SSブログ

天の邪鬼、ドビュッシーと... [2010]

8572297.jpg
1010.gif
ジュン・メルクルと、彼が率いる国立リヨン管弦楽団による、ドビュッシーの管弦楽作品集、vol.4(NAXOS/8.572297)を聴く... のだけれど、その前に、ドビュッシーの管弦楽作品の全体像というものが、ここのところ、掴みづらくなりつつある。というのも、メルクル+国立リヨン管の、これまでになく、おもいっきり目を見開いて、ドビュッシーの全体像を捉えようとするシリーズの展開が、様々にオーケストレーションを施された作品を掘り起こしていて。ドビュッシーの仕事を補って、他の作曲家がオーケストレーションしたもの。ドビュッシーの死後、他の作曲家がオーケストレーションしたもの。果たしてどこまでがドビュッシーの管弦楽作品なのだろう?と、オリジナルとアレンジの狭間に、戸惑うようなところも... しかし、それこそがメルクル+国立リヨン管によるシリーズのおもしろいところであり、毎回、新鮮な思いをするわけだが... そもそも、ドビュッシーの管弦楽作品というのは、意外なほど少ない?なんて、今頃になって認識してみたり。

牧神の午後への前奏曲、海、管弦楽のための映像、夜想曲、バレエ『遊戯』...
もちろん、これだけではないけれど、これでドビュッシーの管弦楽作品は、大体、掴めたようなもの。そこから、オーケストラを用いる作品と枠を広げれば、あとは協奏的作品がいくつか、カンタータがいくつかと、オペラ『ペレアスとメリザンド』。そんなところ。で、改めて見つめると、こんなもん?と驚かされてしまう。
そして、メルクル+国立リヨン管による、ドビュッシーの管弦楽作品集、vol.4なのだが... (NAXOS/8.570759)でスタートしたシリーズは、vol.2(NAXOS/8.570993)、vol.3(NAXOS/8.572296)と、すでに、主だった作品を取り上げてしまっている。となると、vol.4の中身はどんなものになるのか?カプレ(1878-1925)による『聖セバスティアンの殉教』からの交響的断章(track.1-4)、ケクラン(1867-1950)の補筆によるバレエ『カンマ』(track.8)を中心に、ロジェ・デュカス(1873-1954)により完成された、劇音楽『リア王』からの2曲(track.9, 10)。ドビュッシーによるオリジナル、『聖セバスティアンの殉教』からの前奏曲と2つのファンファーレ(track.5-7)に、カンタータ『放蕩息子』から、行列と踊りの歌(track.11)が取り上げられる。で、ドビュッシーによるオリジナルが脇に回ってしまうから、おもしろい。というより、どうも作品を仕上げ切らない、ドビュッシーの天の邪鬼さが浮き彫りになる?いや、アレンジャーとのコラヴォレーションが聴きどころでもあり... アレンジャーの存在を、多少、意識しながら聴いてみれば、ドビュッシー周辺の作曲家たちの、層の厚さにも興味深さを感じたり。
しかし、魅力的な音楽!ドビュッシーの代表作に比べれば、その存在は地味かもしれないが、アンビエントなドビュッシーの魅力が目一杯に詰まった1枚に。例えば、『聖セバスティアンの殉教』からの交響的断章(track.1-4)、そのドビュッシーならではの色彩感が生む、ヴィヴィットなサウンドと、そこから綴られる静かな音の連なりは、「クラシック」というイメージを越えて、現代的ですらある(間違いなく、カプレもいい仕事をしています!)。やさぐれモダンなドビュッシーのダンディスムの中に、ポスト・モダンを見据えたかのようなクールさを見出し、改めてこの作曲家に魅了され... また、そこには、メルクルならではのクリアな音楽作りと、清廉なサウンドを持つ国立リヨン管による端正な演奏があって。彼らだからこその、独特の、「フランス」という濃度を抑えた表現が、ドビュッシーというフランス近代音楽のアイコンを、ステレオタイプから掬い上げ、イメージではなく、作品そのものと、改めて向き合わせてくれるかのよう。vol.1で体験した、新鮮な驚きを、再び味わう。

DEBUSSY: Orchestral Works ・ 4

ドビュッシー/カプレ : 『聖セバスティアンの殉教』 からの 交響的断章
ドビュッシー : 『聖セバスティアンの殉教』 第2幕 魔法の部屋 から 前奏曲
ドビュッシー : 『聖セバスティアンの殉教』 第3幕 偽りの神の懐柔 から ファンファーレ 第1番/第2番
ドビュッシー : バレエ 『カンマ』 〔オーケストレーション、補筆 : ケクラン〕
ドビュッシー : 劇音楽 『リア王』 から ファンファーレによる序曲 〔オーケストレーション : ロジェ・デュカス〕
ドビュッシー : 劇音楽 『リア王』 から リア王の眠り 〔オーケストレーション : ロジェ・デュカス〕
ドビュッシー : カンタータ 『放蕩息子』 から 行列と踊りの歌

ジュン・メルクル/国立リヨン管弦楽団

NAXOS/8.572297




nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。