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うつろいゆくものはなべてこれ比喩なるものにすぎず、 [2010]

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さて、2010年分のリリースを取り上げるのは、今回が最後...
タローの弾くショパン(Virgin CLASSICS/6855652)でスタートした音のタイル張り舗道。1年間、多少、フラフラしつつ、突っ走って参りました。そして、反省やら、感慨やら... で、これからどうしようかぁ... 何てことも考えつつの2010年分の締めは、マーラー。リリースからは随分と時間が経ってしまったのだけれど、デイヴィッド・ジンマンと彼が率いるチューリヒ・トーンハレ管弦楽団によるマーラーのツィクルスから、昨春にリリースされていた8番、「千人の交響曲」(RCA RED SEAL/88697579262)を聴く。
やっぱり2010年は生誕150年、マーラーで締め括る... そして2011年、没後100年へと繋がるマーラーでもあって... 千人という大作で、花々しく一区切り!

どうも、「千人の交響曲」が苦手... というのは、あのど派手な出だし... いきなりのフィナーレのような盛り上がりに、どうも抵抗感が。だからこそ、新鮮なマーラー像を打ち出してきたジンマン+チューリヒ・トーンハレ管ならば、何か新しい感覚を得られるのでは?と、大きな期待を寄せていたのだけれど。何しろ「千人... 」なんて大層なスケールの交響曲だけに、大きくイメージを刷新することなど、編曲でもしない限り無理なわけで、過大な期待を抱いていたことを反省する。やはり、他の番号のマーラーの交響曲とは違って、8番、「千人の交響曲」というのは、好きになれないなぁ。と、変に苦笑いしつつ、時間は経ち...
改めて聴き直す、ジンマン+チューリヒ・トーンハレ管の「千人の交響曲」。マキシマム過ぎる第1部(disc.1)をスルーして、第2部(disc.2)から聴き始めると、思いの外、その音楽に自然と身を任せることができてしまう。そんな「千人の交響曲」を思うにつけ、長大な2部構成というのは、正解なのだろうか?という疑問が湧いてしまうのだが、それが「千人の交響曲」であって。また、ジンマンは、そうしたあたりを強調してもいるのだろう... ど派手な第1部と、マーラーらしい大河の流れを感じさせるような第2部を、くっきりと描き分けて、そのコントラストを聴かせる。ジンマン流に、明晰に、いろいろ整理してから、ひとつの交響曲としてまとめ上げるというよりは、作品そのものが持つ性質に身を預けて、無理をしない... 方の力を抜いて臨む、ジンマン+チューリヒ・トーンハレ管のマーラーのツィクルスが辿り着いた境地のようなものを、「千人の交響曲」に見出す気がする。
そうして、より魅力的に響くのは、やはり第2部。マーラーらしい大河の流れを感じさせる音楽は、曖昧模糊とした始まりから、やがてうねりを生み出して、大きな感動の内に閉じられる。その雄大で表情豊かな流れに素直に乗るジンマン+チューリヒ・トーンハレ管の演奏は、当然、ナチュラルであり、そのナチュラルさから、マーラーならではの深い色合いを引き出し。酸いも甘いも知る大河というのか、終わりに近づけば近づくほど切なくなる。輝かしさばかりでない、遣る瀬無さが漂い、スコアの行間に潜むマーラーの境地まで響かせてしまうような。分かり易く明晰なアプローチ... というだけでは響かない、苦悩の人、マーラーなればこその音楽を、瑞々しく、共感を以って編み上げて。だからこそ、フィナーレがより鮮明に輝き、深い感慨を伴う感動が押し寄せてくる。ただならないスケールで、とにかく盛り上げる!あたり、お仕着せの感動を作り上げるようで、今一、のめり込めないでいた「千人の交響曲」だったが、ジンマンの良い意味で脱力したナチュラルさが、けしてお仕着せではなかった、マーラーが籠めた感動を解き放ち、予想外の聴き応え、充足感を与えてくれる。
やはり、9番(RCA RED SEAL/88697726902)、10番(RCA RED SEAL/88697768952)と、聴かねばならないか... そして、「大地の歌」へ... ツィクルスの完遂が楽しみに。

MAHLER: SYMPHONIE NR. 8
TONHALLE ORCHESTER ZÜRICH ・ DAVID ZINMAN


マーラー : 交響曲 第8番 変ホ長調 「千人の交響曲」

罪深き女 : メラニー・ディーナー(ソプラノ)
懺悔する女 : ユリアーネ・バンゼ(ソプラノ)
栄光の聖母 : リサ・ラーション(ソプラノ)
サマリアの女 : イヴォンヌ・ナエフ(アルト)
エジプトのマリア : ビルギット・レンメルト(アルト)
マリア崇拝の博士 : アンソニー・ディーン・グリフィー(テノール)
法悦の教父 : シュテファン・パウエル(バリトン)
瞑想する教父 : アスカー・アブドラザコフ(バス)
チューリヒ児童合唱団、カルトブルン児童合唱団
スイス室内合唱団、WDR合唱団
デイヴィッド・ジンマン/チューリヒ・トーンハレ管弦楽団

RCA RED SEAL/88697579262

さて、ここで一区切り。
次回は2010年の冬に聴いたアルバムを振り返り...
続いて、2010年を振り返ります。




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