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ヴィルヘルム・フリーデマン・ルネサンス。 [2010]

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ところで、バッハ家の長男、ヴィルヘルム・フリーデマンも、メモリアルな2010年。
生誕300年のメモリアル... とはいえ、もちろんマイナーな存在だけに、密やかなメモリアルになるわけだけれど、これが、密やかなりに、リリースは多め?ひっそりと、ヴィルヘルム・フリーデマン・ルネサンスを迎えつつある気配。そうした中、チェンバロのベテラン、ギィ・パンソンが、前世紀末に録音したヴィルヘルム・フリーデマンのチェンバロ協奏曲のアルバム、2タイトルがまとめられて、再リリース。10年前を振り返れば、ヴィルヘルム・フリーデマンに、今ほど関心を持てていなかった... が、2010年のメモリアルは、俄然、気になる存在に。ということで、ソナタも、シンフォニアまでも含む2枚組、パンソンによるチェンバロ協奏曲集(RICERCAR/RIC 297)、メモリアル再リリースを機に、新鮮な思い聴いてみた。

ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハ(1710-84)。
音楽史に燦然と輝く大バッハ(1685-1750)を父に持ち、その父から溺愛されたバッハ家の長男... だが、カール・フィリップ・エマヌエル(1714-88)、ヨハン・クリスティアン(1735-82)ら、弟たちが国際的な名声を得ていたのとは裏腹に、成功とは程遠い、流浪の人生を送った... そんな風に紹介されるヴィルヘルム・フリーデマンだが、その音楽は、じわりじわりと注目を集め、ピリオドの隆盛と重なるように、静かなブームが続いている。気がする。そうした中で、パンソンによるチェンバロ協奏曲集は、ヴァラエティに富む作品を並べて、ヴィルヘルム・フリーデマンという存在を捉える、魅力的なチョイスが光る!
1枚目、最初のチェンバロ協奏曲(disk.1, track.1-3)の、バロックを脱しつつあるギャラントな音楽の後で、2曲目、バロックそのものなチェンバロによるソナタ(disk.1, track.4-6)が来て... 3曲目は、古典派も、後期の香りがする、しっとりとしたアダージョで始まるシンフォニア(disk.1, track.7)。美しいフルートがリードする、物憂げなアダージョを耳にすると、ソナタとのギャップに、本当に同じ作曲家の作品なのか?!と、驚かされる。が、後半、アレグロでは、古風なフーガが展開されて、さらに惑わされることに... しかし、このスタイルの揺れが、かえってヴィルヘルム・フリーデマンの音楽に共通するトーンを浮かび上がらせるようで、おもしろい。
繊細な表情が紡ぎ出すナイーヴさ、センチメンタルな気分... そして、時折、予想を越えてくる響きが耳を捉えて、ゾクっとさせられて... それは、父はもちろん、弟たちとも一味違う感覚。バロックから古典派へという過渡期、新旧、様々なスタイルが溢れていた時代にあっても、独特な感性を放つ。
そして、パンソンの気を衒うことの無いパフォーマンスが、その独特な感性を素直に響かせて、2枚組を美しくまとめ上げ。また、1枚目の2つのポロネーズ(disk.1, track.12, 13)、2枚目のピアノによるソナタ(disk.2 track.4-6)では、フォルテピアノを用い、より情感を生み出すことのできる楽器の特性を活かし、ヴィルヘルム・フリーデマンならではの独特な感性をさらに際立たせ、魅了されてしまう。
そして、パンソンをサポートする2つのピリオド・オーケストラの演奏も聴きどころ... 1枚目を担当する、アドリアン・シャモロの指揮によるリチェルカーレ・コンソート。2枚目を担当する、パウル・ドンブレヒトが率いるイル・フォンダメント。どこか影を帯びたリチェルカーレ・コンソートに、華やかで快活なイル・フォンダメントの演奏は、ヴィルヘルム・フリーデマンの表情を多角的に捉えるようで興味深く、パンソンの伴奏のみならず、シンフォニアでは前面に出て、それぞれにすばらしい演奏を聴かせてくれる。
いや、ヴィルヘルム・フリーデマン、生誕300年のメモリアルには、絶好の2枚組!

WILHELM FRIEDEMANN BACH
CEMBALO KONZERTE


W.F.バッハ : 鍵盤のための協奏曲 ホ短調
W.F.バッハ : ソナタ 第2番 イ長調
W.F.バッハ : シンフォニア ニ短調
W.F.バッハ : フーガ 第8番 ヘ短調
W.F.バッハ : 鍵盤のための協奏曲 ヘ短調
W.F.バッハ : ポロネーズ 第9番 ヘ長調
W.F.バッハ : ポロネーズ 第10番 ヘ短調

W.F.バッハ : 鍵盤のための協奏曲 ヘ長調
W.F.バッハ : ソナタ 第3番 変ロ長調
W.F.バッハ : 鍵盤のための協奏曲 変ホ長調 から モデラート
W.F.バッハ : シンフォニア ヘ長調
W.F.バッハ : 鍵盤のための協奏曲 イ短調

ギィ・パンソン(チェンバロ/フォルテピアノ)
アドリアン・シャモロ/リチェルカール・コンソート
パウル・ドンブレヒト/イル・フォンダメント

RICERCAR/RIC 297




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