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ファゴット革命。 [2010]

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正直に言ってしまうと、ファゴットという楽器は、つまらないと思っていた。
クラリネット、ホルンあたりに挟まれて、その音色から地味だし、作品、少ないし... となると、聴く機会も少なく、親しみなどはあまり持てないでいた。だから、naïveの"VIVALDI EDITION"で、ヴィヴァルディのファゴット協奏曲のシリーズが始まると聞いても、あまりピンとこなかった。のだが... しばらくして、naïveのサイトで、何気なく、シリーズ、第1弾となるアルバムを試聴して、驚いた!
セルジオ・アッゾリーニのファゴット、イタリアのピリオド・オーケストラ、ラウラ・ソアーヴェ・クレモナによる、ヴィヴァルディのファゴット協奏曲集、vol.1(naïve/OP 30496)。もちろんバロックだが、当然、ヴィヴァルディだが、そこにある聴き応えは、それだけに留まらない... 何、この感覚?!

ヴィヴァルディのファゴット協奏曲というと、遠い昔に、シモーネ+イ・ソリスティ・ヴェネティによる録音(ソロは誰だったか?)を聴いているのだけれど、さて、どんな感じだったか?ヴィヴァルディ作品は、どれも刺激的だが、ファゴットの協奏曲となると、あまりインパクトを見出せなかったように思う。そんなイメージから聴く、ベテラン、アッゾリーニによるヴィヴァルディのファゴット協奏曲集、vol.1。
アッゾリーニのファゴットはもちろん、ラウラ・ソアーヴェ・クレモナの演奏も、ただならないテンションで驚かせてくれる。何か、これまでとは気合の入り方が違うというのか、とにかく凄まじい。バロック・ロックなヴィヴァルディは、そう珍しいものではなくなったわけだが、ここで繰り広げられるヴィヴァルディは、その程度のものではない。作品を演奏すると言うより、作品に入り込み、ヴィヴァルディから作品を乗っ取るくらいの勢い!そうして響いてくるヴィヴァルディ像は、バロックというイメージでは括れないところすらあって、数世紀を経た音楽であることを忘れさせられるような瞬間が度々... 時代感覚は揺らぎ、このサウンドが何者なのか、惑わされさえする。
その主役、アッゾリーニのファゴット... 楽器の地味なイメージを吹き飛ばすかのように、とにかく吹かしまくる!それは、時に強引なイメージすら与えかねないが、美しさよりも存在感を際立たせて、ファゴットの思わぬ表情を見せつけられるようで刺激的。まるで、アルト・サックスのような、そんなトーンすらあって、荒ぶるスリリングさが、作品をまったく新しい次元へと引き上げる。
緩叙楽章を少し気だるく吹けば、ジャジーな臭いがして... キャッチーなメロディを活き活きと捉えれば、思いの外、ポップで... また、ラウラ・ソアーヴェ・クレモナが雄弁に奏でれば、ヴィヴァルディの中に古典派の姿すら見出すようで... アッゾリーニの荒ぶるファゴットに、ラウラ・ソアーヴェ・クレモナのヘヴィーなサウンドが呼応すれば、マイケル・ナイマンを彷彿?サックスが力強いビートに乗って、エモーショナルに音楽を展開する... いや、ファゴットなのだけれど... 楽器にしろ、作品にしろ、その新しい感触に、圧倒される。2曲目、RV.495の協奏曲(track.4-6)なんて、クラシックにカテゴライズしておいてよいものか?とすら感じてしまう。ヴィヴァルディならではのバロック・ロックと、さらに踏み込んで、ヴィヴァルディに現代的なセンスを籠めて生み出されるサウンドは、想像以上に幅があって、一筋縄にはいかない魅力を放っている。
シモーネ+イ・ソリスティ・ヴェネティといった前世代の発掘に始まり、ピリオド世代による革命があって、ヴィヴァルディにおける解釈は、一通り出揃った観があるわけだが、アッゾリーニ、ラウラ・ソアーヴェ・クレモナの演奏は、限界を設けず、さらに先へと突き進み、やり過ぎるくらいにやって、やり尽くした果てに広がる鮮烈さは、圧巻!シリーズのこれからが楽しみになる。

Vivaldi Concerti per fagotto I

ヴィヴァルディ : ファゴット協奏曲 ト長調 RV 493
ヴィヴァルディ : ファゴット協奏曲 ト短調 RV 495
ヴィヴァルディ : ファゴット協奏曲 ハ長調 RV 477
ヴィヴァルディ : ファゴット協奏曲 ヘ長調 RV 488
ヴィヴァルディ : ファゴット協奏曲 変ロ長調 RV 503
ヴィヴァルディ : ファゴット協奏曲 ハ長調 RV 471
ヴィヴァルディ : ファゴット協奏曲 ホ短調 RV 484

セルジオ・アッゾリーニ(ファゴット)
ラウラ・ソアーヴェ・クレモナ

naïve/OP 30496




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