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トッピングは何にしましょうか? [selection]

クラシック。音楽ヒエラルキーの頂点という考え方は、21世紀の今となっては時代錯誤だし... 孤高の音楽ジャンルという見方も、裏を返せば、殻に閉じこもってしまった、孤立無援の音楽ジャンルとも言えるわけで... クラシックを聴くという行為に、どこかで滅入るものを感じてしまう?いや、そんなことはない!はずなのだけれど、どうも、クラシックにワクワクさせられること、めっきり少なくなったような。そうした中で、グレゴリオ聖歌に、パーカッションをトッピングしたグルビンガーの"DRUMS 'N' CAHNT"(Deutsche Grammophon/477 8797)には、久々にワクワクさせられた。グレゴリオ聖歌ほど、ステレオタイプがしっかりとしているものはないと思うのだけれど、そこに、無邪気にパーカッションを乗せてしまえば、そのステレオタイプが変容し出す驚き!こういうトッピングが、クラシックをおもしろくする?もちろん、全てのクラシックがトッピング可能ではないのだけれど... 改めて見つめる、21世紀流、トッピングの妙。クラシックに何か他のものを足すと... どうなる?

モーツァルトのピアノ・ソナタに、もう1台分、ピアノのスコアを書き足してしまったグリーグ... バッハの平均律クラヴィーア曲集に、歌を乗っけたグノー... クラシックにクラシックを足すことは、そう難しいことではない(ま、蛇足... にもなりかねない?のだけれど... )。が、異なるジャンルとなると、どうだろう?そもそもクラシックに他のジャンルの音楽をトッピングするなんて、あり得なかった。しかし、良くも悪くも21世紀におけるクラシックは、堅苦しいばかりが能ではなくなりつつある。今さら、偉ぶっても格好がつかない... そういう部分もあるとも思う。おかげで、多少、遊べる余地ができつつあるのか、ボーダーライン上におもしろいサウンドがちらほら... それもクウォリティを保って、きちっとトッピングをやりきるアルバムが、また一味違う楽しみをもたらしてくれる21世紀。
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で、そうした流れの先駆者にして開拓者と言えば、やっぱりECM!ジャズのレーベルとしてスタートしているだけに、古楽にジャズをトッピング... というのは、お家芸?"Officium"(ECM NEW SERIES/445 369-2)に始まる、ヤン・ガルバレク(サックス)とヒリアード・アンサンブルによるコラヴォレーションは、サックスとア・カペラという斬新さに、クラシックの新しい可能性を見出し、そのただならない美しさに衝撃を受けたわけだが... 最新盤の"Officium Novum"(ECM NEW SERIES/476 3855)では、コラヴォレーションのさらなる深化を見せ、改めて魅了されたばかり。で、そのヒリアード・アンサンブルで活躍したテノール、ジョン・ポッターによるダウランド・プロジェクトも忘れるわけにはいかない。その名の通り、ダウランドにジャズをトッピングした"In Darkness Let Me Dwell"(ECM NEW SERIES/465 234-2)以来、ガルバレク+ヒリアード・アンサンブルとはまた趣きを異にして、興味深いをサウンドで楽しませてくれている。

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そんなECMで、特におもしろかった... というか、びっくりしたのが、デュファイに電子音楽をトッピング?してしまった"BEING DUFAY"(ECM New Series/476 6948)。ジョン・ポッターが、エレクトロニックな音楽の世界で活躍する作曲家、アンブローズ・フィールドと組んで、ルネサンスの音楽を驚くべき形に変容させたコラヴォレーション。現代音楽の世界では、「ライヴ・エレクトロニクス」なんて言葉は普通に使われるようになっているわけだが、古楽という、最もエレクトロニックな世界から遠いサウンドが、ライヴ・エレクトロニクスを用いて表現されてしまうのだから、びっくり。びっくりだけれど、おもしろい... おもしろいけど、電子に融けてゆくデュファイのアルカイックさが、古楽のフィールドでは味わえない美しさを放っていて、また印象的。
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そして、さらにびっくりだったのが、エレキ・ギターと中世という組合せ... エストニアのヴォーカル・アンサンブル、ヴォクス・クレマンティスが歌う中世に、エストニアのエレキ・ギター・トリオ、ウィークエンド・ギター・トリオによるエレキ・サウンドが乗っかって繰り広げられる"Stella Matutina"(MIRARE/MIR 064)。ア・カペラの透明感と、エレキのヴィヴィットさが、見事に共鳴し合って、予想外に美しく、それでいて壮大!チープな近代史観からすると、「暗黒の時代」なんて、安易な説明がされてしまう中世だけれど、当時の人々の音楽の考え方は、宇宙をも捉えてスケールが極めて大きかった... そんな、中世流のサイケな感覚を、ア・カペラにエレキがトッピングされることで、現代人も、よりイマジネーションさせやすくなる?いや、本当にユニヴァーサルな1枚。
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遠ければ遠いほど、かえってしっくりくる?ここに挙げたアルバムの数々を改めて聴き直してみると、そんな風にも感じてしまう。が、そこには異質なサウンド同士をどう結び付けようか、アーティストたちの試行錯誤があるのだろう。そして、異質なサウンド同士がスパークして辿り着く境地というのは、本当に興味深い。で、そんなことばかりしている特異なプロデューサー、ユーグ・ドゥ・クーソンを忘れるわけにはいかない。そんなドゥ・クーソンの仕事で、最も印象に残るのが"LAM BARENA"(Virgin CLASSICS/2348642)。シュヴァイツァー博士にオマージュを捧げられたアルバムは、博士が愛したバッハに、博士が活躍したアフリカの音楽をトッピングしてしまうという離れ業... 多少、強引で荒っぽくもあるが、陽気なアフリカン・サウンドを得て、心なしかバッハが軽やかになったような、そんな感覚も... 何より、楽しい!元々、SONYからリリースされていたアルバムだったが、Virgin CLASSICSに移行しての再リリース。ECMのクールさとは違う、ごった煮感が、ヤミツキに... このアルバムの復活がうれしい!




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