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クラシック、ラヴズ・ポップス。 [miscellany]

Deutsche Grammophon、特に、そのピリオド・ライン、ARCHIVで活躍した、もはや大御所、アンネ・ソフィー・フォン・オッター(メッゾ・ソプラノ)がnaïveに移る。と聞いた時は、すでにnaïveに移っているミンコフスキらとともに、再び、ピリオドのフィールドで興味深い作品などを聴かせてくれるのかな?VIVALDI EDITIONなど、ピリオドの雄として存在感を示すレーベルだけに、期待してみたのだけれど... naïve移籍、第1弾は、ブラッド・メルドーとのコラヴォレーション、クラシックのフィールドから外れての"Love Songs"(naïve/V 5241)。
コステロとのコラヴォレーション(Deutsche Grammophon/469530)、そしてABBAのカヴァー(Deutsche Grammophon/4775901)と、フレキシブルなセンスを見せてきたフォン・オッターだけに、驚くことではないのだけれど、メッゾ・ソプラノの大御所が、コンスタントにジャンルを越境するということが、興味深く... ふと、見渡せば、フォン・オッターに限らず、近頃、そういう動き、目立ってきているような...

クラシックは孤高のジャンル... そんな風に思われているし、どこかで思ってもいる。「クラシック」と名付けられてしまえば、クラシック=古典であって、近寄り難く、下手に近寄ってもほしくない?のかもしれない。音楽は国境を越えても、ジャンルのボーダーには、目には見えない強靭な壁が存在する... いや、クラシックは、「クラシック」と名付けられて以後、その壁で存在を確かなものにしているのかもしれない。袋小路に入って、安堵感を充たしているジャンル... そんな印象?で、いいのか... よくはないけれど、現実は、そういうもの。いろいろ新しい試みはあったとしても、ジャンル全体を動かし得るものには成り得ない21世紀。「クラシック」とは、「保守」の巨人であり、そのあたりに閉塞感を感じたとしても、それは見当違いなのかもしれない。しかし、巨人も、大分、やつれたよなぁ~ あと、どれくらい、立っていられるのだうか?
そんなクラシックに見切りをつける?というわけではないけれど、ちょっとクラシックから抜け出して... ポップスで遊ぶ?フォン・オッターのようなケース、ちらほら見受けられ、興味深く。また、そうしたケースが、安易な折衷ではなく、ガッツリ、ポップスと向き合って、クラシックとはまた違う魅力を聴かせてくれるから、おもしろい。で、何よりおもしろいのは、その意外性... クラシックを囲む壁があるからこそ、意外性はより強調されて、刺激的ですらあったり。で、そうした"抜け出し"に先鞭をつけたのは、やっぱりルネ・フレミング
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今や、ソプラノの大御所とも言える存在だけれど、元々、ジャズ出身、クラブ・シンガーを経験したという異色のプリマ... そんなルーツを遡って、大胆にポップスを歌った、2005年のリリースとなる、"Haunted Heart"(DECCA/988 0602)は、衝撃的だった。というより、このアルバムを切っ掛けに知った、彼女のルーツに、まずびっくり!『フィガロ... 』の伯爵夫人、『ばらの騎士』の元帥夫人、『カプリッチョ』の伯爵令嬢... 最もクラシック的なゴージャスさを漂わせるフレミングだけに、びっくりさせられた。しかし、"Haunted Heart"で聴かせた、別次元のフレミングは、とにかく様になっていて、さらにさらに驚かされ。そのルーツに裏付けられたホンモノのポップスに、魅了されるばかり。正直、クラシックのフレミングより好きかも... なんて、口が滑りそうなくらい。で、そういうクウォリティに至った"Haunted Heart"が、空気を変えたような気がする。クラシックによる、お茶を濁すポップスではなく、クラシックからしっかり愛情をこめて取り組むポップス。それもまたありな21世紀的クラシック。とでも言うのか...
ところで、フレミング。最新盤(と言っても、春のリリースだったけれど... )は、再びポップスのフィールドで、"DARK HOPE"(DECCA/2739699)。このアルバムも、気になる...
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さて、クラシックを抜け出して、ポップスを歌っているのは、プリマたちばかりでなくて、室内合唱団までも... というのが、今年の春先にリリースされたフランスの室内合唱団、レ・クリ・ドゥ・パリのアルバム、"ENCORES"(Alpha/Alpha 888)。アクサンチュスに続く、フレッシュな存在となるのか、楽しみなところなのだけれど。「室内合唱」の高機能性を活かしてのポップに仕上がったマドンナの"HUNG UP"は、なかなか乙でして... てか、ABBAを下敷きに歌うマドンナの構図が、実はフランドル楽派の構図に重なる?なんても思えたり(というのは、あまりにクラシック的な聴き方?は、無粋か... )。そもそも、マドンナを室内合唱団で歌おうというのが、凄いよなぁ。また、PVを見れば、アクサンチュスをすでに超えている(?)キャラクター性も興味深いところ... いやー、おもしろいことをしております。
さらに、弦楽四重奏団までがポップスを歌う... エベーヌ四重奏団のまもなくリリースされるアルバム、"FICTION"(Virgin CLASSICS/6286680)。で、彼ら、本当に歌います。本業は弦楽四重奏ですよ!と、ツッコミを入れたくなるほどによく歌い、また歌いこなしてしまうから凄いのだけれど... もちろん本業でも、キレ味鋭く、クールにポップスを仕上げてしまう。というより、弦楽四重奏とポップスという組合せに驚かされる... 弦楽四重奏なんてのは、クラシックにおいても、特に渋い部類に入る編成のはず。だけれど、こういう発想が出てきてしまうのだから、驚かされる。また、それをやってのける技量があることも凄い。で、"FICTION"には、ボーカルにナタリー・デセイが招かれるとのこと。この大御所によるポップスというのも、興味津々...

クラシックを抜け出して、ポップスというフィールドで、これだけのパフォーマンスが可能... という器用さが、21世紀のクラシックのアーティストたちの特徴になりつつあるのか。また、そういうことに恐れない、アーティストたちの現代っ子感覚に、現代を生きる者として、大いに共感させられるところあって... そういう現代っ子感覚が、クラシックに、新しい次元、壁の向こうへの扉を開くような気がする。のだけれど。




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