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二〇一一、始まりのワルツ。 [2011]

さて、ひと月早く、新年度を迎える音のタイル張り舗道。であります。
本日を以って、2011年リリースのアルバムを取り上げてゆくことに... のつもりでありましたが、本年はそのあたり、ちょっとユルめに。厳格に線引きせず、聴き逃したアルバムなんかも取り上げて、ぼんやり近頃のクラシックは?と、見ていけたらいいなと。ということで、2011年を始めるならば、このアルバムから...
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正月のコンサートを2ヶ月遅れで... というのも、ちょっと興が削がれるわけだけれど、クラシック、2011年の始まりを告げる、ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートのアルバム(DECCA/478 2601)を聴いてみる。ま、例年恒例のもの... 今さら聴くほどのものか?と、完全にスルーする気でいた昨年末。だったのだが、指揮者にフランツ・ヴェルザー・メスト(!)と聞いて、俄然、興味が湧いてしまう。いや、ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートに、ヴェルザー・メストなのだ!大いに若返るキャスティング!「若返る」とは言っても、ヴェルザー・メストも今年、51歳ではあるのだけれど... いや、時代は動いている!

フランツ・ヴェルザー・メスト(b.1960)は地味な人?そんな認識がクラシックの世界にはあるようだけれど、一方で、80年代後半から90年代前半に掛けて、メジャー・レーベルでやりたいことを自由にやらせてもらえるラッキーな「若手」であったように思う。鳴り物入りなイメージすらあった。また、「若手」だからこそなのか?ちょっと尖がったレパートリーを引っ張り出して来て、彼のリリースは刺激的でもあった。が、彼の才能を本当の意味で知ることになるのは、その後のチューリヒ歌劇場の音楽監督(1995-2008)としての仕事ぶりだろうか... "opernwelt"誌でのチューリヒ歌劇場の高評価は、クラシックの辺境、極東の島国にも何となく伝わって、2008年には来日公演も果たした。そして、今シーズン、ウィーン国立歌劇場の音楽監督に...
「若手」としてヴェルザー・メストを聴いて来たからか、彼が音楽の都、ウィーンの顔となり、ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートの指揮台に立つことに、感慨を覚えてしまう。世代的にそう遠くない指揮者(と言っても、一回り以上は離れているのだけれど... )が、クラシックのど真ん中に立つわけだ。古臭いクラシックではなく、我々の時代のクラシックが到来したような気すらする。クラシックなんてものは、云百年も前からの音楽をやるわけで、それは岩山の如く動かないもの... というイメージが刷り込まれている。だが、時代は動いている!そんな実感と共感を、このマエストロの活躍が与えてくれるのかもしれない。
で、本題。そのニューイヤー・コンサートだが... ヴェルザー・メストは、これまで取り上げられなかった作品を6曲も盛り込み、全体としてお馴染みの人気作品はほとんど取り上げない、マニアック仕立て。だものだから、テレビ(生中継)を見ていた時は、取っ掛かりを見つけられず、多少、退屈に感じたのだが、CDで聴くと印象は変わる?2011年、リスト生誕200年を祝い、1番のメフィスト・ワルツ(disc.2, track.2)を取り上げるという、ニューイヤー・コンサートとしては禁手の選曲がなされて、どうウィンナ・ワルツと結び付けるかが大きな難問。だが、マニアック仕立てが、巧みにそのあたりを解決していて。リストを取り上げるということで、リストの生まれたハンガリーもフィーチャリングされて、全体に癖のあるメロディがスパイスを効かせ、メフィスト・ワルツの癖を盛り立てる。また、拍手の時間を短めに刈り込んで、次から次へと作品を聴かせるCDだからこそ、全体の流れのようなものが浮き上がり、名曲をただ並べるいつものニューイヤー・コンサートとは違うテイストがあることを知る。
そこに、ヴェルザー・メストという新たなシェフを得たウィーン・フィルの演奏が、喜びに充ちていて... 老舗ならではの斜に構えたようなイメージは薄れ、無邪気に音楽と戯れるような姿が印象に残る。メフィスト・ワルツなどは、ここぞとばかりにキレていて、さすがはウィーン・フィル!だが、ヴェルザー・メストが舵を切るウィーン・フィルのウィンナ・ワルツは、ステレオ・タイプの「ウィーン情緒」には流されない、ある意味、ドライな仕上がり。それでいて、良い意味でチープ、何気にバーレスクな気分もこぼれ、何とも新鮮で魅力的。ヘルメスベルガーのジプシーの踊り(disc.2, track.5)などは、まさに!で、いつの間にか、クラッシクというイメージの中で、必要以上に洗練されてしまったウィンナ・ワルツとはひと味違う、ダンス・ミュージックとしての魅力を取り戻すかのような感覚があるのか?ウィーン・フィルを巧くのせて、粋にスパークし、巧みな選曲で、独特なテイストを生み出すヴェルザー・メスト。ちょっと奇術師的で、幻惑され... メフィストを持ってきたあたりが象徴的... となると、美しき青きドナウ(disc.2, track.10)なんてのは、おまけだったり?
いや、予想外に、ヴェルザー・メスト・ショウが展開される2011年のウィーン・フィル、ニューイヤー・コンサートだった。となれば、ウィーンの新体制、これからが楽しみ!

NEW YEAR'S CONCERT 2011
WIENER PHILHARMONIKER/FRANZ WELSER-MÖST


ヨハン・シュトラウス2世 : 騎士行進曲 Op.428
ヨハン・シュトラウス2世 : ワルツ 「ドナウ川のおとめ」 Op.427
ヨハン・シュトラウス2世 : アマゾン・ポルカ Op.9
ヨハン・シュトラウス2世 : デビュー・カドリーユ Op.2
ランナー : ワルツ 「シェーンブルンの人々」 Op.200
ヨハン・シュトラウス2世 : ポルカ 「勇敢に前進!」 Op.432
ヨハン・シュトラウス2世 : 騎士パズマンのチャルダーシュ Op.441
ヨハン・シュトラウス2世 : ワルツ 「別れの叫び」 Op.179
ヨハン・シュトラウス1世 : 熱狂的なギャロップ Op.114 〔リストのモチーフによる〕
リスト : 村の居酒屋での踊り(メフィスト・ワルツ 第1番)
ヨーゼフ・シュトラウス : ポルカ・マズルカ 「遠方から」 Op.270
ヨハン・シュトラウス2世 : スペイン行進曲 Op.433
ヨーゼフ・ヘルメスベルガー2世 : バレエ 『イベリアの真珠』 より ジプシーの踊り
ヨハン・シュトラウス1世 : カチューチャ・ギャロップ Op.97
ヨーゼフ・シュトラウス : ワルツ 「わが人生は愛と喜び」 Op.263
エドゥアルト・シュトラウス : ポルカ 「ブレーキもかけずに」 Op.112
ヨハン・シュトラウス2世 : ワルツ 「美しく青きドナウ」 Op.314
ヨハン・シュトラウス1世 : ラデツキー行進曲 Op.228

フランツ・ヴェルザー・メスト/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

DECCA/478 2601




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