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バッハ―アーベル・コンサートを訪ねて... [2010]

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寒い!寒い、寒い、寒い!と、この前まで嘆いていたのだけれど、ふとした瞬間に、春の兆しを感じるようなところもある今日この頃。朝、顔を洗う水の冷たさが、昨日とちょっと違う?空に浮かぶ雲の様子が、先週より何となく穏やかな気がする?射し込む陽の光が、先月に比べて角度を変えてきている?気付かないうちに、季節はまた巡りつつあって、そのことに気が付くと、少しハッピーになれる。ような。冬が迫って来る秋とは違って、春を待つというのは、何となくいいもの。なんて、ちょっと感慨に耽ったりして... ということで、春めくサウンドを...
ベルギーのピリオド・アンサンブル、イル・ガルデリーノによる、18世紀後半、ロンドンの音楽シーンを彩ったバッハ―アーベル・コンサートを再現する意欲作(ACCENT/ACC 24221)。ヨハン・クリスティアン・バッハ、カール・フリードリヒ・アーベルの、朗らかな古典派サウンドによる室内楽を楽しむ。

大バッハ(1685-1750)の末っ子として、ライプツィヒで生まれた、ヨハン・クリスティアン・バッハ(1735-82)。父の死後、ベルリンの宮廷に仕えていた兄、カール・フィリップ・エマヌエル(1714-88)に引き取られるも、長くは留まらず、家出同然でイタリア留学(1754)へ... イタリアではとんとん拍子に成功、兄に引けを取らない国際的な名声を手に入れ、ロンドンへと進出(1762)する... で、大バッハがケーテンの宮廷の楽長を務めていた時、その楽団の首席ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者の息子として生まれたのが、カール・フリードリヒ・アーベル(1723-87)。大バッハの推薦で、ナポリ楽派のスター、ハッセが牛耳るドレスデンの宮廷楽団の一員となり、キャリアを積み、そこからロンドンへと渡り(1759)、やがて2人は再会する。
家族ぐるみで親しかったバッハ家とアーベル家、ヨハン・クリスティアンとアーベルもまた、ロンドンでは同居するほど仲が良かったのだとか... そして、それぞれに大陸で吸収して来た最新の音楽を、ロンドンで紹介するコンサートのシリーズを始める。それが、バッハ―アーベル・コンサート(1765-81)。フランス、ドイツ、イタリアからも音楽家を招き、ヨハン・クリスティアン、アーベルの作品に限らず、ハイドンの交響曲や、マンハイム楽派の作品など、当時、最新の音楽を取り上げたシリーズは、ロンドンの音楽シーンを瞬く間に席巻。規模も次第に大きくなり、1775年には独自のコンサート・ホールを持つまでになったというから凄い...
そんなコンサート再現するアルバム、イル・ガルデリーノは、2人の作曲家の室内楽にスポットを当てる。様々な編成による四重奏から六重奏まで、ロンドンっ子たちを魅了した、ヨハン・クリスティアンとアーベルの作品を交互に並べ、古典派の時代のロンドンの音楽シーンを蘇らせる。そして、その音楽の魅力的なこと!バロックは疾うに過ぎ、多感主義や、疾風怒濤といった過渡的な気分も脱した、古典主義ならではの朗らかさ、春めくようなトーンがたまらなく心地よく。また、多彩な楽器によるアンサンブルが、より豊かなハーモニーを生み出していて、「室内楽」という規模を凌駕する聴き応えをもたらしていて、印象的。
というのも、ピリオド界の腕利きたちが結集しているイル・ガルデリーノだからこそ... 1曲目、ヨハン・クリスティアンの、オーボエ、ヴァイオリン、ヴィオラ・ダ・ガンバ、チェロのための四重奏曲(track.1-2)では、ポンセールのオーボエの、柔らかで明るい響きに、まず耳が持って行かれる。2曲目、アーベルの、フルート、ヴァイオリン、テノール(とは、ヴィオラ・ダ・ガンバのこと?)、チェロのための四重奏曲(track.3-5)では、デ・ヴィネのトラヴェルソの、やさしい響きが何とも言えず... そうした朗らかな中で、アクセントとなるのが、ギエルミの弾くヴィオラ・ダ・ガンバ。古典派にあって、アルカイックな存在感を見せるこの楽器の渋さは、このアルバムの中にあって、スパイスとなり。特に、ヴィオラ・ダ・ガンバの最後の名手と言われるアーベルの、ヴィオラ・ダ・ガンバのための2つソナタ(track.8, 9)は、大バッハの無伴奏チェロ組曲を思い起こすような峻厳さを漂わせ、一気に旧時代へと連れ戻されるよう。また、渋さの中にも瑞々しさを響かせるギエルミの演奏が印象深く。その一音一音の深さには、吸い込まれてしまいそう。取り上げられるのは、2つのソナタなのだけれど、もっと聴きたくなってしまう。それから、アド・エルの軽やかなピアノも忘れ難く... 最後のヨハン・クリスティアンの、フォルテピアノ、オーボエ、ヴァイオリン、チェロ、2つのホルンのための六重奏曲(track.12-14)での、爽やかなタッチは、モーツァルトの時代を強く意識させる魅力的なもので... そんなピアノを取り巻くアンサンブルもまた充実していて、ほぼ小オーケストラといった風格を見せる。ということで、思いの外、盛りだくさんな1枚。
国際音楽都市、ロンドンの活気と、最新モードとしての古典派を追体験しつつ、すばらしいイル・ガルデリーノの演奏も味わう。多少、マニアックではあるのだけれど、「マニアック」ですが、何か?くらいの、堂に入った魅惑的な演奏が、バッハ―アーベルの作品の数々をより水際立たせ、ハイドン、モーツァルトばかりでない、古典派のすばらしさを堪能させてくれる。

Chamber Music ・ C.F.Abel & J.C.Bach ・ il Gardellino

ヨハン・クリスティアン・バッハ : 四重奏曲 第1番 変ロ長調 Warb B60
   〔オーボエ、ヴァイオリン、ヴィオラ・ダ・ガンバ、チェロのための〕
カール・フリードリヒ・アーベル : 四重奏曲 変ロ長調 Op.8-2 WKO62 〔フルート、ヴァイオリン、テノール、チェロのための〕
ヨハン・クリスティアン・バッハ : 五重奏曲 ヘ長調 第3番 Op.11 Warb B73
   〔フルート、オーボエ、ヴァイオリン、通奏低音のための〕
カール・フリードリヒ・アーベル : ソナタ 第24番 ニ短調 WKO 209 〔ヴィオラ・ダ・ガンバのための〕
カール・フリードリヒ・アーベル : ソナタ 第22番 ニ短調 WKO 207 〔ヴィオラ・ダ・ガンバのための〕
カール・フリードリヒ・アーベル : 四重奏曲 ト長調 WKO 227 〔フルート、ヴァイオリン、ヴィオラ・ダ・ガンバ、チェロのための〕
ヨハン・クリスティアン・バッハ : 六重奏曲 ハ長調 Warb B78 〔ピアノ、オーボエ、ヴァイオリン、チェロ、2つのホルンのための〕

イル・ガルデリーノ

ACCENT/ACC 24221




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