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第九の懐に飛び込む。 [selection]

さて、第九の季節だ。
で、なぜ第九の季節なのか?という疑問が、ぼんやりとあるのだけれど、そんな疑問の余地すらなく、年末の風物詩となっている。そして、改めてこの時期に第九を聴いてみれば、やっぱり「第九の季節」なのだなと、妙に納得させられることになる。年末にまつわる詩が歌われるでもなく、年末に歌えと指定されているでもないのに... 年末に第九。そのあたりを見つめ直すと、おもしろいのかもしれない。
12月も半ばを過ぎて、2010年も、まもなく終わる。となると、例年の如く、焦っている。無駄に焦っている。もちろん焦らねばならない状況もあるわけだが、何となく周りにも流されて焦っている。この、焦りが二乗して襲い掛かって来る感じに、毎年、変に消耗させられて... 下手に「師走」なんて言うものだから、みんなして全力疾走しなくてはいけないような、そんな年末感に中てられるわけだ。そうした頃に聴く、第九... 年末感極まった中で、やがて歓喜の歌に至る特異な交響曲を聴くと、残りわずかとなった「今年」に、どこかで諦めがつくような、そんな心地になる。で、そう焦ることもないだろう... なんて思えたりして。何より、年末を、年が終わることを、ポジティヴに受け止める、そんなパワーに充ちている気さえしてくる。

謎めく1楽章、躍動する2楽章、夢見る3楽章、そして、歓喜の歌へ... 1年間に溜まった心の澱を、歓喜の歌とともに流し去る... 歌っている内容は、あまりに壮大で、正直、ピンとこないのだけれど、それでも、聴き終えてみれば、心がリセットされているような、他の交響曲では得られない、第九だからこその不思議な心地を味わう。クラシックの稼ぎ時... 年末=第九と、みんなどこかで煽られて聴いているようでいて、第九の持つパワーに、知らず知らず惹き付けられているのかもしれない。いや、第九とは、芸術とか、クラシックとか、そういう枠組みでは語れない、パワー・ミュージック、なのかもしれない。年末の忙しなさの中ならば、余計、強く感じる。
ということで、今回は、第九をセレクション。
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前世紀末から、著しく変貌を遂げて来たベートーヴェン演奏の解釈... そうした中で、ピリオドのブームが一巡し、モダン・オーケストラにピリオド楽器が持ち込まれることもそう珍しくなくなった21世紀。ベートーヴェン像は、そろそろ落ち着いて来たように思うのだが、モダンとピリオドのハブリットで、さらに新しい境地を目指したパーヴォ・ヤルヴィ+ドイツ・カンマーフィル。彼らの第九(RCA RED SEAL/88697576062)は、21世紀の最前衛を感じさせる新鮮なベートーヴェン像を見せてくれる。で、現代感覚に絶妙にフィット。
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さて、現代日本における第九のイメージに、ベートーヴェンはどんな感想を持つだろうか?そんなことが、ふと気になる、クリストフ・シュペリング+ダス・ノイエ・オーケスターによる第九の初演(PHOENIX Edition/PE 107)を再現した興味深い1枚。録音は何とも言い難いのだけれど、コルス・ムジクス・ケルンのすばらしいコーラス、いつもながらおもしろいことをしてくれるクリストフ・シュペリング、それにきっちり応えるピリオド・オーケストラ、ダス・ノイエ・オーケスターの演奏は間違いなくおもしろい。
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ところで、今年はマーラーのメモリアル。マーラー版の第九(PREISER RECORDS/PRCD 90773)も登場... クリスチャン・ヤルヴィ+トーンキュンストラー管によるアルバム。こういう妙なところに目を付けてくるクリスチャンのセンス、かなりおもしろいのかも。で、何気に、兄、パーヴォに対抗している?マーラー版であること自体、希有なのに、輪を掛けて不思議な第九を聴かせてくれる。そうした中で、マーラーとベートーヴェンという2つの個性のスパークが興味深く... まさにマーラーのメモリアルあってこその1枚。
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マーラー版ときたら... ワーグナー版も!小川典子のピアノで聴くワーグナー版の第九(BIS/BIS-CD-950)。ピアノによる第九というと、リスト版が有名なわけだが、ワーグナーも第九をピアノ用に編曲しており、その丁寧で真摯なアレンジが印象的... が、注目すべきは、「合唱付き」そのままに、きっちり歌うこと!で、バッハ・コレギウム・ジャパンが歌ってしまうこと... ピアノ伴奏で歌う第九というのは、ちょっと間が抜けた気もしないでもないが、そのこじんまりとした佇まいは、また乙。それにしても、ベートーヴェンは、後の作曲家に大きな影響を及ぼしているわけだ。

で、なぜ第九の季節なのか?という疑問に立ち戻る...
第九を年末に取り上げるのは、日本くらいなもの。という話しはよく聞くわけだが、ではなぜ年末なのか?日本には、どうして第九の季節があるのか?いつもながら、wikiにて、ちらりと調べてみれば... 正月の餅代を稼ぐため、人気のあった第九を年末に取り上げたのが、やがて風物詩になったとのこと。クラシックの稼ぎ時... というよりも、ズバリ、稼ぐために第九があったわけだ。が、それもまた、ありな気がしてしまう。第九とは、そういう懐の大きさを持つ、希有な交響曲のように感じる。




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