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優雅なロココのオーケストラ。の、センチメンタル。 [2011]

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9月に入り、季節もどことなしに秋めくのか...
まだまだ夏の陽気、高い太陽の下、蝉は元気に鳴いている。が、陽が落ちる頃にはコオロギも鳴き始めて。ふと振り返ると、猛暑と節電のせめぎ合いの日々からは、随分と経ってしまったようにも感じられる。そうした時の経つ感覚が、秋かな?なんて思いつつ、秋へのプレリュードとして聴く、ラモー。
ジョルディ・サヴァールと、彼が率いるピリオド・オーケストラ、ル・コンセール・ナシオン... 昨年に続いて、再びルイ15世を巡るアルバム。ラモーのオペラからの組曲で綴る"L'ORCHESTRE DE LOUIS XV"(Alia Vox/AVSA 9882)。ルイ15世のオーケストラ... ルイ15世の時代の、華麗で、粋で、それでいて、そこはかとなしにセンチメンタルが漂うサウンドに、一足先に秋を見つけてみる。

"LE CONCERT SPIRITUEL - AU TEMPS DE LOUIS XV"(Alia Vox/AVSA 9877)、フランス国王、ルイ15世(在位 : 1715-74)の時代、パリの音楽シーンを牽引した伝説のオーケストラ、コンセール・スピリチュエルをフィーチャーし、多彩(コレッリに、テレマンに、ラモーと、インターナショナル!)にして、フランス好みのセンスの良さを詰め込んだアルバムに続く、サヴァール+ル・コンセール・デ・ナシオンの最新盤、"L'ORCHESTRE DE LOUIS XV"... ルイ15世のオーケストラ、つまりヴェルサイユのオーケストラを再現して、国王付き作曲家、ラモーの4つのオペラからの組曲を取り上げるのだが。コンセール・スピリチュエルをフィーチャーした時よりも、倍近い規模となったル・コンセール・デ・ナシオンが、見事な演奏を繰り広げる。そして、そのゴージャスな響きに、まず魅了される... これが、ヴェルサイユの、宮廷のスケール感か?!
最初の『優雅なインドの国々』組曲(disc.1, track.1-13)は、"LE CONCERT SPIRITUEL - AU TEMPS DE LOUIS XV"でも取り上げられており(構成曲がちょっと違う... )、聴き比べがおもしろく。そして、聴き比べてみれば、ヴェルサイユのオーケストラ(最新盤)が、パリのオーケストラ(昨年盤)に対し、格の違いを見せつけるようでもあり、その威容(さすがは、ヨーロッパ随一のヴェルサイユ宮!)に、思わずひれ伏してしまいそう。バロック期のオーケストラというと、やはり規模の小ささは否めない。が、ルイ15世のオーケストラは、バロックを脱したロココのオーケストラ(とのこと... )。古典派を目前に、すでに古典派ニ管編成という充実したオーケストラ・サウンドは、豊潤かつ鮮やか。サヴァールならではの、いつもの、どこか枯れたような渋い味わいも、ゴージャスなロココのオーケストラを前に、どこかへ行ってしまい... 意外なほど晴れやか!ラモーの音楽のポジティヴさを前面に押し出して、得も言えぬ朗らかさと大きさで、聴く者を包み込む。そのサウンドに抱かれる心地良さときたら... フランスの知性が大きく花開いたブルボン朝の爛熟期、太陽王の威圧感とは違う、最愛王、ルイ15世なればこその空気感が、何とも素敵で、やさしく。現代人にとっては、癒しにすらなり得るのかもしれない。
そして、ラモーの4つのオペラからの組曲... ラモーにとっての2作目のオペラ、『優雅なインドの国々』(1739)に始まって。フランス・オペラで揺るぎない地位を獲得し、国王付き作曲家(1745- )の称号も手に入れた絶頂期、『ナイス』(1748)と『ゾロアストル』(1749)。その後、ブフォン論争(1752- )でルソーらの槍玉に挙げられつつも、フランスの巨匠として君臨し、その遺作となった『レ・ボレアド』(1764)まで、ラモーのオペラ創作を、2枚組で、じっくり追う構成。ラモーのオーケストレーションが、次第に規模を増し、深まり、『レ・ボレアド』(disc.2, track.10-17)に至っては、どこかロマンティックにすら響き出す展開が、なかなか興味深い。何より、ラモーの音楽のひらめきと、キャッチーさ、リュリ以来のトラジェディ・リリク(音楽悲劇)の伝統を受け継ぎながらも、そこはかとなくポップな様は、時代を超越したヴィヴィットなセンスを持ち合わせており、同世代のバロックの巨匠たちとは一線を画すものがある。そこに、ラモーならではのセンチメンタルが、スパイスのように効いていて。これに、ヤラレてしまう。
オペラを彩る音楽だけに、表情豊か... なおかつエキゾティック(『優雅なインドの国々』は、非ヨーロッパのカタログ的な作品であり、『ゾロアストル』、『レ・ボレアド』の舞台はバクトリア≒アフガニスタンだったりする... )が好きなフランス趣味もあって、その音楽は本当に多彩。また、バレエ=ダンスのための音楽が中心なだけに、リズミカルで軽やか。次から次へと楽しみをもたらしてくれるのだけれど、ちょっとした瞬間、切なくなるような音を挿み込み、終始、どこかでセンチメンタルが漂う。物憂げなロココ... ラモーならではを味わいつつ、そのセンチメンタルに、やがて来る、ブルボン朝の終焉を見るようでもあり。ブルボン朝の刹那的な優雅さに、黄昏の始まりが滲む。そのあたり、妙に、じんわりきてしまう。センチメンタルにさせられてしまう。ゴージャスなのに、センチメンタル... やっぱりサヴァールか... いや、このトーン、季節の変わり目に、やたら響いて来る。

L'ORCHESTRE DE LOUIS XV ・ Jean-Philippe Rameau
LE CONCERT DES NATIONS ・ JORDI SAVALL


ラモー : 『優雅なインドの国々』 組曲
ラモー : 『ナイス』 組曲
ラモー : 『ゾロアストル』 組曲
ラモー : 『ボレアド』 組曲

ジョルディ・サヴァール/ル・コンセール・デ・ナシオン

Alia Vox/AVSA 9882




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