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ドイツ・ロマン派の、点と点、と... [2010]

ショパン、シューマン、マーラー... 今年もメモリアルで盛り上がっているわけだが、今回は、昨年のメモリアル、メンデルスゾーンを聴く。ま、ズレてはいるのだけれど、メモリアルで盛り上がったからこそ、その成果が翌年リリースされるというケースはあって... メモリアルは、過ぎてしまってからも、意外と楽しませてくれる気がする。で、そんなアルバム... クリストフ・シュペリング率いる、ダス・ノイエ・オーケスター(ピリオド・オーケストラ)と、コルス・ムジクス・ケルン(合唱)による、メンデルスゾーンのオラトリオ『エリヤ』(MDG/602 1656-2)を聴く。
そして、ついでというではないのだけれど... ミヒャエル・アレクサンダー・ヴィレンス率いる、ケルナー・アカデミー(ピリオド・オーケストラ)の演奏で、メンデルスゾーンとは同世代、今年のメモリアル、シューマンが絶賛していたというロマン派の作曲家、カリヴォダの交響曲集(cpo/777 469-2)を聴く。


劇画的、『エリヤ』。

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シュペリングというと、近頃は、弟、アンドレアスの方が目立つように思う。が、兄、クリストフも、もっともっと聴きたいのだけれど... ダス・ノイエ・オーケスター、コルス・ムジクス・ケルンを率いて、OPUS111時代、他ではなかなか聴けない作品、版を取り上げて、とにかくおもしろくチャレンジングだったクリストフ。その後、OPUS111がnaïveに吸収されて、CAPRICCIOに移るものの、なんとなくその存在は地味なものに... で、CAPRICCIOが倒産。CAPRICCIOの後継として、PHOENIX Editionが立ち上がり、第九初演を再現する興味深いアルバム(PHOENIX Edition/PE 107)などをリリース。これからの展開を期待したものの、どういうわけかCAPRICCIOが復活して、PHOENIX Editionは路線変更?クリストフ+ダス・ノイエ・オーケスター、コルス・ムジクス・ケルンのリリースは途絶えてしまい...
クリストフたちのゼロ年代を振り返ると、レコード業界の苦しい状況を反映しての流浪のアンサンブル... といった印象すらある。おもしろいことができるだけに、こういう状態がとにかく残念だった。が、そこに、MDGから、メンデルスゾーンのオラトリオ『エリヤ』をリリース!
常にチャレンジングな彼らにしては、3大オラトリオの一角というあたり、捻りが無さ過ぎる気もするけれど、メンデルスゾーン作品は、折に触れ取り上げてきているだけに、満を持して臨むメンデルスゾーンの代表作は、大いに期待させられるもの。そして、その演奏だが、クリアな響きと、軽快な運びが印象的で... クリストフならではのテイスト。旧約聖書の荘重な世界を歌い綴る『エリヤ』だけに、その荘重さに大時代的なものを感じる帰来もあるが、下手に勿体ぶることなくアグレッシヴに踏み込んで、よりドラマティックな世界を響かせるクリストフ。それに応えるソリスト陣がまた見事で、オペラのような濃密さでドラマを繰り広げ、バアル信仰と対決する預言者エリヤの緊迫した物語を引き締める。そして、要所要所で聴かせるコルス・ムジクス・ケルンのコーラス!クリアかつ快活なハーモニーは、古色蒼然としたオラトリオを鮮やかに塗り直すような感覚もあって爽快だ。そうして綴られる『エリヤ』は、どこか劇画的に展開されるようで、おもしろい!で、このセンス、21世紀流?『エリヤ』らしさよりも、メンデルスゾーンの音楽が持つヴィヴィットさを前面に、ドラマを楽しませてくれる。
やっぱり、チーム・クリストフはおもしろい!

Mendelssohn: Elijah / Elias op. 70

メンデルスゾーン : オラトリオ 『エリヤ』 Op.70

クラウディア・バラインスキー(ソプラノ)
フランツィスカ・ゴットヴァルト(メッゾ・ソプラノ)
ライナー・トロスト(テノール)
トーマス・E・バウアー(バス)
コルス・ムジクス・ケルン
クリストフ・シュペリング/ダス・ノイエ・オーケスター

MDG/602 1656-2




もうひとりのロマン派作曲家、カリヴォダ。

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「クラシック」と言えば、19世紀... もちろん、そればかりではないのだけれど、お馴染みの作曲家たちが個性をひしめかせて、クラシックの核を成しているのはやっぱり19世紀。多くのクラシック・ファンにとって、より多くの作曲家の名前を挙げることができる世紀だろう。しかし、本当の意味で19世紀をきっちり聴けているか?というと、どうだろう。みんながよく知る世紀というのは、わかり易く整理されていて、有名作曲家だけできっちり説明できてしまうようなところがある。となると、意外と点でしか19世紀を把握できていないのかもしれない。
そんなことを強く感じたのが、クリストフ+ダス・ノイエ・オーケスターによるカリヴォダの5番と7番の交響曲(cpo/777 139-2)のアルバム。カリヴォダ?誰それ... くらいなところから聴き始めたのだが、そのフレッシュでキャッチーなロマン派サウンドには、すぐに魅了されてしまった。と同時に、点からちょっと視線をずらすと、点の周りについてあまりに知らないことを思い知らされ、衝撃を受けた。それから4年が過ぎ、第2弾がリリース!クリストフ+ダス・ノイエ・オーケスターから、ヴィレンス+ケルナー・アカデミーに交代しての、カリヴォダの2番と4番の交響曲。再び、このもうひとりのロマン派作曲家に魅了されることに...
ヤン・ヴァーツラフ・カリヴォダ(1801-66)。その当時はベートーヴェンの再来と言われ、シューマンも絶賛した作曲家。点で把握しているドイツ・ロマン派の音楽に、カリヴォダという存在を知ることで、点と点を結び、その時代の空気感を見るような、そんな感覚のあるカリヴォダの交響曲は、間違いなく興味深い。ベートーヴェン的な剛健な風情と、ロマン派ならではのメロディックさ、多少、芝居掛かったヒロイックさがアクセントになって、シューベルト、シューマン、メンデルスゾーンといった同時代の作曲家の交響曲よりも、どこか人懐っこい表情を見せる。ヴィレンス+ケルナー・アカデミーの演奏は、そのあたりを丁寧に拾い集め、交響曲とは言っても堅苦しくなり過ぎない適度な温度感が好印象。正直に告白してしまえば、クリストフ+ダス・ノイエ・オーケスターのままで良かったのに... とも思ったのだが、ヴィレンス+ケルナー・アカデミーも悪くない。そして、第3弾はどうなるのか?

J. W. Kalivoda ・ Symphoniees 2 & 4 ・ Die Kölner Akademie

カリヴォダ : 演奏会用序曲 第17番 Op.242
カリヴォダ : 交響曲 第2番 変ホ長調 Op.17
カリヴォダ : 交響曲 第4番 ハ短調 Op.60

ミヒャエル・アレクサンダー・ヴィレンス/ケルン・アカデミー

cpo/777 469-2




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