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ノスタルジーに浮かぶ、20世紀... [miscellany]

シャネルとストラヴィンスキーの映画が公開されると聞いて、早く公開されればいいのに!なんて、思っていたのは昨年の秋だったか... が、ハっと気が付いたら、もう公開が終わっていて、愕然としたのは、今年、正月も過ぎて少し経った頃... 楽しみにしていた分、かなりのショックを受けたのだけれど、とうとう、その映画『シャネル&ストラヴィンスキー』を見る。って、いつもながらwowowにて... で、もう3日前から録画予約、準備万端で臨んでの、シャネルとストラヴィンスキーの物語。バレエ・リュスという接点は知っていたけれど、20世紀、近代を代表するアーティスト、2人の親密ぶりは、初耳で、かなり新鮮。で、革命児、2人の相克(とか、言ってしまっていいのか?)のドラマに、ついつい惹き込まれる。

いや、伝記モノは難しい... はずだけど、『シャネル&ストラヴィンスキー』は、刺激的だった。というより、シャネルとか、ストラヴィンスキーとか、そういう名前が無くとも、十二分に刺激的な映画かも... 2人の革命児の、「革命児」という同じ臭いを嗅ぎつけての惹き合う引力と、結局、衝突にしかなり得ない引力が生む、何とも言えない緊張感。また、同じ臭いのはずが、必ずしも同じではない2人の不協和音。そこから、アーティストの業のようなものが炙り出され... 何とも言えない心地にさせられて。実際の、シャネルとストラヴィンスキーはどうだったのだろうか?やっぱり、こんな感じだったのだろうか?
そこに、ミュージック・ビデオ出身、ヤン・クーネン監督のスタイリッシュな映像があって... シャネルが全面協力したというだけに、衣装はもちろん、見事なアール・デコの装飾!ディアギレフの周りには、さり気なくシュープレマティスムも。アート・ディレクションは、見事!何より、アナ・ムグラリスのシャネルが絵になり過ぎ... 絵になり過ぎて、デザイナーというより、モデル... となれば、シャネルの服が映える!しかし、カッコいい時代でした。何より、天才たちがひしめいていた時代... 相当に刺激的だったのだろうなぁ。
映画の冒頭、シャンゼリゼ劇場でのバレエ『春の祭典』の初演シーンの、生々しい喧騒... 荒れるホワイエを悠然と歩くシャネルのクールなこと!これこそ、パフォーミング・アーツの醍醐味だよなぁ。新たな芸術が生まれた瞬間、賛否の中をどこか超越して、その場、その時を楽しむ... しかし、21世紀、そういう体験、望めそうになく... 「近代」が、伝統に対して、俄然、暴力的で、それでいて、輝きに充ちていた頃。近代の成れの果て、ただただ閉塞感に覆われた現代からすると、その空気感が羨ましい... で、やっぱり、映画館で見るべきだったなと。
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ところで、サントラ(naïve/V 5223)、ラトル+ベルリン・フィルによる演奏とのこと... いや、贅沢... だけれど、もっとふんだんにストラヴィンスキーの音楽を使っても良かったような... てか、もっといろいろなストラヴィンスキーを聴きたかった... せっかくラトル+ベルリン・フィルを起用したわけだし... それと、『シャネル&ストラヴィンスキー』より、"COCO & IGOR"の原題の方が、カッコ良かったような... 分かり易いばかりが能じゃないと思うのだけれど、21世紀、より分かり易い方へと流れて行ってるよなぁ。

さて、先日、8日、東京オペラシティ・コンサートホールで、武満徹80歳バースデー・コンサートがあった... ということを、終わってから、知る。で、ゴージャスにも、ナッセンの指揮で、ピーター・ゼルキンがピアノを弾いたとのこと... 聴いてみたかった... で、近頃、こういうパターンが多いよなぁ...
それはともかく、武満(1930-96)が生きていたら、80歳?!その数字に、改めて驚かされる。85歳のブーレーズは、未だ矍鑠として存在感を示していることを思えば、武満の死は、あまりに若かった。そして、その死から14年、武満作品も、現代音楽としての生々しさは薄れ、どこかノスタルジックに回顧できそうな、そんな気分。ここいらで、新たな録音で、武満作品を聴いてみたいのだけれど... なかなか新しいリリースは出てこない?なくはないのだれど、ガッツリ、『ノヴェンバー・ステップス』とか、21世紀に、どんな風に響くのか、体験してみたく... なんて考えていると、武満が健在だったら、どんな作品を書いていただろう?という思いも過る。ブーレーズが『ゴドーを待ちながらの』のオペラ化に挑んでいるというニュースを聞けば、武満の未完のオペラが完成していたら... なんても、余計に感じる。20世紀後半、前衛の真っただ中を駆け抜けて、美しい響きに辿り着いた武満だが、今の、この閉塞感の中では、どんなサウンドを響かせただろう?
そう言えば、バーンスタインもメモリアル... 没後20年。そうしたボックスのリリースや、バーンスタインを回顧する番組(NHKがどういうわけか気合入ってます... )を目にすれば、もう20年も経ってしまったのかと、少し驚きすらあったり。2000年問題なんてのはついこの間のことで、9.11の傷も、未だ癒えないように感じながらも、20世紀は、次第次第に遠くなっているのだなと、噛み締める。
光と影のコントラストがあまりにきつい20世紀、「近代」ではあったわけだが、革命児がひしめいていた時代を振り返れば、21世紀はどうなのだろうか?と、考えさせられる。現時点で考えても仕方ないことかもしれないけれど、多少、不安にもなる。我々は、不毛な時代を生きているのではないかと...




タグ:20世紀 映画
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