SSブログ

シューマンからバッハへ... [2007]

寒さが厳しくなってまいりました。そして、今年も残すところ...
やっぱり、あっという間で、訳がわからないまま、今日に至ってしまった。で、大丈夫なのだろうか?これで納まるのだろうか?いや、そう言いながら、はっと気が付けば、紅白を見終わっている。そんな感じで正月を迎えているはず。大丈夫も何も、強引に正月はやって来て... まったく、年末なんて、もう!である。
さて、当blogの空白期を埋める試みとして、春から2007年を聴き直してきたのだけれど、それも今回が最後。ということで、2007年にリリースされた3タイトル... フィリップ・ヘレヴェッヘ率いる、シャンゼリゼ管弦楽団による、シューマンの1番と3番の交響曲(harmonia mundi FRANCE/HMC 901972)。ヘルマン・マックス率いる、ライニッシェ・カントライ、ダス・クライネ・コンツェルトらによる、シューマン版、バッハのヨハネ受難曲(cpo/777 091-2)。ハンスイェルク・アルブレヒトのアレンジ、演奏による、オルガン版、ゴルトベルク変奏曲(OHEMS/OC 625)。シューマンからバッハへ... と、聴き直す。


古いものは古くて魅力的... ヘレヴェッヘのシューマン。

HMC901972.jpg07sym.gif
1010.gif
パーヴォ+ドイツ・カンマーフィルのシューマンを聴いたばかりということもあって、ヘレヴェッヘ+シャンゼリゼ管によるピリオドのシューマンは、そのピリオドであるあたりがより強い印象として響いてくる。1曲目、1番の交響曲、「春」の、その始まりからして、春の谷間を響き渡るブラスの、ピリオドならではのくぐもった響きに、良くも悪くも"ピリオド"だなと... そういう感覚が、2曲目、3番の交響曲、「ライン」(track.5-9)の最後まで、貫かれている。そんな、ヘレヴェッヘのシューマンを改めて聴いてみて感じるのは、これはある種の老成?
ピリオド・アプローチというと、斬新だ、何だと、それまでのクラシックの大時代的な姿勢があっての革新性にこそ刺激を感じてきたわけだが、21世紀もゼロ年代を経て、一時代を切り拓いてきたピリオドの巨匠たちの近頃の音楽の向き合い方というのは、もはやそういう刺激とは違う次元にあるのか... いろいろな思惑やら、何やらを落とし切って、訥々と音楽を紡ぎ出す... ヘレヴェッヘのシューマンも、そんな印象を受ける。ピリオドの楽器の持つ癖、未発達さをそのままに、それこそを旨味成分として。スパイスを効かせるのではなく、出汁で味合わせる音楽とでも言おうか。ピリオドとして尖るのではなく、ピリオドのありのままを、そのままサウンドにする。無為自然の境地?また、「春」、そして、「ライン」という、シューマンが自然と向き合った交響曲にそういう境地がやたらしっくりくるようでもあり。「ライン」などは、どこか渋い山水画のようにも...
ピリオドだからこその古色蒼然とした佇まいが、より風格のある音楽になり得ていて。それでいて、かつてのクラシックの大時代的な気分を、ヘレヴェッヘのシューマンに見出してしまう?もちろん、もっさりユルめの、音楽ヒエラルキーの頂点で胡坐をかくような演奏ではないのだけれど、何が出てくるかわからないハラハラ感ではない、腰を落ち着けて味わうピリオドの落ち着きぶりに、クラシックの良さを改めて見つめ直してみたり。古いものは古くて魅力的。ヘレヴェッヘという存在に、改めて感じ入る。

SCHUMANN Symphonies nº1 & 3 P. HERREWEGHE

シューマン : 交響曲 第1番 変ロ長調 Op.38 「春」
シューマン : 交響曲 第3番 変ホ長調 Op.97 「ライン」

フィリップ・ヘレヴェッヘ/シャンゼリゼ管弦楽団

harmonia mundi FRANCE/HMC 901972




シューマン版、ヨハネ受難曲の驚き!と、ロマンティックなバッハの魅力...

7770912.jpg
1010.gif
メンデルスゾーンによるマタイ受難曲は知っていたけれど、シューマンによるヨハネ受難曲?!そういうものもあったのかと驚かされた、マックス+ライニッシェ・カントライ+ダス・クライネ・コンツェルトによる、シューマン版、ヨハネ受難曲。それでいて、彼らの演奏のおもしろいところは、"ピリオド"による演奏... バッハではなくシューマンの時代にピリオドを打つ。そこがおもしろい!で、ロマン主義の時代にリヴァイヴァルされたバッハ、バッハをロマン主義の時代のサウンドで響かせるとどんな風になるのだろう?
それは... やっぱり、ロマンティック!で、ロマンティックなヨハネ受難曲のヴィヴィットなこと!バッハのオリジナルで聴いても十分にドラマティック、バロック・オペラを思わせるところすらあるわけだが。シューマンにより、クラリネット、トランペットが加えられ、規模の大きくなったオーケストラから繰り出されるサウンドは、その厚みが印象的で、ジューシー... まさに、ロマンティックなのだ。また、そうあることで、よりドラマティックさが際立ち。いや、これくらいにロマンティックな方が、イエスの受難の物語はより映えるのかもしれない。シューマンによって補強された背景をバックに、バッハの旋律は雄弁に語り出し、受難劇としての性格がしっかりと定まったようにすら感じてしまう。そうして見出されるのは、バッハが描き上げていた音楽ドラマというものが、バロックではなく、すでにロマンティックな可能性を孕んでいたこと。やっぱり、バッハという存在は、バロックという枠組みでは捉え切れないなと。
そして、その演奏... ロマンティックなバッハを絶妙に響かせるマックス+ダス・クライネ・コンツェルト。バロックとは一線を画す、ロマン主義の時代の落ち着き、風格を、卒なく醸し出す。そこに、印象的な色を添えるのが、リーガーの弾くフォルテピアノ。オリジナルでのチェンバロでは生み出し得ない、しっとりとした表情はとにかく印象的で... また、そのフォルテピアノと最も多く歌うことになる福音史家、コボウ(テノール)の歌声が麗しく。ロマンティックな受難曲のストーリーテラーとして、存在感を示す。一方、他のソリスト、ライニッシェ・カントライのコーラスは、時折、ユルめな印象を受けなくもない?けれど、そのユルさもロマン主義の内?で、全体としては、十分にロマンティックなバッハを堪能させてくれる。そのロマンテッィクなバッハこそ、魅力。
しかし、マックスはおもしろいものを見つけ出してくる!

Bach/Schumann ・ Johannes-Passion ・ Hermann Max

バッハ : ヨハネ受難曲 〔シューマン版〕

福音史家 : ヤン・コボウ(テノール)
イエス : クレーメンス・ハイドリッヒ(バス)
アリア/ピラト : エッケハルト・アベレ(バス)
ヴェローニカ・ヴィンター(ソプラノ)
エリーザベト・ショル(ソプラノ)
ゲルヒルト・ロンベルガー(アルト)
ライニッシェ・カントライ(コーラス)
ヘルマン・マックス/ダス・クライネ・コンツェルト

cpo/777 091-2




オルガンの多彩さが生むファンタジー... オルガンでゴルトベルク変奏曲。

OC625.jpg
1010.gif
ホルストの『惑星』のオルガン版(OHEMS/OC 683)をリリースしたばかりの異才、オルガニスト、ハンスイェルク・アルブレヒト... 様々な作品をオルガンに置き換えてしまって、まったく新鮮なオルガン演奏を次から次へと楽しませてくれているわけだが、ワーグナーの『指環』(OHEMS/OC 612)に続いての第2弾としてリリースされたのが、このゴルトベルク変奏曲。比較的、様々な楽器(ピアノはもちろん、アコーディオン、ハープ、弦楽三重奏、ヴィオラ・ダ・ガンバによるコンソート... )で取り上げられるゴルトベルク変奏曲ではあるが、オルガンというのは初めてだったか、もの凄く新鮮な思いで聴いたのを覚えている。そして、今、改めて聴くのだけれど...
始まりのアリアから、何とも温かなサウンドが広がる。この寒い冬には、最高かもしれない。それは、様々に火が爆ぜる暖炉を見つめるような、そんな雰囲気だろうか。そして、その穏やかな佇まいにまどろみを誘うようなところも... そもそも、カイザーリンク伯爵のおやすみのための曲として用意されたゴルトベルク変奏曲だけれど、30もある変奏を、定番のチェンバロやピアノで掻き鳴らされてしまうと、とてもおやすみになんてなれない。が、オルガンだと、それはまた違った印象に... 弦を爪弾く(チェンバロ)、叩く(ピアノ)、硬質な音とは違う、空気を吹き込んで生まれる音のやわらかさ、温もりに触れていると、何だか、いい夢が見られそうな心地に。
しかし、オルガンという楽器は多彩... その多彩さを巧みに操るアルブレヒト... めくるめく30もの変奏を、それぞれに最良の音色を選んで鳴らし。変奏ごとに切り替えすことが難しくないオルガンだからこそ、30もの変奏が無理なくナチュラルに紡がれて。一方で、多彩なオルガンだからこそ、30もの変奏のそれぞれに持つ雰囲気を、より分かり易く浮かび上がらせてもいて。チェンバロやピアノではあり得ないイメージの広がりを体験し、そこにファンタジーを見出す。何て素敵なゴルトベルク変奏曲だろう。

Johann Sebastian Bach ・ GOLDBERG-VARIATIONEN
An Organ Arrangement


バッハ : ゴールドベルク変奏曲 〔アルブレヒトによるオルガン版〕

ハンスイェルク・アルブレヒト(オルガン)

OHEMS/OC 625




nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。