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現代の音楽、現代っ子の音楽。 [2011]

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今、現代音楽が、とてもおもしろく感じる。
なんて書くと、エリート主義を気取った嫌味なヤツ... とか、なるのだろうか?いや、妙なモノばかりを聴いている変な人か?"ゲンダイオンガク"のイメージは、どうして、こう、硬直してしまうのだろう?絶対に一般的になり得ないこの壁は何?!と、いつももどかしい。いや、一般的になるなんて無理かもしれない。それでも、あともう少し、より広く聴かれてもいいはず... 今、現代音楽が、とてもおもしろく感じる。からこそ...
21世紀となり、ますます多様になる現代社会。そこで生まれる現代の音楽もまた、ますます多様になっていて、安易に「難解」の一言で括ることのできない、刺激的な音楽がひしめいている。そのひとつひとつが、本当におもしろかったりする。ということで、そんな現代の音楽から... 飄々としたテイストが、何とも言えず魅力的な、フランス現代音楽界の異才、レジス・カンポ(b.1968)の、弦楽四重奏のための作品を集めたアルバム、"Ombra Felice"(SIGNATURE/SIG 11070)。新ウィーン楽派のアルバムを聴いたばかりの、近現代音楽のスペシャリスト集団、ディオティマ四重奏団の演奏で聴く。

時折、ギャグ?そんな軽妙さも見せるカンポ・ワールド。初めてその作品に触れたのは、ジャン・クリストフ・ルヴェルが弾くオルガンのアルバム、"Passions"(æon/AECD 0420)。ルネサンスからバロックに掛けての壮麗なオルガン作品に、フランスの現代の作曲家による多種多様なオルガン作品を挿む意欲的な1枚。そうした中で、妙にとぼけたトーンで、オルガンの壮麗さを軽やかに裏切ってくれたカンポの作品が特に印象に残る。以来、気になる現代の作曲家のひとりなのだが... この作曲家は、「現代」の作曲家というより、「現代っ子」の作曲家と紹介した方がしっくり来るような気がする。そして、そういう現代との向き合い方に、大いに共感させられる。
1曲目、1番の弦楽四重奏曲「不吉な時間」の、勢いのあるキャッチーな出だしは、ストイックなイメージが付きまとう弦楽四重奏の渋さなんて皆無。この疾走感は、クラシックの気難しさや、もったいぶった態度とは違う、現代のリアルな感覚がそのまま投影されているようで、刺激的。そして、音楽は、ジャケットにある夜の風景を映し出すかのような、心地良くノワールな気分に移り、それがまたクール!けして、分かり易いばかりじゃない、そのバランス感覚がいい具合で、現代音楽としての手応えも十分。
そして、夢の中へと誘われるような、2曲目、3番の弦楽四重奏曲「オンブラ・フェリーチェ」(track.2, 3)。モーツァルトのコンサート・アリア(K.255)から、そのタイトルを借りて来たようだが、モーツァルトのモチーフは使わず... それは、フランス版、モートン・フェルドマン?とった雰囲気。ゆったりとした中に、ヴィヴィットな感覚が込められ、「現代っ子」なテイストとは一味違う、瞑想的で、成熟したサウンドが広がる。が、3曲目、2番の弦楽四重奏曲(track.4)では、一転、『魔笛』のフレーズがひょいと顔を出し(ここで、モーツァルト!)、おどけて見せて、カンポ・ワールドが還って来る。軽妙だけれど、何ともとぼけているのだけれど、どこか影を帯びていて(オンブラ・フェリーチェ=幸せの影... というタイトルのイメージのせい?)、奇妙な夢からなかなか覚めることができないような、ユルさと緊迫感がない交ぜになって惹き込まれる。このあたりは、ディオティマ四重奏団の器用さと、淡々と作品を捉える覚めた感覚が活きて。多用されるピチカートの、その弾ける様は、心地良く。ちょこまかと俊敏に動き回る作品の魅力をより引き立てる。
そして、最後、"The Life & Soul of His Imagined Landscape"(track.5)は、ちょっと、映画のタイトルのようだけれど、それがまた映画音楽のような風合いで... 美しいサウンドが、次第にフェード・アウトしていくのが印象的。それは、映画のエンドロールを見送るようでもあり。このアルバム自体が、何か、映画のような、そういうドラマ性を孕んでいるようにも思え... ひとつひとつのレジス・カンポ作品を楽しむことに留まらない、ひとつのアルバムとしての魅力を強く感じる1枚だった。

Ombra Felice RÉGIS CAMPO / QUATUOR DIOTIMA

カンポ : 弦楽四重奏曲 第1番 「不吉な時間」
カンポ : 弦楽四重奏曲 第3番 「オンブラ・フェリーチェ」
カンポ : 弦楽四重奏曲 第2番
カンポ : The Life & Soul of His Imagined Landscape

ディオティマ四重奏団
ユン・ペン・ツァオ(ヴァイオリン)
ナーマン・スルチン(ヴァイオリン)
フランク・シュヴァリエ(ヴィオラ)
ピエール・モルレ(チェロ)

SIGNATURE/SIG 11070




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