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パリ―シュトゥットガルト―ドレスデン [2010]

さて、秋がじわりじわりと深まります。やっぱり、何かこう、そういう気分になるよなぁ~ って、どういう気分よ?!とも思うのだけれど... 例えば、クラシックならば、濃厚にロマンティックな19世紀のコテコテなサウンドとかに、たっぷり浸かりたい!などと、思うのです。ということで、近頃、耳元では、19世紀のお約束ナンバーがヘビー・ローテーション... 無駄に、気分、出てくるよねぇ~ とか、変にテンション高くなったりしている。のだけれど、手に取る新譜は、どうも、ピリオド・シフト... 何でだ?と、にわかに疑問を抱きつつ(その疑問に関しては、また後日... )、基本、新譜を追う(相変わらず、追い切れてない現実... )、当ブログは、本日もやっぱりピリオド・シフト。
フリーダー・ベルニウス率いるシュトゥットガルト室内合唱団によるアルバムを2枚... ケルビーニのレクイエム(Carus/83.227)と、ゼレンカのミサ・ヴォティヴァ(Carus/83.223)を聴く。演奏は、時代ごとにしなやかに対応して、シュトゥットガルト室内合唱団を絶妙にサポートするピリオド・オーケストラ、ホフカペレ・シュトゥットガルト(19世紀仕様)≒バロックオルケスター・シュトゥットガルト(18世紀仕様)。


パリ、古典派からロマン主義へ... ケルビーニのレクイエム。

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2010年のメモリアル... 密かに期待していたのは、シューマンでも、ショパンでも、マーラーでもなく、ケルビーニの生誕250年。だったり。って、マニアックなのはわかっているのだけれど... 普段、あまり聴く機会の無い作曲家こそ、フィーチャーされて欲しい!と、思うのだけれど、やっぱり、マイナーな存在はマイナーなまま... ムーティによる過去の録音からのボックスとかがリリースされて、多少、メモリアルな気分を漂わすのだけれど、新録音は無いよなぁ... と、愚痴をこぼしていたところに、ケルビーニの代表作のひとつ、レクイエムが登場。それも、ベルニウス+シュトゥットガルト室内合唱団による新録音となれば、聴き逃せない。
巧いこと革命を乗り切り、パリで影響力を持ったイタリア出身のケルビーニ(1760-1842)。第1帝政(-1815)もあっけなく崩れ、ルイ16世がギロチンに掛けられて22年、ブルボン家が王位に返り咲くと、ルイ16世のためのレクイエム(1816)を作曲し... というのが、ここで聴くレクイエム。で、ケルビーニにしては、比較的、聴く機会に恵まれた作品ではあるのだけれど、初めて聴くことに。で、その印象... リュリ、グルックに連なるフランスならではの古典的な荘重さと、古典を脱したスケール感。そのあたりに、ベルリオーズのレクイエム(1837)への源流を見出し。音楽史において突出したイメージのあるベルリオーズだけれど、ケルビーニを体験すると、古典派からフランス・ロマン主義へという流れが浮かび上がり、興味深い。
とはいえ、単なる橋渡し的ものではけしてなく、伝統と革新が絶妙に溶け合い、ケルビーニというカラーをしっかりと味わうことのできる充実した音楽に仕上がっている。また、レクイエムという性格の仄暗さ、黙示録的スペクタキュラーなあたりが、19世紀の到来を告げるようでもあり、それまでの音楽にはない味わいがあって、魅力的。21世紀において、ケルビーニという存在は、間違いなくマイナーであるわけだけれど、その当時はベートーヴェンからもリスペクトされる存在。そうした力量を、21世紀の今でも、もっともっと聴いてみたいのだけれど...
そうしたケルビーニの力量を余すことなく伝えてくれる、ベルニウス+シュトゥットガルト室内合唱団。いつもながらの端正なハーモニーで、作品の荘重さを美しく透明感を以って仕上げてくる。ホフカペレ・シュトゥットガルトの演奏も、古典派を脱したドラマティックな音楽を、端正にもアグレッジヴに響かせて、見事。

Luigi Cherubini: Requiem in c
Kammerchor Stuttgart ・ Hofkapelle Stuttgart ・ Frieder Bernius


ケルビーニ : レクイエム ハ短調

シュトゥットガルト室内合唱団
フリーダー・ベルニウス/ホフカペレ・シュトゥットガルト

Carus/83.227




ドレスデン、しのぎを削った時代... ゼレンカ、ミサ・ヴォティヴァ。

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昨年までは、メンデルスゾーンのメモリアルに追われていた観のあるベルニウス+シュトゥットガルト室内合唱団。もちろん、メンデルスゾーンはすばらしく、また、メンデルスゾーンばかりではなかったのだけれど... そこに、彼らにとって久々のバロックもののリリース。で、楽しみだったアルバム、バッハと同じ時代、同じ地域に生きたゼレンカのミサ・ヴォティヴァ。大病から生還したゼレンカの、神への感謝を歌い上げた作品... ということで、昨年、聴いた、ルクス+コレギウム 1704(Zig-zag Territoires/ZZT 080801)による録音は、とにかくテンション高く、一気に喜びを歌い上げたのが印象に残るのだけれど、高性能を誇るドイツの室内合唱、ベルニウス+シュトゥットガルト室内合唱団の手に掛かると、また違ったものに聴こえて、おもしろい。
シュトゥットガルト室内合唱団の、室内合唱ならではの高機能性が、如何なく発揮されるバロック作品... 丁寧に、そして精緻に歌い綴られたミサ・ヴォティヴァは、良い意味で落ち着き、元気になったゼレンカの思いの丈が炸裂するあたりをことさら強調しない。が、そうして少しクール・ダウンされたところから聴こえてくるゼレンカの音楽というのは、実に多彩で、バッハの時代における最高の技術を以って編み上げられた見事な音楽であることに、改めて気付かされる。それでいて、端々、キャッチーで、ポップですらあって... ベルニウスの明晰さで、作品の解像度が増せば、まるで万華鏡のように、次から次へと表情がこぼれ出し、発見があり、魅了されるばかり。
バッハとの同時代性、同地域性を感じさせる音楽ではあるけれど、バッハでは味わえない感覚がミサ・ヴォティヴァにはある。そこに、ゼレンカの活躍したドイツ東部の文化の集積地、ドレスデンの、作曲家にとってタフな環境(ポストを巡り、バッハもしのぎを削った... )を見て取れるようでもあり。より多層的なテイストと、洗練が、ベルニウス+シュトゥットガルト室内合唱団によって際立ち、ドレスデン流が興味深い。
それにしても、シュトゥットガルト室内合唱団のコーラスは見事!ただただクリアで、端正で、無理がない。ま、いつものことではあるのだけれど、その冷徹な視線で、作品をMRIに掛けるような感覚がたまらない。で、解析した先に、ぼぉっと、青白い炎を灯すような、独特の温度感があって、安易にクールとばかりは言えない熱を孕む。そして、4人のソリストがまたすばらしく... バロックオルケスター・シュトゥットガルトの演奏もキレていて、コーラスに負けず、見事なパフォーマンスを繰り広げる。

Jan Dismas Zelenka: Missa votiva
Kammerchor Stuttgart ・ Barockorchester Stuttgart ・ Frieder Bernius


ゼレンカ : ミサ・ヴォティヴァ ZWV 18

ジョアン・ラン(ソプラノ)
ダニエル・テイラー(アルト)
ヨハネス・カレシュケ(テノール)
トーマス・E・バウアー(バス)
シュトゥットガルト室内合唱団
フリーダー・ベルニウス/バロックオルケスター・シュトゥットガルト

Carus/83.223




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