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オンブラ・マイ・フ、原石... [2010]

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"LAVA"(deutsche harmonia mundi/88697 54121 2)の面々が帰って来た!
"LAVA"、イタリア語で「溶岩」、まさに、そんな火を吹くセッション... 18世紀、バロック期、オペラが最も熱狂的に受け入れられていた頃の白熱を、21世紀に再現したエキサイティングな1枚。常に、何かをしでかしてくれそうな、個性派ソプラノ、ジモーネ・ケルメスに、様々な場所で活躍する腕利きのピリオド奏者が結集した、クラウディオ・オゼーレ率いるレ・ムジケ・ノヴェ。このコンビが繰り出す丁々発止のナポリ楽派のナンバーには、ピリオド云々、アカデミックなクラシックをブチのめすテンションがあって、圧倒され、魅了されて... そして、再び、彼らが、18世紀、バロック期を舞台に、見事なパフォーマンスを繰り広げるのが、"Coroli d'Amore"(SONY CLASSICAL/88697789202)。もちろん、期待は裏切らない...

いや、裏切らないどころか、"LAVA"の荒削りさ(それはそれで十分に魅力的なのだけれど... )にはない、洗練をも感じ、ヴァージョン・アップしたケルメス、オゼーレ+レ・ムジケ・ノヴェの姿を"Coroli d'Amore"に見出す。で、よくよく見れば、レーベルが、deutsche harmonia mundiからSONY CLASSICALに移っている!危うさも孕むコンビが、メジャー・レーベルからアルバムをリリース(BMGの古楽ライン、DHMなわけだが、BMGがSONYに飲み込まれて、あり得ることではあるのだけれど... )。に、ちょっと驚きも... そして、そのあたりに、彼らの洗練(ジャケットのケルメス姐さんも、前作の溶岩頭に比べると、お金、掛かっている、感じ?)もあるのか?もちろん、"Coroli d'Amore(愛の色)"という、「溶岩」から一転、しっとり路線というのもある。が、それも含めてメジャー・レーベル仕様?しかし、その中身はメジャー・レーベルにして恐れることなくマニアック。
彼らならではの、18世紀、バロック期の生々しいオペラハウスの活気を捉えるセンスはますます冴えていて... アレッサンドロ・スカルラッティ、ジョヴァンニ・ボノンチーニを中心に、アントニオ・マリア・ボノンチーニ(ジョヴァンニの弟)、カルダーラ、マッテイス、かのファリネッリの兄、ブロスキと、21世紀におけるメジャーではない、18世紀当時、ヨーロッパ各地で活躍したイタリアのメジャーな作曲家たちを並べてみせ、バッハ、ヘンデル、ヴィヴァルディといった、わかり易い形でのバロックではない、当時の生々しいバロックを繰り広げ、興味深い。
その中でも、特にマニアックなナンバーが、2曲目、ジョヴァンニ・ボノンチーニによる「オンブラ・マイ・フ」(track.2)。ヘンデルがパクった?なんて逸話もある、バロック屈指の名旋律、ヘンデルの「オンブラ・マイ・フ」の基になった作品。で、納得... まさに、「オンブラ・マイ・フ」です。ヘンデルの著作権違反、確定... けど、同時に、ヘンデルの凄さにも感じる入るジョヴァンニ・ボノンチーニによる「オンブラ・マイ・フ」(ヘンデルのものは収録されていないけれど... )。ボノンチーニのものは、ヘンデルにインスピレーションを与えただけの美しさを持っているものの、その原石を拾い上げ、磨き上げ、宝石にしたのはまさしくヘンデル!その加工技術の妙は、基となった作品を初めて聴いて思い知らされるものかも... いや、おもしろい!
さて、"Coroli d'Amore"=「愛の色」ということで、しっとりとしたナンバーが中心(最後のブロスキのアリアなど、その愉悦感がたまらない!)だが、華麗なコロラトゥーラも舞って、溶岩、吹き上げた"LAVA"に比べると、ヴァラエティに富むラインナップ。それは、愛の色のパレット... ということになるのか?様々な表情を器用に歌い綴るケルメス。そして、スパイスを効かせつつ、きちっり下味もぬかりなく、よりスケール感を増したオゼーレ+レ・ムジケ・ノヴェの演奏。テンションばかりでない彼らの魅力もたっぷり味わいつつ... 18世紀、バロック期のオペラハウスの賑わいを追体験。その魅力的な歌、演奏に、また魅了されることに。

SIMONE KERMES ・ Coroli d'Amore

アレッサンドロ・スカルラッティ : オペラ 『テレマコ』 から "Il mar de le mie pene"
ジョヴァンニ・ボノンチーニ : オペラ 『セルセ』 から "Frondi tenere... Ombra mai fù"
アレッサンドロ・スカルラッティ : オペラ 『幸運な囚人』 から "Ondeggiante agitato"
アレッサンドロ・スカルラッティ : オペラ 『ミトリダーテ・エウパトーレ』 から "Cara tomba"
カルダーラ : オペラ 『カジョ・マルツィオ・コリオナーレ』 から "Ha vinto Amor... Per combatter con lo sdegno"
ジョヴァンニ・ボノンチーニ : オペラ 『エンディミオーネ』 から "Dice Tirsi"
アントニオ・マリア・ボノンチーニ : オペラ 『金羊毛の征服』 から "Più che freme il nembo irato"
アレッサンドロ・スカルラッティ : セレナータ 『春の栄光』 から "Canta dolce il rosignolo"
マッティス : バレット
アレッサンドロ・スカルラッティ : オペラ 『エルミニア』 から "Qui dove... Torbido irato e nero"
カルダーラ : 室内オペラ 『最も輝かしき名前』 から "Se vedrai avvampar le lucciolette"
カルダーラ : オペラ 『オリンピアーデ』 から "Fiamma ignota"
アントニオ・マリア・ボノンチーニ : オペラ 『グリゼルダ』 から "E'deliquio... Sonno se pur s'è sonno"
ブロスキ : オペラ 『メローペ』 から "Chi non sente"

ジモーネ・ケルメス(ソプラノ)
クラウディオ・オゼーレ/レ・ムジケ・ノヴェ

SONY CLASSICAL/88697789202




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