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冬の音楽。 [selection]

12月に入り、やっぱり冷え込んで参りました。
寒い寒いと言いながらも、それは、冬、本来の姿であって、再びの電力不足は心配だけれど、暖冬でぼんやりした冬よりも、冬らしい冬の方が、いいような気がする。そんな冬があってこそ、四季も締まるような気がするし... 何より、冬は嫌いではない... 寒さが織り成す情景には、他の季節にはない味わいがあるように思う。クリアな空、だからこそ映える夕焼け、いつもより多い星の数。キーンと冷えた空気、その中で白くなる息、耳元でビュービューと騒ぎ立てる風。なかなか抜け出せない朝の布団の温もり、こたつでのまどろみ、鍋から上る湯気、湯船に落ちてくる滴。何気ない瞬間に、ドラマティックな状態が濃縮されているのが冬?最も抑制的な季節こそ、実はポエジーが隠されていて、どこかファンタジックな気がする... そんな冬を楽しむアルバム...
秋に聴きたい10タイトル。に続く、冬に聴きたい10タイトル。を、セレクション。秋は、まさに「クラシック」なセレクションだったけれど、冬は、そんな「クラシック」からは少し距離を置いて、多少、マニアックに、サウンドの中に「冬」を見出す音楽と、寒い冬にぽっと温かな音楽を集めてみる。

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最初の一音からクール... バッケが弾く、田中カレンのピアノ作品を集めたアルバム"Crystalline"。それは、あらゆるものが凍りついてしまった厳寒の景色の美しさだろうか?澄み切った響きが生み出す輝きは、まさにクリスタル。冬の美しさが結晶となった音楽のようにも思えてくる。そんな音楽を捉えるバッケのタッチがクリアで、印象的で... ノルウェーのピアニストが弾くと、冬のイメージはより増すのか?それから、オルランド・コンソートによる現代に中世を読み込んだアルバム"Scattered Rhymes"も、冬のイメージだろうか... 始まりのオリーガンによる「散乱する韻」の、透明感に溢れるコーラスは、田中カレン作品にも通じる感覚があって、クール。そのクールさが、暖房でぼーぉっとなった頭には心地良かったり。が、続くマショーのノートルダム・ミサの、ずっしりと重みを感じさせる中世のサウンドは、冬のディープさを響かせるようで... そこはかとなしに迫って来る...
さて、クラシックで「冬」となると、シューベルトの『冬の旅』を忘れるわけにはいかない。で、ここで選ぶのは、パドモアの『冬の旅』。パドモアの澄んだ声が、名作に新たな感覚を見出し。ロマン主義の時代の、どこか絵画的な勿体ぶった冬の情景は剥がれ落ちて、リアルな冬の情景が目の前に広がるよう。この感覚が、どこか心地良い。寒空の下の失恋旅行も、パドモアならば、スタイリッシュですらあって、冬の何気ない表情を切り取って、印象的。一方で、冬の厳しさを極めるのが、ヒリアー+シアター・オブ・ヴォイセズが歌う、ラングの『マッチ売りの少女の受難曲』。冬の悲しい物語を、シンプルなサウンドで綴るその音楽は、少女を包む凍てつく寒さと、その寂しげな表情を切々と描き出して、心に突き刺さるよう... 淡々と歌われながらもそのインパクトは大きく、また厳しさの中にこそ輝きはこぼれ、忘れ難い独特な世界を聴かせてくれる。
厳しい音楽... で、冬のイメージが思い浮かぶのは、バッハのシャコンヌかなと... ということで、庄司紗矢香が弾く、レーガーとバッハの無伴奏ヴァイオリン作品集を選んでみる。無伴奏ヴァイオリンのストイックな響き、さらにストイックに音楽と向き合う庄司紗矢香の演奏と、だだならなさに充ちたアルバム。そして、そのサウンドを聴いていると、吹雪の中をただ黙々と歩いているような、そんな感覚に。厳しい音楽... 峻厳な演奏に、畏怖すら感じて... 最後のシャコンヌへと至る道程に、厳し冬の自然を見る思い。

そろそろ、冷えて来た?ので、このあたりで温もりを感じる音楽を...
まずは、キュイエがヴァージナルとチェンバロで弾く、イギリス・ルネサンスの最後の頃、バードらによる鍵盤楽器のための作品集"Pescodd Time"。そこで鳴らされるヴァージナルの響きが、とにかく印象的... チェンバロとは一味違う温もりを感じさせるやさしげな響きに、ただならず惹かれてしまう。また、バードらの古風でどこか懐かしい音楽にも温もりを感じ、何か、暖炉の火を見つめるような、穏やかな心地にしてくれる。さて、楽器が響かせる「温もり」という点では、ピリオドのピアノもまたいい味を醸し出す。そこで聴くのが、シュタイアーがシューマンを弾く"Hommage à BACH"。シューマンにして、バッハ... という凝った構成でありながらも、1837年製、エラールのピアノのアンティークなトーンと、こどものための作品で見せるシューマンの優しげな眼差しが、得も言えない温もりを生み出していて、どこか夢見心地。で、トロイメライ(夢)なんて、まさに!
そして、おやすみの前に読んでもらった童話の続きを、夢の中で見るような、そんな音楽... ヘレヴェッヘ+シャンゼリゼ管によるマーラーの4番の交響曲。彼らが繰り広げる演奏からは、まるで魔法にでも掛かったようにメルヘンが溢れる!鈴の音に導かれて始まる1楽章は、雪が降り積もった森の中を、そりで軽やかに滑ってゆくよう!夜、独り、このアルバムを掛ければ、そのまま、こどもの頃の夢の中へとトリップできそう。ゴブディッチ+キエフ室内合唱団が歌うシルヴェストロフの教会音楽集は、夢を越えて、天国へとトリップできそう?というより、その歌声は天国から響いてくるような、不思議なトーンで... 妙に緩く、ぼやけていて、そこから、得も言えぬ温かなサウンドを紡ぎ出す。それは、冬の寒さを忘れさせてくれるようなファンタジックな温かさで...
最後は、スティレ・アンティコによる、イギリス、テューダー朝で歌われた夕べの祈りの聖歌集"Music for Compline"。スティレ・アンティコの非の打ちどころのない美しいアンサンブルと、ルネサンスのポリフォニーのやわらかな響き... 夕べの祈りの一日を終えた安堵感のようなものが、やさしさと温もりとなって音楽に表れ、そのあたりが、この寒い冬に聴けば、より際立つようでもあり... いや、世界経済は危機に瀕し、世界情勢は混沌としてきて、国内に目を向けても、やはり、なかなか展望が見えない... 今や、まさに冬。そんな冬に、温かな光を灯してくれる"Music for Compline"。春の訪れを願い、祈りを込めて選んでみる。




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