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cloudy days, misty mode. [2011]

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グレーの空、降り出す雨... そんな風景の中で聴く、アンビエントなサウンド...
オッテの『響きの書』(NAXOS/8.572444)で、ヨーロッパのミニマリスムを瑞々しく聴かせてくれたラルフ・ファン・ラート(ピアノ)が、今度はギャヴィン・ブライアーズのアンビエントなサウンドをしっとりと聴かせてくれるアルバム。ブライヤーズがファン・ラートに書いた2010年の作品、ピアノ協奏曲「ソルウェイ運河」(NAXOS/8.572570)を聴くのだけれど。ブライアーズのアンビエントなサウンドは、まさに今の気分にぴったりな1枚か... 憂鬱な梅雨空も、そのメランコリックな表情こそを楽しめるものに変えてしまうような響きが広がる1枚。そして、ふぅっ、と、一息つかせてくれる1枚。「癒し系」なんて言葉の安直さが、どうも好きになれないけれど、このアンビエントさは抗し難く癒される... いや、今こそ癒しは必要とされるか...

まずは、ファン・ラートのソロで2作品。その1曲目、ヘンデルの晩課のあとで。なのだが、ヘンデルにヴェスプロなんてあったか?イタリア時代の膨大な教会音楽に紛れているのか?と、考えてしまう。いや、どうも、フィクションの世界に書かれているヘンデルの架空のヴェスプロ(レイモン・ルーセルの小説『アフリカの印象』に登場とのこと... )らしく。そのあたりから謎めいていて、どこか雰囲気たっぷりで、そこはかとなくドラマティックなブライアーズ・ワールド。2曲目、ランブル・オン・コルトナ(track.2)は、コルトナ写本から、いくつかのラウダを主題を用いた作品のようだが。中世イタリアの大地に根差したラウダの素朴さは、すっかりブライアーズのアンビエントさに取り込まれてしまっている。が、それでも、どこか中世を思わせるのもブライアーズ・ワールドであって。アンビエントなサウンドがただ流れていくのではない、静かに沸き上がるようにエモーショナルで、どことなしにドラマ性を秘めたその音楽は、静かな映画を見るような感覚にさせられ、やっぱり魅力的。
そして、ピアノ協奏曲「ソルウェイ運河」(track.3)。ブゾーニのコンチェルト以来?男声コーラスが付くという異形のコンチェルト... というあたりが、まず興味を引く。ブライアーズによる「ピアノ協奏曲」だけに、やはり、一筋縄ではいかない。いや、コンチェルトと言えるような古典的な姿はそこには無い。ピアニストの華麗なヴィルトゥオージティも、オーケストラとのスリリングなやり取りも無く、まさに運河の風景を静かに捉えるように、淡々と描かれる。ピアノ付きの交響詩?交響的印象?交響的素描?そこに、男声コーラスの歌が幻想的に浮かび上がり。どこか、まどろみの中を船に揺られて、ゆっくり旅するような。流れてゆく風景は輪郭がはっきりとせず、また、同じような風景が延々と続くようでもあり。いや、同じ景色の中を永遠に進み続けるような、不思議さも漂う。
格調あるミニマル調で、アンビエントに広がるいつもの美しさを感じながら、知らず知らず違う次元へと迷い込んでしまったような心許無さを味わうブライアーズ・ワールド。その独特な音楽を、瑞々しく、丁寧に響かせてゆくファン・ラート。その、しっとりとした一音一音が、まさに今の季節の気分を映すようで。憂鬱な梅雨空も、このアルバムを聴きながら見上げれば、また違って見えてくるのか?「運河」というばかりでなく、どことなしに水を意識させるアンビエントさ... そのアンビエントさに浸る安堵感のようなものもあり、メランコリーを受け入れ、メランコリーに沈んでみるのも、また、いいのかな... なんて思えて来る。そして、1枚、聴き終われば、ひとつ小説を読み終えたような、心地良い読後感?そんな感覚を見つける。で、ちょっと、軽くなったかな。
憂鬱な梅雨空も、向き合い方次第。か。

BRYARS: Piano Concerto (The Solway Canal)

ブライアーズ : ヘンデルの晩課のあとで
ブライアーズ : ランブル・オン・コルトナ
ブライアーズ : ピアノ協奏曲 「ソルウェイ運河」 *

ラルフ・ファン・ラート(ピアノ)
オットー・タウスク/オランダ放送室内フィルハーモニック *
コーラス : カペラ・アムステルダム(男声) *

NAXOS/8.572570




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