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オーストリア。 [2007]

さて、12月も、もう半分。となれば、焦ります。
いや、焦っているようで、どこかでぼぉーっともしているような。こう、何か、気が入らないような。そうして、怒涛の後半を迎えるわけですが、大丈夫なのでしょうか?と、他人事のように自身を見つめつつ。その妙なままならなさに、やっぱり焦る。まったく、何をやっているんだか。という状況を打破するために、ここでひとつ、大きく片づけてしまおう!2007年を聴き直す... そろそろ終わりが見えつつありまして、年内には始末付けようと...
まずは、マーティン・パールマン率いる、ボストン・バロックによる、モーツァルトも楽曲を提供したジングシュピール『慈悲深い托鉢僧』(TELARC/CD-80573)。ロナルド・ブラウティハムと、アレクセイ・リュビモフによる豪華共演、モーツァルトの2台、3台のピアノのための協奏曲集(BIS/BIS SACD 1618)。プソフォス四重奏団による、新ウィーン楽派の弦楽四重奏作品集(Zig-Zag Territoires/ZZT 070502)。デイヴィッド・ジンマン率いる、チューリヒ・トーンハレ管弦楽団のマーラー・ツィクルスから、「復活」(RCA RED SEAL/82876871572)と、3番(RCA RED SEAL/88697129182)。という、5タイトルを一気に聴き直す。
何気に、オーストリアばかり。だったり。


18世紀末、ウィーンっ子たちのリアルな楽しみ... ジングシュピール『慈悲深い托鉢僧』。

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モーツァルトが楽曲提供している!ということで話題になった『賢者の石』(TELARC/CD-80508)の続編... パールマン+ボストン・バロックによる『慈悲深い托鉢僧』(TELARC/CD-80573)の世界初録音。『賢者の石』も含め、『魔笛』制作の周辺と、『魔笛』のようにきちっと仕上げられたのではない、当時のリアルなジングシュピール(歌芝居)の状況を知る貴重な機会を与えてくれた1枚。『賢者の石』同様に、『魔笛』のプロデューサーにして、パパゲーノを歌ったシカネーダーと、その仲間たち(もちろんモーツァルトも含む!)による音楽というのが、どんなもんだろう?いや、なかなか興味深い... というより、意外と魅力的!
トルコの王、アルマンドールは、王位を追われ、托鉢僧の姿となって、バスラの王女、ゼノミデに惑わされる息子、ソフラノを正しき道へと導く... といった『魔笛』に通じるストーリー。で、オリエンタル!この18世紀のスパイシー・サウンドのキャッチーさ、短いナンバーの小気味好さときたら、思い掛けなく楽しく。チーム・シカネーダーの軽いノリが絶妙!一方で、どれがモーツァルトで、どれがモーツァルトでないか、よくわからないところに、多少、不満も... しかし、ちょっと視点を変えてみれば、この闇鍋的感覚こそが魅力なのかも。
そんな、チーム・シカネーダーによるいい具合にいい加減なあたりを、活き活きと聴かせるパールマン+ボストン・バロック。『慈悲深い托鉢僧』の前には、モーツァルトによるジングシュピール『劇場支配人』(track.1-5)が取り上げられるのだけれど、こちらは何とも鯱張っていて... 両作品のコントラストがなかなか印象的...
ところで、このアルバム、HMVやタワーで調べると、2007年のリリースとなっているのだけれど、もっと前のリリースだったような気がする... どうだったろう... ま、どちらにしても、18世紀末、ウィーンっ子たちのリアルな楽しみとしてのジングシュピールが聴けるのは貴重!なので、取り上げておきます。

MOZART: THE IMPRESARIO / MOZART'S CIRCLE: THE BENEFICENT DERVISH
PEARLMAN / BOSTON BAROQUE


モーツァルト : ジングシュピール 『劇場支配人』 K.486

ヘルツ夫人 : シンディア・シーデン(ソプラノ)
ジルバークラング嬢 : シャロン・ベイカー(ソプラノ)
フォーゲルザング氏 : ジョン・エイラー(テノール)
ブッフ : ケヴィン・ディーズ(バス)

シカネーダーを中心に、モーツァルトも含む仲間たちによる共作 : ジングシュピール 『慈悲深い托鉢僧』

托鉢僧 : アラン・ユーイング(バス)
ソフラノ : ジョン・エイラー(テノール)
マンドリーノ : ケヴィン・ディーズ(バス)
マンドリーナ : ディアン・ミーク(メッゾ・ソプラノ)
ゼノミデ : シャロン・ベイカー(ソプラノ)

マーティン・パールマン/ボストン・バロック

TELARC/CD-80573




モーツァルト、2台のピアノための協奏曲を、2回、聴く。

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ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンと、フォルテピアノを用いて古典派を巡る、丁寧なシリーズを展開してきたブラウティハム... 昨年、モーツァルトのピアノ協奏曲のシリーズもスタートさせ、リリースされた2タイトルは、ヴィレンズ+ケルン・アカデミーも好サポートも印象に残る、すばらしい仕上がり。そんなシリーズのテスト・マッチ?2007年にリリースされた、モーツァルトの2台、3台のピアノのための協奏曲集(オーケストラはハイドン・シンフォニエッタ・ウィーン)。ブラウティハムはもちろん、リュビモフという曲者にして名手を招いての豪華共演(3台目は、指揮を務めるフス... )。なのだけれど、ブラウティハムが紡ぎ出すいつもの秀逸さを思うと、リュビモフという個性が加わったことで、何か、妙なざわつきを感じ、少し気になる。さすがのブラウティハムも、リュビモフを前にしては、負けていられない?そうしたスパークする感覚があるのか...
しかし、このアルバムの興味深い点は、2台のコンチェルトを、2回、演奏してしまうこと。1回目(track.1-3)は、いつも通り。2回目(track.7-9)は、クラリネット、トランペット、ティンパニで補強した版。で、これがおもしろい!ティンパニが下支えするだけで、こうも重厚感が増すのか?ここぞというところで、トランペットを派手に吹かせば、思い掛けなく迫力が出て。時折、クラリネットがメロディックに歌い。ちょっと、ベートーヴェンのコンチェルトを聴いているような感覚にも。またそのあたりを、フス+ハイドン・シンフォニエッタ・ウィーンがよく鳴らしていて。そんな充実したサウンド... 今、改めて聴き直して、新鮮に感じてしまう。

Mozart ・ Concertos for 2 and 3 Pianos

モーツァルト : 2台のピアノのための協奏曲 変ホ長調 K.365(316a)
モーツァルト : 3台のピアノのための協奏曲 ヘ長調 K.242
モーツァルト : 2台のピアノのための協奏曲 変ホ長調 K.365(316a) 〔クラリネット、トランペット、ティンパニを含む版〕

ロナルド・ブラウティハム(フォルテピアノ)
アレクセイ・リュビモフ(フォルテピアノ)
マンフレート・フス(フォルテピアノ)/ハイドン・シンフォニエッタ・ウィーン

BIS/BIS SACD 1618




プソフォス四重奏団、新ウィーン楽派の道程を追う、弦楽四重奏作品集。

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プソフォス四重奏団による新ウィーン楽派... うわぁー、綺麗!とか、シンプルに感想が言えてしまう、1曲目、ヴェーベルンの弦楽四重奏のための緩徐楽章。今頃、聴き直してみて、こんなにも?!と、ひとり衝撃を受けてしまう。それは、無調すらまだ... 12音技法なんていつやって来るの?というくらい、ただただ綺麗なロマンティック・サウンド。シェーンベルクに師事して間もない頃、1905年、ヴェーベルン、22歳の作品は、後の"ゲンダイオンガク"の担い手たちから、師、シェーンベルク以上にリスペクトされることになる未来をまったく感じさせない。いや、それほどの美しさに、やがて至る音列音楽の研ぎ澄まされた感覚の予兆を見るのか?
続く、ベルクの抒情組曲(track.2-7)は、発明、間もない頃の12音技法による作品。で、12音技法による代表作のひとつだが、ヴェーベルンの美し過ぎるロマンティック・サウンドの後だと、この作品にもロマンティックさを見出すようで... 最後は、シェーンベルクのアメリカ亡命後の作品、4番の弦楽四重奏曲(track.8-11)が取り上げられるのだが、やはりどこかでロマンティシズムがこぼれ出すような、そんな感覚がおもしろく。
女性奏者、4人(現在のプフォソス四重奏団は、男女半々... )による新ウィーン楽派は、どこか甘やかな印象を受ける。最初のヴェーベルンはもちろん、ベルク、シェーンベルクと、新ウィーン楽派の原点たるロマン主義が、何気ない拍子にふっと香り、取っ付き難い音列音楽に、いつもとは違う心安さを見つけたり。プソフォス四重奏団の繊細で、瑞々しいサウンドが、新ウィーン楽派の面々による近代音楽への険しい道程を、魅力的なものとしてしまうおもしろさ。希有な1枚だ。

WEBERN | BERG | SCHOENBERG | QUATUOR PSOPHOS

ヴェーベルン : 弦楽四重奏のための緩徐楽章
ベルク : 抒情組曲
シェーンベルク : 弦楽四重奏曲 第4番 Op.37

プソフォス四重奏団
田中綾子(ヴァイオリン)
ブルーエン・ル・メートル(ヴァイオリン)
セシル・グラッシ(ヴィオラ)
イングリッド・ショーンロブ(チェロ)

Zig-Zag Territoires/ZZT 070502




古典派のような清々しさ?ジンマンによる新たなマーラー像、「復活」。

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さて、マーラー・イヤーがまもなく終わる。それは、生誕250年、没後100年が立て続けにやってくるという、スペシャルなメモリアルだったわけだが。そんなマーラー・メモリアル、最も印象に残るのが、ジンマン+チューリヒ・トーンハレ管によるマーラー・ツィクルスの完成。ベーレンライター版のベートーヴェンのツィクルスに始まって、伝統を塗り替える刺激的なツィクルスの数々を展開してきた彼らだけに、マーラーもまた、興味深い新たなイメージを打ち出して、その清新なサウンドに魅了されたわけだが... ここで聴き直す「復活」は、ツィクルスとしてはまだまだ駆け出し、十二分に気合が入っていた頃のもの(番号順のリリースということで、2番目... )。マーラーという巨大な存在を、如何にして自分たちのものとして消化してやろうか。ジンマンの野心をより強く感じさせる演奏。いや、彼らに求めるものはまさにそれであって... ウィーン世紀末の伝説として、怪物と化してしまったマーラー像を、徹底的に洗い尽くし響かせる透明感は、まったく衝撃的だった。
「復活」という、そのタイトルからして、どうしようもなくイメージができあがってしまっている交響曲を前に、作品そのものの形とストイックに向き合い、説明も飾りもいらない、シンプルな美しさを探る。ただそれだけを探る。それをやり切るジンマンの音楽性、それに応えるチューリヒ・トーンハレ管のクリアさ。そうして聴こえてくるのは、まるで古典派の交響曲のような清々しさか。マーラーにして、マーラーなのか、疑いたくなるような、不思議な感触。そこに、マーラーも、とうとう20世紀を断ち切ったか... というような感慨が滲み、最後はただならず感動。ジンマンのペースにすっかり乗せられてしまう。

MAHLER: SYMPHONIE NR. 2 "Auferstehungs-Symphonie"
TONHALLE ORCHESTER ZÜRICH ・ DAVID ZINMAN


マーラー : 交響曲 第2番 ハ短調 「復活」

デイヴィッド・ジンマン/チューリヒ・トーンハレ管弦楽団
ユリアーネ・バンゼ(ソプラノ)
アンナ・ラーション(アルト)
スイス室内合唱団

RCA RED SEAL/82876871572




独特のテンションで... ジンマンによる新たなマーラー像、3番。

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「復活」に続いて、3番も聴き直してしまうのだけれど... 「復活」と違って、よりマーラーらしさが現れ始める3番。なればこそ、よりジンマン+チューリヒ・トーンハレ管のマーラーへのスタンスが活きてくる?1楽章のマッシヴで、近代音楽への一歩を感じさせるシンフォニックさ、その後でのおとぎ話のようなファンタジックさ、そして、ロマンティシズムにこれ以上なく溺れ浸る終楽章... とにかく長大で、それでいて、様々なテイストが込められている、一筋縄ではいかない交響曲(とはいえ、晩年になればなるほど、もっと凄いことになるわけだけれど... )。で、その一筋縄ではいかないあたりを、特に意識することなく、淡々と奏でるジンマン+チューリヒ・トーンハレ管。まず、それが可能であるという彼らの処理能力の凄さに恐れ入る。
マーラーならではの複雑に綾なす音楽の流れを、一度、全て、解いてしまって。1音、1音を、極めてニュートラルに響かせ、面喰うほどナチュラルに編み直す。すると、長大だった交響曲が、まったく澱むことなくサラサラと流れ、あっという間に全曲を聴き終えてしまうことに... 特に、やたら長くて、複雑怪奇に感じる1楽章... その複雑さが綺麗に読み解かれ、クリアに聴こえてくるおもしろさ!まるで、魔法に掛かったよう。その後は軽やかに、ファンタジックに、交響曲であることを忘れさせ... それは、肩の力が抜け切って、独特のテンションを見せるマーラー。改めて聴き直しても、ちょっとリアクションに困るような境地を見せるマーラーだ。「復活」以上に、驚かせてくれる。
ツィクルスが完結した、今、改めて振り返れば、ちょうど勢い付いてきた頃の、余裕綽々さ、確信を以って突き進むジンマンの姿が、何だか気持ち良いくらい。

MAHLER: SYMPHONIE NR. 3
TONHALLE ORCHESTER ZÜRICH ・ DAVID ZINMAN


マーラー : 交響曲 第3番 ニ短調

デイヴィッド・ジンマン/チューリヒ・トーンハレ管弦楽団
ブリギット・レンメルト(アルト)
スイス室内合唱団、スイス児童合唱団

RCA RED SEAL/88697129182




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