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フランスから、ノルウェーから、 [2007]

しっとりとしたブライアーズのピアノ協奏曲... たっぷりとブライアーズ・ワールドを楽しんだわけだが、それは、「ピアノ協奏曲」っぽくなかった... ということに、不満はないのだが、ピアノ協奏曲っぽくないピアノ協奏曲を聴いて、ピアノ協奏曲っぽいピアノ協奏曲を聴きたくなった。そんな、単純な動機で...
ジャン・イヴ・ティボーデのピアノで、シャルル・デュトワの指揮、スイス・ロマンド管弦楽団の演奏による、サン・サーンスの2番と5番のピアノ協奏曲、フランクの交響的変奏曲(DECCA/475 8764)。ピアーズ・レーンのピアノで、アンドルー・リットンの指揮、ベルゲン・フィルハーモニック管弦楽団の演奏による、アルネスとシンディングのピアノ協奏曲(hyperion/CDA 67555)。2007年にリリースされた、「ピアノ協奏曲」っぽさを裏切らない、ピアノ協奏曲のアルバム、2タイトル... フランスとノルウェーのロマンティックなピアノ協奏曲を聴き直す。


サン・サーンス、そして、フランク... フランスのピアノ協奏曲を爽快に!

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ティボーデに、デュトワで、ピアノ協奏曲... となると、きちっと整えられ、美麗、極まる演奏を思い浮かべる。が、多少、盛り上がりに欠ける?そんなイメージもあったかもしれない。が、時を経て、彼らの作品との向き合い方も、それぞれ変わってきたのか、サン・サーンスとフランクを取り上げたこのアルバムの印象というのは、勢い先行のようにも感じ、荒い/粗い... ような... フランスならではのエスプリやら、粋なあたりを期待していたものだから(というのも、ステレオタイプが過ぎるか?)、少し引いた記憶がある。が、今、改めて聴き直してみると、そうでもない。いや、かなりおもしろい演奏?!と、妙に驚いてみたり...
ティボーデもしっかりベテランで、デュトワなんて大御所となって随分と時間が経つわけで、それぞれキャリアは十分過ぎるほどある。そんな経験が醸す音楽というのは、あらゆる点で余裕がある。それでいて、きちっと整えられ、美麗、極まることばかりに囚われない、音楽そのものが持つ悦びに素直に向き合った演奏というのか、まず、間違いなく演奏者たちが楽しんでいる。もちろん、手など抜かない、が、卒なく隅々まで手が行き届いてしまう余裕があり、変に力むところなく、ナチュラルに、爽快に、最後まで走り切る。
そうした中で、印象に残るのは... サン・サーンスならではの、たっぷりとエキゾティックな5番のピアノ協奏曲、「エジプト風」の、そのエジプシャンな2楽章(track.2)。異国のミステリアスさを強調するようなところはなく、さらりと聴かせて、異国の情景をスナップ感覚で捉えてしまうようであり。大時代的なオリエンタリスム(例えばサロン=官展を賑わせた大仰なイスラム世界を描いた大作絵画のような... )なんてあり得ず、活き活きとした音楽を生み出し、旅がもたらす刺激を追体験させてくれるよう。
それから、フランクの交響的変奏曲(track.4)。フランクというと、地味なイメージが付き纏うわけだが、実は、ダンディズムを漂わせて、その音楽、密やかにかなりクールだと思うのだけれど... それを再確認させてくれるティボーデのタッチ。「変奏」という、多少、面倒(?)な作業に、どこかやさぐれたような表情で取り組むのか、そのネガティヴ感がいい味を醸していて。で、そのネガティヴ感も、変奏を重ねる内に、変化してみたり... 時に、メランコリックに、あるいは、気取ってみたり、縦横無尽。いや、格好つけないところがカッコいい!また、デュトワ+スイス・ロマンド管の演奏は、切れ味鋭く、なおかつ華麗。作品の魅力を引き立ててくれて、ティボーデとも相性は抜群。さすが、チーム・フランス語圏!だからこそ、フランス臭くならず、フランスの新鮮なサウンドを、「余裕」で楽しませてくれる。サン・サーンスが、フランクが、思い掛けなく爽快なのがおもしろい!

SAINT-SAËNS: PIANO CONCERTOS 2 & 5
THIBAUDET/SUISSE ROMANDE/DUTOIT


サン・サーンス : ピアノ協奏曲 第5番 ヘ長調 Op.103 「エジプト風」
フランク : 交響的変奏曲
サン・サーンス : ピアノ協奏曲 第2番 ト短調 Op.22

ジャン・イヴ・ティボーデ(ピアノ)
シャルル・デュトワ/スイス・ロマンド管弦楽団

DECCA/475 8764




アルネス、そして、シンディング... ノルウェーのピアノ協奏曲を壮大に!

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hyperion名物、ロマンティック・ピアノ・コンチェルト・シリーズ。その第42集は、ノルウェーのロマンティシズムにスポットを当てる。アイヴィン・アルネス(1872-1932)と、クリスティアン・シンディング(1856-1941)の、珍しくも極めて興味深いピアノ協奏曲。ま、徹底して重箱の隅をつつき、隠れた名曲の発掘に余念のないこのシリーズだけに、グリーグではないノルウェーのピアノ協奏曲といっても、そう驚くべきことではないのかもしれないが、このシリーズにとって、北欧の"ロマンティック・ピアノ・コンチェルト"は初めての登場(アルネスのピアノ協奏曲は世界初録音... )ということで、リリース当時、注目を集めたわけだ。で、物珍しさに乗せられて、手に取ったアルバムだったのだけれど、北欧の"ロマンティック・ピアノ・コンチェルト"に思い掛けなく魅了されることに...
まずは、1曲目、アルネスのピアノ協奏曲。とにかく、冒頭からキャッチーで... なおかつ氷山や、フィヨルドを思わせる壮大さに、そこを吹き抜ける風まで感じられそうな爽快感が心地良く。ロマンティック・ピアノ・コンチェルト・シリーズ、またいい曲を発掘してくれました。と、嬉しくなる。そして、気になるのが1楽章(track.1)、2楽章(track.2)で用いられるテーマが、忘れられず... というより、どこかで聴いた気がしてならない... 何かの映画だろうか?CMだろうか?それともデジャヴュ?それだけ強いインパクトを残し得る、鮮烈かつキャッチーなメロディで。いや、これは、絶対にウケるはず!このアルバムが世界初録音だなんて、ちょっと信じられないくらい。終楽章(track.3)は、一転、軽やかなワルツで始まり、これがまた魅力的で。やがてロマンティックさと華やかさが相俟って、"ロマンティック・ピアノ・コンチェルト"ならではのヴィルトゥオージティも輝き、聴き応えは十分。
そして、2曲目、シンディングのピアノ協奏曲。ワーグナー調のロマンティシズムに彩られて、壮大に展開されるピアノ協奏曲は、ドイツに学び、その影響下にあったシンディングを物語る作品で。そのドイツ仕込みの充実感が見事。ロマンティックなあたりも、ヤリ過ぎることなく、安っぽくならず、華麗なヴィルトゥオージティも、超絶技巧に走るでもなく、品位あるロマンティシズムとヴィルトゥオージティが、好印象。豊かな響きの一方で、端正な佇まいを生んでいて、興味深い。何より、アルネスのヴィヴィットさ、キャッチーさとは好対照で、やはり聴き応えは十分。ノルウェーのロマンティシズムも、また多彩だ。
そんな、アルネスとシンディングのピアノ協奏曲を弾きこなすレーンのピアノも申し分なく、リットン+ベルゲン・フィルの演奏も、シンフォニックに、ノルウェーの作曲家たちのそれぞれの壮大さをきちっと響かせて、普段、聴く機会の少ないノルウェーのロマンティシズムを楽しませてくれる

ALNÆS ・ SINDING PIANO CONCERTO
PIERS LANE ・ BERGEN PHILHARMONIC ORCHESTRA / ANDREW LITTON


アルネス : ピアノ協奏曲 ニ長調 Op.27
シンディング : ピアノ協奏曲 変ニ長調 Op.6

ピアーズ・レーン(ピアノ)
アンドルー・リットン/ベルゲン・フィルハーモニック管弦楽団

hyperion/CDA 67555





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