SSブログ

グラバー邸に龍馬。 [miscellany]

この間、NHKの大河ドラマ、『龍馬伝』を見ていたら、グラバー邸のパーティーで、ロッシーニ(だったと思う... )が流れていた。で、へぇ~ ロッシーニなんだぁ... と、ドラマそっちのけで興味深く思う。西洋風を演出するなら無難にモーツァルト、あるいはウィンナー・ワルツあたりが定番かと思っていたけれど、ロッシーニを持ってきたNHK。龍馬がグラバーを訪ねていた頃、西欧の流行りとして、長崎でも流れていた音楽は、ロッシーニだったかも... ということ?時代考証に余念の無い(はず... )大河ドラマだけに、その同時代感覚に刺激を受けてしまった。
坂本龍馬が生きていた頃のクラシックって、どんな感じだったのだろう?
ヨーロッパの歴史の流れの中でクラシックを捉えても、日本の歴史とリンクさせるなんてことは、ほとんどない。ま、リンクしようがないほど、ヨーロッパと日本は遠かったわけだけれど。しかし、龍馬がグラバー邸を訪ねる... というシーンでロッシーニを聴けば、リンクして見えてくるクラシック像というのも、あるように感じる。

1010.gif
1010.gifWPCS12365.jpg1010.gif
坂本龍馬のポートレートを置いたジャケットが印象的な、『明治維新のクラシック』(ワーナーミュージック・ジャパン/WPCS 12365)というコンピレーション・アルバムがリリースされている。大河ドラマを当て込んでのリリースなのだろうけれど... HMVのサイト、『明治維新のクラシック』の内容詳細に転載された『CDジャーナル』の紹介によると... 龍馬と同時代の作曲家の作品と、『米欧回覧実記』に登場する曲でまとめられている。とのこと。龍馬はともかく、実際に岩倉使節団が欧米で聴いた作品というのは、なかなか興味深い(『N響アワー』でも、似たようなことしてたような... )。ところが、あまりにストレートな選曲で、ひねりがないのは面白くないが... なんてコメントもあり。ま、クラシック系コンピレーションにはよくある話し。所詮は便乗商品?なのかも... いや、坂本龍馬が生きていた頃というのは、ずばり、クラシックのど真ん中?そんな時代を素直に綴ってしまうと、「ひねりがない」なんて、言われてしまうことに?
さて、坂本龍馬が生きていた頃、ヨーロッパでは、クラシックの世界では、どんなことがあったのか?
ショパンがジョルジュ・サンドに紹介された年、1836年に生まれた坂本龍馬。剣術修行で江戸へ出た頃、黒船がやって来て大騒ぎとなっていた頃、1853年、デュッセルドルフのシューマン家には、青年ブラームスが訪れていた。龍馬がとうとう脱藩し、土佐を飛び出して、日本を舞台に活躍を始めようという頃、1862年、ヴェルディは国際的に名声を馳せ、イタリアからは遠く、サンクト・ペテルブルク、マリンスキー劇場で『運命の力』を初演。龍馬が海軍操練所という場所を得て、未来への希望を膨らませていた頃、1864年、ドレスデンでの革命の失敗以来、表舞台から遠のいていたワーグナーが、突然、バイエルン国王、ルートヴィヒ2世から招待を受ける。龍馬が亀山社中を結成した頃、1865年、ワーグナーはミュミヒェンで『トリスタンとイゾルデ』を初演。
そして、龍馬がグラバー邸を訪れたのがこの年... ヨーロッパからは遠く離れた長崎で流れているクラシックとなると、ヨーロッパの最新の音楽というよりは、その当時、すでに広く知られていた音楽、あるいは、多少、古臭くなりつつある音楽だったのかも... とすれば、ロッシーニというチョイスは絶妙かも。すでにオペラの世界からは引退して、巨匠としてヨーロッパの楽壇で揺るぎない名声を維持していたロッシーニ。となれば、グラバー邸で流れていたロッシーニというのは、結構、リアルなのかも。そして、ロッシーニは、龍馬が京都で暗殺された翌年、パリで大往生を遂げている。

ということで、龍馬が日本の近代への道筋を付けるため、東奔西走していた頃というのは、ヴェルディ、ワーグナーが大活躍した19世紀半ば、ロマン主義が大いに盛り上がっていた頃。クラシックにとっては最も大きな収穫期であった。そして、現在のクラシックのイメージは、龍馬が生きていた頃、そのものであるようにすら感じる。一方で、坂本龍馬という存在は、他の日本の歴史上の人物に比べて、身近に感じる... 日本において、いち早く「近代」を取り入れた人物として、「近代」の延長線上にいる我々からすると、どこか"ひいじいさん"くらいな距離感だろうか?そこそこ長い日本の歴史を振り返れば、断然、新しい人のように感じてしまう。そして、龍馬の活躍と重なるクラシックのど真ん中。日本とクラシックを並べれば、クラシックは意外と新しく感じられるのかもしれない。

ちなみに、暴れん坊将軍... じゃなくて、8代将軍、徳川吉宗(1684-1754)は、バッハよりひとつ年上で、バッハより4年長生きしている。ぐんと時代を遡って... クラシックの最も古い作曲家のひとりになるであろう、ヒルデガルト・フォン・ビンゲン(1098-1179)。そのストイックなサウンドは、まさしくイニシエの響き。そのスピリチュアルな人物像を振り返れば、遠い遠い時代の話しに思えてくる。が、紫式部(970年代-11世紀前半)より少し後の時代を生きた女性だということを知ると、ちょっと印象が変わるような気もする。




nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。