RED SEAL/88697 96431 2




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