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ロマンティック、リセット。 [2011]

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とうとう11月が終わる... そして、2011年もあと一ヶ月...
で、例の如く、師も走らされる「師走」感に苛まれることになるわけだ。年末へ向けて、加速度ワルツじゃないけれど、訳も分からず忙しなく動くはめに... まったく、大晦日/正月という区切りを設けなかったならば、ワルツはもっとゆったりと踊ることができるだろうに... なんて、毎年、同じようなことを書いているよなぁ。という自身にも、ちょっと嫌気。今年は、忙しない気分に引き摺られず、きちっと大晦日/正月を迎えられるよう、スピード感を以ってひとつひとつの事柄を片づけてゆかねばなと、思いを新たに、12月を迎える!そこで、リセットの意味も込めて、クラシックど真ん中、19世紀、ドイツ・ロマン派の交響曲を聴いて、シャキっとしてみる。
ドイツ・ピリオド界の異才、トマス・ヘンゲルブロックと、彼が、今年、首席指揮者に就任したばかりのNDR交響楽団による、メンデルスゾーンの1番の交響曲と、シューマンの4番の交響曲、初稿(SONY CLASSICAL/88697940022)を聴く。

バルタザール・ノイマン合唱団、バルタザール・ノイマン・アンサンブルを率いるドイツ・ピリオド界の異才、トマス・ヘンゲルブロック... 他とは一味違う視点で、音楽史の興味深い場面を巧みに切り取ってくる彼らのアルバムは、どれも新鮮な体験をもたらしてくれて、これまで随分と楽しませてくれた。一方で、ドイツ・カンマーフィルの初代芸術監督(1995-99)でもあり、モダンとピリオドによるハイブリット・オーケストラの新たな地平を切り拓いたひとりでもある。そして、ヘンゲルブロックのキャリアでおもしろいのが、ウィーン・フォルクスオーパーの音楽監督(2000-03)も務めたこと(確か、サントリーホールのジルヴェスター・コンサートになんかも来日しちゃっていたような気がするのだけれど... )。ピリオドとしての先鋭的な姿勢から、モダン・オーケストラでの指揮もこなし、オペレッタまで... そのフレキシブルさと振れ幅の大きさに、異才っぷりを感じてしまう。
で、そのヘンゲルブロックを首席指揮者に招いたNDR響... 日本においてはヴァントのオーケストラとしてお馴染みの存在だったわけだが、そこにヘンゲルブロック?!このニュースを初めて耳にした時は、いろいろな意味で衝撃を受ける。が、NDR響のこれまでを振り返れば、そのヴァント(1982-91)の後任に、イギリスのピリオド・マスター、ガーディナー(1991-94)を選んだオーケストラであって... 伝統も革新も、意外と軽やかに超越できるオーケストラだったか... というより、ゼロ年代を経た今となっては、"ピリオド"にいちいちリアクションをすること自体、時代錯誤であって... もはや、異才、ヘンゲルブロックが、伝統のサウンド、NDR響を率いることに、特筆すべきことは無いのだろう。その就任を祝うアルバムが、メンデルスゾーンとシューマンの交響曲であるという、まったくスタンダードなあたりが、そのことを強く物語っているのかもしれない。が、メンデルスゾーンは15歳で書いた最初の本格的な交響曲、1番で、シューマンは4番の交響曲の初稿... ヘンゲルブロックらしいと言うべきか、ひと癖あるチョイス。そう安易なものは作って来ない... 何より、聴かせてくれる、その演奏!
ピリオド仕込みなればこそのエッジの効きつつのクリアさの中に、ドイツ伝統の匂い立つようなサウンドが流れ出す... ヘンゲルブロックのセンスと、NDR響の伝統がこうも絶妙に響き合うものかと驚かされる。モダンとピリオドのハイブリットというゼロ年代を席巻したスタイルを越えた、新たな体制の新たなサウンドがそこに紡がれている。そうして聴く、ロマン主義がまだまだ若々しかった頃の音楽のフレッシュさ!1曲目、メンデルスゾーンの1番の交響曲(track.1-4)、その始まりの1楽章。いや、メンデルスゾーン少年は勢い余って、1楽章にしてすでに終楽章のようなテンションで音楽を展開してしまうのだけれど、ヘンゲルブロックはそのはち切れんばかりの勢いを巧みに逃がし、軽やかにリズムを弾ませ、ワクワクするような幕開けを演出する。続く、2楽章、3楽章では、まだまだ古典派の影響下にあるメンデルスゾーン少年の、しっかりとした音楽的素地をきっちり聴かせ。終楽章では、再びテンションは高まり、ところどころ現れるキャッチーさに、ロマン主義の早春を見る思い... 気を衒うことなく、メンデルスゾーン少年、15歳のありのままにして、天才っぷりを、堂々と、洗練されたものとして響かせる。一方、シューマンの4番の交響曲(track.6-9)では、その成熟し始めたロマン主義を丁寧に追い、メンデルスゾーン少年では得難い充実感を響かせ、時間の経過をそこはかとなく聴かせる。それからおもしろいのが、3楽章(track.8)の冒頭、聴き慣れないファンファーレ... 初稿は、今となってはそう珍しいものでもないけれど、こんなのあったっけか?と首を傾げつつ、その唐突さに妙なユーモアが滲み、初稿の粗削りさにキッチュさを見出すようで、いつもとはちょっと違う感覚でこの交響曲と向き合う。またそうしたあたりが新鮮で、刺激的。
軽やかさと豊潤さが同居するヘンゲルブロック+NDR響の新たなサウンド... ただならず魅了されてしまう。そこから繰り出される溌剌としたドイツ・ロマン派の交響曲!何だか、元気になれてしまう。そして、久々に聴くロマンティックは、良いリセットとなる...

MENDELSSOHN BARTHOLDY Symphony No. 1 ・ SCHUMANN Symphony No. 4
THOMAS HENGELBROCK ・ NDR SINFONIEORCHESTER


メンデルスゾーン : 交響曲 第1番 ハ短調 Op.11
メンデルスゾーン : スケルツォ 弦楽八重奏曲 変ホ長調 Op.20 から 〔オーケストラ版〕
シューマン : 交響曲 第4番 ニ短調 Op.120 〔初稿〕

トマス・ヘンゲルブロック/NDR交響楽団

SONY CLASSICAL/88697940022




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