SSブログ

夜明け前のナポリ... [2010]

GCD922601.jpg
1010.gif
さて、バロックが続きます。ヴェネツィア、そしてスペインと来て、次はナポリ...
クラシックにおいて「バロック」というと、どれも同じような... なんて、ステレオタイプがどこかにあるように思う。バッハといったイメージが強いせいだろうか?しかし、地域や年代をちょっとずらすだけで、また違う表情を見せるのがバロックでもあって。というより、時間的、地域的広がりは、思いの外、広大で、当然、ステレオタイプに納まり切らない多様さがあり。爛熟のヴェネツィア(ヴィヴァルディ) ルネサンスの残り香も漂うスペイン(マリン、ゲラウ)と聴いてくれば、余計に感じる。そして、ナポリ楽派がヨーロッパを席巻する前夜、ナポリのバロックを聴く。
アントニオ・フローリオ率いる、ピリオド・アンサンブル、イ・トゥルキニによる、ナポリ楽派の源流、カレザーナのカンタータ集(GLOSSA/GCD 922601)。ナポリの個性が際立つ1枚。

バロック期のナポリに、それまでになく迫り、興味深い作品の数々を掘り起こしつつ、アカデミックな方向へと流れず、活き活きとしたナポリっ子気質を楽しませ続けてくれた、アントニオ・フローリオ率いる、カペッラ・デッラ・ピエタ・デ・トゥルキニ... OPUS 111にて繰り広げられた"TESORI DI NAPOLI(ナポリの宝物)"のシリーズは忘れ難い。そして、ELOQUENTIAを経て、GLOSSAから新たに登場!で、カペッラ・デッラ・ピエタ・デ・トゥルキニが、イ・トゥルキニに変身している?!というあたりにちょっと驚きつつ、新たなレーベルでのスタートには、ワクワクさせられる(ELOQUENTIAでのリリースが、若干、パっとしなかっただけに... )。その第1弾が、カレザーナのカンタータ集。"TESORI DI NAPOLI"でも取り上げられていた作曲家だが、いや、マニアック!彼らの徹底したナポリへのこだわりは健在なわけだが、まずは、カレザーナとは?というあたりから...
クリストファロ・カレザーナ(ca.1640-1709)。
ヴェネツィアの出身で、ピエトロ・アンドレア・ジアーニ(1616-84)に学んだ後、1659年、ナポリへと渡り、王室礼拝堂のテノール歌手、オルガニストを経て、後にヨーロッパ中にナポリ楽派の音楽家たちを送り出すこととなる音楽学校のひとつ、サントノフリオ・ア・カプアーナの校長を務めるなど、ナポリで活躍。そんなカレザーナ、ドイツのブクステフーデ(ca.1637-1707)、フランスのシャルパンティエ(1643-1704)と同世代... こども世代には、ナポリ楽派の興隆を担ったアレッサンドロ・スカルラッティ(1760-1725)が。孫世代になって、爛熟期のバロックを彩った、ヴィヴァルディ、バッハ、ヘンデルらが続く。となると、聴き慣れたバロックとは違って、素朴なサウンド。そこに、2世紀に渡ってスペインの支配下にあったナポリなればこそか、どことなくスペイン風にも響き...
1曲目、『徹夜祭』(track.1-7)は、出だしから一味違うバロックを楽しませてくれる。スペイン風というだけでなく、スペイン由来の新大陸風テイスト?スパイシーなパーカッションが彩って、エキゾティック。18世紀、ヨーロッパ・スタンダードの地位を得る前のナポリの音楽は、おもいっきりローカル!で、そうした個性を際立たせる、フローリオ+イ・トゥルキニの歌、演奏がまた絶妙で... 彼らの人懐っこくキャッチーなセンスは、時にワールド・ミュージックとの境界を彷徨うようなところすらあっておもしろく、クラシックの持つ堅苦しさの外で響くフレキシブルなバロックは、とても新鮮。また、このアルバムに収められたカンタータは、クリスマスに因んだもの... ま、季節はずれてしまったが、クリスマスのほんわかしたハッピー感を、カレザーナの素朴さから繰り広げ、ちょっととぼけたようなところもありつつ、陽気なナポリのクリスマスをやわらかに表現して、楽しませてくれる。
そこに、アクセントとなるのが、カレザーナの先生、ジアーニの2つのソナタ(track.18-20/27-29)。陽気なナポリに対して、伝統のヴェネツィア仕込みのかっちりとした音楽が印象的。が、ジアーニもまた最後にはナポリへとやって来た作曲家... 1680年からその死の年、1684年まで、ナポリの王室礼拝堂の楽長を務めているのだが。このアルバム、何気に、ナポリのヴェネツィア人たちでまとめているあたりが興味深く。そして、ナポリのヴェネツィア人たちによる、夜明け前のナポリの様子が、思いの外、魅力的に響く。

Caresana L'Adoratione de' Maggi I Turchini / Florio

カレザーナ : カンタータ 『徹夜祭』
カレザーナ : カンタータ 『悪魔、天使と3人の羊飼い』
ジアーニ : ソナタ Op.7-17
カレザーナ : カンタータ 『センブリ・ステラ・フェリーチェ、パルテノーペ・レッジャルダ』
ジアーニ : ソナタ Op.7-15
カレザーナ : カンタータ 『東方三博士の礼拝』

マリア・グラツィア・スキアヴォ(ソプラノ)
ヴァレンティーナ・ヴァッリアーレ(ソプラノ)
フィリッポ・ミネッチャ(カウンタテナー)
ジュゼッペ・デ・ヴィットリオ(テノール)
ロザリオ・トターロ(テノール)
ジュゼッペ・ナヴィリオ(バス)
アントニオ・フローリオ/イ・トゥルキニ

GLOSSA/GCD 922601




nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。