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アコーディオンで軽やかに、「前衛」を... [2010]

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気鋭のアコーディオン奏者、シュテファン・フッソング。その存在、楽器が楽器なだけに、かなりマニアックかもしれないけれど、クラシックにあって、ピリリとスパイスを効かせる貴重な存在。で、気になる存在。例えば、サティをフィーチャーしたスヴォボダの不思議な1枚、"Phonométrie"(WERGO/WER 6806)とか、この人の関わるアルバムというのは、一筋縄ではいかないおもしろさがあって... で、そんなフッソングが登場する最新盤(と言っても、夏前のリリース?)ということで手に取ったのが、イサン・ユンの作品集(WERGO/WER 6716)。フッソングのアコーディオンが活躍する作品で綴られる、気になるアルバム。なのだけれど、イサン・ユン、再発見!イメージを覆して魅力的。いや、振り返ってみれば、イサン・ユンときっちり向き合うのは初めてなのかも...

イサン・ユン(1917-95)。
20世紀、東アジアを代表する作曲家... 日本の武満に、韓国の尹(ユン)... 何となく、そんな位置付け?で、日本とも縁のある作曲家... 日本で学び、そして、細川俊夫ら、現代の日本を背負う作曲家たちを育てた教育者としても知られる。が、韓国との関係は複雑... イデオロギー対立に巻き込まれ、韓国軍事政権による拉致、死刑宣告という過酷な経験を持つ。という基礎知識は、今さら... か?"ゲンダイオンガク"にあって、紹介される機会に恵まれた数少ない作曲家のひとりのように思う。ということで、これまで、何かと聴く機会はあった。けれど、イサン・ユン名義のアルバムを聴く機会は、どういうわけか逃して来た。そこに、フッソングによるアルバム、登場。で、フッソングのアコーディオンから聴くイサン・ユンは、この作曲家のイメージを覆すようで、新鮮。
20世紀、前衛の主導的役割を担ったドイツを拠点(韓国軍事政権からの解放後、西ドイツの市民権を得る... )としたイサン・ユンだけに、その音楽は上質な「前衛」。そこに、東アジア的な精神性が滲んで、西洋の「前衛」とはどこかで違うトーンが響く?また、その作品には、政治的なメッセージも含んで、力強く、硬派なイメージがあった(といっても、ラジオやら何やらで、代表作などを聴きかじった程度の安易なイメージではあるのだけれど... )。が、フッソングによるイサン・ユンのアコーディオン作品は、思いの外、やわらかな印象で。いや、アコーディオンという楽器の音色のせいか、どこかタンゴのようにすら感じる部分もあったりで、びっくり。
1曲目、アコーディオンと弦楽四重奏によるコンチェルティーノの、やわらかな色彩感は、「前衛」の厳めしさとは一味違ったテイスト。アコーディオンがキレのある和音を奏でると、端々、粋でもあって... 何より、ミンゲ弦楽四重団のクリアで伸びやかな弦楽と、アコーディオンのヴィヴィッドなサウンドが絶妙に響き合い、難解な"ゲンダイオンガク"... というステレオタイプとはまた違う軽やかさが印象的。続く、2曲目、ヴィオラとアコーディオンによるデュオ(track.2)、3曲目、チェロとアコーディオンによるインテルメッツォ(track.3)、4曲目、ヴァイオリン、チェロとアコーディオンによるペッツォ・ファンタジオーゾ(track.4)も、アコーディオンという楽器ならではのトーンが、弦楽器といい具合に溶け、ピアノともオルガンとも違う感覚で弦楽器に寄り添うあたり、とても興味深い。もちろん、そこには、いつもながらのフッソングの妙技があって... 派手に存在を主張することはないが、アンサンブルとしてきっちり仕事をしつつ、アコーディオンのヴィヴィッドさ、キャッチーさで、イサン・ユン作品の魅力を丁寧に引き出す。すると、「前衛」も、尖がるばかりではない、丸みを帯びて印象的。

Isang Yun Concertino ・ Duo ・ Intermezzo ・ Pezzo fantasioso

イサン・ユン : コンチェルティーノ 〔アコーディオンと弦楽四重奏のための〕 *
イサン・ユン : デュオ 〔チェロとアコーディオンのための〕 *
イサン・ユン : インテルメッツォ 〔チェロとアコーディオンのための〕 *
イサン・ユン : ペッツォ・ファンタジオーゾ 〔バス声部と2つの楽器のための、自由に〕 *

シュテファン・フッソング(アコーディオン)
ミンゲ四重奏団 *
エイロア・ソーリン(ヴィオラ) *
ユリウス・ベルガー(チェロ) *
ウルリヒ・イスフォルト(ヴァイオリン) *
マティアス・ディーナー(チェロ) *

WERGO/WER 6716




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